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本当に使える!「ロジカルシンキング」の基本【後編】

2018年02月18日 公開
2023年03月23日 更新

苅野 進(学習塾ロジム塾長)

 

「MECE

 ロジカルシンキングの基本となる概念で、「漏れなく、ダブりなく」全体を網羅して考えるという意味です。

 仮説を立てるとき、問題が起こったときなどに、「抜けている前提はないか」「見落としている例外はないか」と常にチェックをするクセをつけましょう。最近、ある製菓会社の高カカオタイプのチョコレートが大ヒットしていますが、これは、あまり売れていなかった商品のパッケージを大胆にリニューアルしたことに所以すると言われています。「美味しいから売れる」「本格派のチョコは売れる」という前提に漏れがないか再検討して、「写真に撮って共有したくなるパッケージ」という漏れを見つけたのでしょう。

 また、ダブりに注目することで、計画のムダや非効率なプロセスを改善することも可能になります。

 

「フェルミ推定」

 フェルミ推定は、一見、掴みどころのない量を、それを構成する要素に因数分解し、それぞれの要素に数字を当てはめて考えることで概算を出す方法です。

「売上げ=客単価×客数」「利益=売上げ-コスト」などと、分解して考えることで改善策が見えやすくなります。この場合、「売上げ=客単価×客数」なら、「客単価を上げる」か「客数を増やす」という2つの問題解決策があり、数字を当てはめればより効果的な方法がわかるでしょう。

 ただし、分解の仕方は一つではありません。「売上げ」は、多店舗展開している小売業なら「売上げ=客単価×客数×店舗数」になり、「利益」も、「コスト」でひとまとめにせず、「人件費」「宣伝費」「販売管理費」などに分解して考えるべき場合もあります。

 

「Bad Case Thinking

 その名のとおり、「悪いケースを考えてみる」という方法。いったん仮説を立てても、あえてうまくいかない場合や失敗する場合を想定し、自分で自分に反論してみることで、仮説に穴がないか、前提に漏れや抜けがないかなどを確認できます。

 私がよく小学生に出題するのが、「テレビゲームを買ってもらうための理由を挙げてみよう」というもの。すると、たいていは「皆が持っているから」「テレビゲームをやると勉強の息抜きになってよいから」などの答えが出ます。彼らは「これでうまくいく」と信じているわけです。

 そこで、あえてうまくいかない場合を想定させるため、続けて「意地悪な保護者の立場になって反対してみよう」という問題を出します。「“皆”というのは本当に全員か」「なぜ他の皆が持っていると、自分も持たなくてはいけないのか」「テレビゲームは本当によい息抜きになるのか。むしろゲームに夢中になって、勉強に集中できなくなるのではないか」

 こうして、これでもかと反論を考え、それに備えて準備することで、自分の意見はより強固なものになります。また、プレゼンや会議で意見を述べた際の予想外の反応にも対応しやすくなるはずです。

 なお、企業の会議でも、「とにかく逆の意見を言う担当」を置いて、チームとしての仮説を検証している会社があります。社内の価値観や常識だけを前提に考えることを防ぐためには有効な方法の一つです。

 

「ゼロベース思考」

 目の前の現象にとらわれず、ゼロベースで考えるという思考法。そもそもの問題設定を疑ってみたり、絶対的だと考えている前提条件や制約条件を取り払ってみたりすることです。

 たとえば、広告を出しても集客ができず儲けが少ない店があるとします。しかし、問題(儲けが少ない理由)は現在取り組んでいる集客ではなく、当たり前だと受け入れている仕入れコストや価格設定にある場合があります。常に問題の「論点」を考えることが解決の糸口となります。

≪『THE21』2018年2月号より≫
≪取材・構成:塚田有香≫

著者紹介

苅野 進(かりの・しん)

学習塾ロジム塾長兼代表取締役社長

東京都生まれ。東京大学文学部卒業後、経営コンサルティング会社にて、社会人向けのロジカルシンキングの研修・指導などを担当。自ら問題を設定し、試行錯誤しながら前進する力を養うことこそ教育の最も重要課題であるという考えから、2004年に学習塾ロジムを設立。小学生から高校生を対象に、論理的思考力・問題解決力をテーマにした講座を開講している。著書に、『10歳でもわかる問題解決の授業』(フォレスト出版)など。

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