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アマゾンだけが「イノベーションのジレンマ」に陥らない理由

2018年04月19日 公開
2023年03月14日 更新

田中道昭(連載「アマゾンの大戦略」に学ぶMBA講座 第1回)

企業・経営者の判断ポイントは「経営への哲学・想い・こだわり」

本講座では、「アマゾンの大戦略」、より具体的には書籍『アマゾンが描く2022年の世界』での事例を使って経営学の内容を学んでいきます。私自身がストラテジー&マーケティングとリーダーシップ&ミッションマネジメントを専門領域としていることから、これらを中心に講座を展開していきたいと思います。また、これらの科目の基礎でもあり、私自身も立教大学ビジネススクールで担当している科目でもあるクリティカルシンキング(ロジカルシンキング)もカバーしていきます。

ビジネススクールにおいてたくさんの科目が開講されているなかで、本MBA講座でも最初に取り上げたいのが、「経営への哲学・想い・こだわり」です。

私は立教大学ビジネススクールで教授を務めている他、上場企業取締役、経営コンサルティングの仕事をしていますが、3つの仕事に共通して、企業や経営者を見る最初の重要ポイントこそが、まさに「経営への哲学・想い・こだわり」なのです。

つまりは、「その経営者が自らの事業や商品・サービスに対して、どのような哲学・想い・こだわりをもっているか」ということを企業診断の中核に据えているのです。

 

「ミッション、ビジョン、バリュー」を徹底するアマゾン

これはビジネススクールで学ぶ経営学に置き換えて表現すると、ミッション、ビジョン、バリューということになります。

ミッションとは、その企業の使命や存在意義です。ビジョンとはその企業の将来の姿や夢。ミッションが目的であるのに対して、ビジョンは目標ということになります。そしてバリューとは、その企業で大切にされている価値観やルールのことを指します。

ここで重要なのは、経営者の事業に対する哲学・想い・こだわり、つまりはミッション、ビジョン、バリューが、実際に提供されている商品・サービスに練り込まれているか、実際にそこで働いている社員の行動にも反映されているかということなのです。

そして、このことは決して簡単なことではありません。むしろ、このようなことがきちんとできている企業は極めて少ないと思います。でも、実は、「ミッション、ビジョン、バリューが、実際に提供されている商品・サービスに練り込まれているか、実際にそこで働いている社員の行動にも反映されているか」ということは、会社自体がブランド化するコーポレートブランディングでの必要条件でもあるほどに重要なことなのです。

そして、このことを実際に徹底してやっている会社、このことを徹底してやっていることを競争優位にまで高めている会社こそが、ジェフ・ベゾス率いるアマゾンなのです。

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著者紹介

田中道昭(たなか・みちあき)

立教大学ビジネススクール教授

シカゴ大学ビジネススクールMBA。戦略論を専門として、経営を中核に政治・経済・社会・技術の戦略を分析する「戦略分析コンサルタント」でもある。三菱東京UFJ銀行投資銀行部門調査役、ABNアムロ証券会社オリジネーション本部長などを歴任。現在、株式会社マージングポイント代表取締役社長。著書に、『アマゾンが描く2022年の世界』『2022年の次世代自動車産業』(ともにPHPビジネス新書)など。

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