2018年03月14日 公開
2023年03月23日 更新
現在の日本を代表する経営者であるソフトバンク社長・孫正義氏。同社社長室長を務め、その無茶ぶりに応えてきた三木雄信氏は、孫氏から「数字を使うスキル」をたたき込まれてきた。そのノウハウを記した『孫社長にたたきこまれた すごい「数値化」仕事術』(PHP研究所)は5万部のベストセラーになっている。いわく、「これからの数字のスキルに、決算書はあまり重要ではない」とのこと。どういうことなのだろうか。(取材・構成=村上敬)
ビジネスに必要な数字力というと、「決算書」を読む力を思い浮かべる人が多いかもしれません。たしかに決算書が読めないより読めたほうがいい。しかし、ソフトバンクの孫社長は「決算書はバックミラー」と言って、意思決定上あまり重視していませんでした。決算書には、過去にやったことが反映されます。それを見て経営するのはバックミラーを見て運転するようなもので、役に立たないどころか危険というわけです。
かつての日本なら、決算書重視の経営でも問題ありませんでした。時代の変化が少なく、整備された一本道を運転するようなものだったからです。
しかし、いまは変化が急です。道は複雑で、いきなり人が飛び出してくることもあります。そうした時代に一年単位でハンドルを切るのでは遅すぎる。少なくても三カ月単位で方向を見直していく必要があります。
ならばクオータリーの決算を見ればいいのかというと、それも違います。方向を変えて実行に移すのに、少なくとも三カ月はかかります。たとえば広告キャンペーンを見直すとして、企画から実行に移すまで最速でも三カ月。ハンドルを実際に切ったときには、もう次の時期が来て状況が変わっています。
大切なのは、バックミラーではなくフロントガラスを見て運転すること。つまり「今起きていること」を数字としてリアルタイムに把握することで、事故を減らせるのです。
では、リアルタイムに把握すべき数字とは何か。ひと言でいえば、中間成果物の数字です。たとえば、自動車を作る工場のラインを思い浮かべてください。最終的に完成する前に、ボディを成型したもの、ハンドルを取りつけたものなど、中間成果物としてカウントできるものがあるはずです。これらの数を把握しておけば、完成する前に最終商品の数を予測できます。たとえば月末に二百台を出荷しなければいけないとして、それを完成させるにはいつから取りかかり、どのくらいのペースで進めれば良いのかが予測できるはずです。
ホワイトカラーの仕事は工場ほどプロセスの区切りが明確ではありませんが、中間成果物に相当するものは必ず存在します。たとえば営業で言えば、最終的な成果物が「契約成立」だとすれば、「テレアポの成功」「見積もりの依頼」などが中間成果物と言えるでしょう。それらを数値化して把握して未来を予測して、そこから逆算して今必要な施策を実行していくのです。
数値化する意味は、未来を予測して先手を打つこと以外にもあります。効果的な施策を見極めて横に展開するためです。
更新:12月10日 00:05