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アマゾンが描く「2022年の世界」とは?

2017年11月29日 公開
2022年06月09日 更新

田中道昭(立教大学ビジネススクール教授)

「AIスピーカーブーム」の先にあるものとは?

コンピュータである「アルファ碁」が人間の棋士に勝ったことで、一躍脚光を浴びることになったAI(人工知能)。「AIが人の仕事を奪う」「AIは人間を超えるか」という議論も盛んにされているが、私たちの身近な製品にも応用され始めている。

そのひとつが、2017年の後半に各社が相次いで発表した「AIスピーカー」だ。LINEの「Clova WAVE」、グーグルの「Google Home」、そして、アマゾンの「Amazon Echo」。

科学技術の進化は私たちの世界にどのような変化をもたらすのか。

今回は、『アマゾンが描く2022年の世界』(PHPビジネス新書)の著者である立教大学ビジネススクール教授・田中道昭氏に、アマゾンの戦略をもとに、これから到来する未来について語っていただいた。

 

「アマゾン・エコー」は私たちの生活を変えるか?

――アマゾンがアマゾン・エコーを発表してすぐに予約されたそうですね。アマゾン・エコーは私たちの生活にどのような変化をもたらすでしょうか。

AIアシスタントである「アマゾン・アレクサ」を搭載したアマゾン・エコーの最大の特徴は「話しかけるだけですべて済んでしまう」ことだと私は考えています。たとえば、話しかけるだけで、音楽をかけてくれたり、スポーツの試合結果を教えてくれたり、天気予報を調べてくれたり、レストランを予約してくれたり、ピザを注文してくれたりと、2万5000以上のスキルを持っています。

日本においても、大手金融機関、携帯電話3社、ヤフー、JR東日本などがアマゾン・アレクサのスキルに参加するとの報道もあり、今後も多くの企業が追随するものと思われます。

「話しかけるだけ」というのは「タッチ操作が不要」ということであり、そこがタッチパネルでの操作をベースにしているスマートフォンとの最大の違いです。

そして、この小さな筒状のスピーカーが搭載している「アレクサ」のポテンシャルには目を見張るものがあります。アマゾンの創業者であるジェフ・ベゾス自身が「エコーはアレクサ搭載商品の第一弾に過ぎない」と言っているように、「アレクサ」はさまざまな可能性を秘めています。すでに、アマゾンとGEが提携し、アレクサ対応システムを組み込んだIoT家電を開発していますし、自動車にも搭載され始めたりと、アレクサが生活サービスのエコシステムとなる日はそう遠くないでしょう。

――米国ではすでに発売されていたアマゾン・エコーですが、日本では2017年の11月に発売されることになりました。なぜ、この時期だったのでしょうか。

アマゾンは「地球上で最も顧客第一主義の会社」というのをミッション&ビジョンに掲げています。これはお題目ではなく、アマゾンのユーザー・エクスペリエンスへのこだわりにはすさまじいものがあります。おそらく、アマゾンはアマゾン・エコーの日本語対応能力に磨きをかけることに時間を割いていたのでしょう。そして、この2017年11月に万全といえるレベルにまで到達したと判断したからこそ発売されたのだと思います。

アマゾンのユーザー・エクスペリエンスのわかりやすい例としては、電子書籍リーダーである「キンドル」が挙げられます。他の企業が次々に電子書籍リーダーを投入するなか、アマゾンは沈黙を守っていました。その間、ベゾスは開発者たちに、読者がその存在を忘れるほどのデバイスを開発するよう指示を出し続け、ようやく完成したのがキンドルだったのです。そして、キンドルのユーザー・エクスペリエンスは他のデバイスを圧倒するものであり、急激に普及していきました。

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著者紹介

田中道昭(たなか・みちあき)

立教大学ビジネススクール教授

シカゴ大学ビジネススクールMBA。戦略論を専門として、経営を中核に政治・経済・社会・技術の戦略を分析する「戦略分析コンサルタント」でもある。三菱東京UFJ銀行投資銀行部門調査役、ABNアムロ証券会社オリジネーション本部長などを歴任。現在、株式会社マージングポイント代表取締役社長。著書に、『アマゾンが描く2022年の世界』『2022年の次世代自動車産業』(ともにPHPビジネス新書)など。

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