2018年04月12日 公開
2023年03月23日 更新
新卒から70歳まで働くとすると、 45歳がちょうど折り返し地点。ここでどう働き方を変えるべきか、どのようなスキルを磨き、能力を伸ばすのか、悩める時期である。この連載では、70歳までのキャリアを見越した働き方と生き方について、リクルートを経て40代から民間校長として教育の世界に新たな挑戦を始めた藤原和博氏にアドバイスをいただく。<取材・構成=甲斐ゆかり(サードアイ)、写真撮影=清水茂>
いつの時代もおそらく、40代が人生の中でいちばん大変な時期であると思います。ただ、今の40代が特別なのは、日本が既に成長しきった後の「下り坂」の社会を生きていることでしょう。日本は、1997年に高度経済成長が終わって98年から成熟社会に入り、GDPは下がり続けています。今の四十代は、そんな中で社会人になっています。
奇しくも同じ頃、アメリカではアマゾンやグーグルなど、世界の構造を変えていくであろう会社が生まれています。一方、日本では、企業の合併やリストラが進みました。
中間管理職の多い40代は、上司と部下の間に挟まれ、責任も増す世代です。しかしその割に給料は上がらない。何かを変えたいと自己啓発書を読んでも、留学や資格取得や投資など、すぐには実行できそうもない処方箋が並んでいる。こんな八方ふさがりの状況に家庭や個人の問題が重なれば、心身にも不調が出てきて当然でしょう。
下り坂の社会はつまずく可能性も高い。40代はそのことにもっと自覚的であるべきです。
そんな中、自分のキャリアを充実させるヒントとして、ぜひ覚えておいてほしいのが「キャリアの大三角形」です。
オリンピックのメダリストのようにもともと特別な才能に恵まれていれば、100万人に1人の存在となることは可能です。しかしそれ以外の大勢の人でも、複数のキャリアを極め、それらをかけ合わせることで、100万人に1人の存在になることができます。
上の図で説明します。まず20代の5年から10年で、ある分野の仕事をマスターします。一つの仕事をマスターするのに、一般的には1万時間かかると言われます(ちなみにどの国でも、義務教育のトータルはだいたい10年、1万時間弱です)。営業でも開発でも、1万時間取り組めば、100人に1人くらいの希少性が得られるでしょう。これが左足の軸、三角形の基点になります。
次に、30代の5年から10年で、違う分野の仕事をマスターします。ここで100人に一人の希少性を手に入れれば、100分の1×100分の1=1万分の1人の希少性を確保できたことになります。これが右足の軸となり、三角形の底辺、生きていくための下地が決まります。40代なら、おそらくここまでは到達できているでしょう。
3歩目は、40代から50代にかけて作る3つ目のキャリアです。ここで100人に1人の希少性を得られれば、100万分の1人の存在になれます。この3歩目を踏み出すときにはちょっとしたコツがあります。後で説明します。
こうして踏み出した3歩目が三角形の頂点となり、描いた三角形の大きさが、自分のキャリアの希少性を表します。
60代からは、描いた三角形を三次元化します。平面だったキャリアの総量に「高さ」をつけるのは、自分の生き方に対する「こうありたい」という意志や哲学性、人生を描ききる美意識のようなものといえます。 ここで立ち上がった立体が、自分の人生のクレジット(社会や他者から得てきた信頼度や共感の総量)で、自分が生きる上で自由に活
動できる領域、人生の自由度を表わします。この立体(信用の総量)を現金化したものが報酬です。残りは、報酬を目的とせず自由に活動できる領域で、60代以降の人生の豊かさを示す部分でもあります。
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更新:11月21日 00:05