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凝った資料が質を下げる!? ムダのない資料作成のコツとは?

2017年11月30日 公開
2023年03月23日 更新

清水久三子([株]AND CREATE社長)

 

「カッコいい」グラフはムダの代表!

 さて、メッセージと言いましたが、そもそも資料に「メッセージがない」ケースも多く見られます。

 たとえば、「顧客ニーズをとらえることが大切」「最適なソリューションを提供します」などの表現。ふわっと結論を述べているようですが、そこには具体性も方針もありません。こうした資料は、伝えたいメッセージを自分の中で結論づけられていない状態で作っているので、図や表を多用して作り込むことで体裁を整えたように見せていることが多いのも特徴です。

 こうしたゼロメッセージの文章は、資料上の「ノイズ」になります。ノイズとは、伝達の障壁となるもののこと。多すぎるページ数や、情報の重複や不正確性もノイズとなり、本当に伝えたいことが薄まってわかりづらくなってしまいます。

 図表によく見られるノイズは、表の罫線。「枠線は太く」「ここは細線」「1行おきに色をつけて」などと凝りたいポイントですが、桁がそろっていて適度に余白を設けていれば、本来罫線は必要ないもの。作り込みすぎるとメンテナンス性も低くなります。主役は表中の項目や数字であることを忘れてはいけません。

 また、グラフも、作り込みがアダになってノイズの発生源となりがちです。その代表格が、棒グラフや円グラフを立体的に描く「3D機能」。

 なぜなら棒グラフは、棒の面積で数値を比較するために使うものであり、3Dではその情報に歪みが生じるからです。円グラフも同じく、扇形の面積で内訳を表わすのが目的。3Dで遠近をつけると正確性が失われます。

 ここを踏まえず、「見栄えがいい」という理由で3Dを使うと、「デキない人」認定される危険も。グラフの目的を理解せず、正確性を損ねる作業にわざわざ時間をかける人、と思われるので要注意です。

 このように、資料を作っていると知らず知らずのうちにノイズを取り込むリスクがあります。とくに、パワーポイントのようなツールは「色をつけたい」「アニメーションを使いたい」といった誘惑に満ちています。

 しかし、経営者や役員などの決定権を持つ人たちは、演出過多な資料を嫌う傾向にあります。多忙な中、最短で情報を得たいと思っているときに「飾り」だらけの資料を見せられてはかなわない、という反応をよく目にします。今後は、ムダ削減のニーズもあり、資料は「カッコよく」から「シンプル」へと転換していくことが予想されます。

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シンプル資料の秘訣は「文章力」にあり >

著者紹介

清水久三子(しみず・くみこ)

〔株〕AND CREATE代表取締役社長

お茶の水女子大学卒業後、大手アパレル企業を経て、1998年にプライスウォーターハウスコンサルタント(現・IBM)入社。企業変革戦略コンサルティングチームのリーダーとして、新規事業戦略や人材開発などのプロジェクトを推進。これまでに延べ7,000人のコンサルタントやマーケッターを育成。2013年に独立し、法人研修やセミナー、個人指導も行なう。近著に、『外資系コンサル流「残業だらけ職場」の劇的改善術』(PHP研究所)。

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