かつて長者番付の1位に輝き、現在は初の著書『わが投資術』で話題を集めている、清原達郎氏。「伝説の投資家」と呼ばれた清原氏は、新NISAのことをどう見ているのか。投資家としての経験と知識に基づく、お勧めの運用法を聞いた。(取材・構成:前田はるみ)
※本稿は、『THE21』2024年7月号特集「40代・50代は新NISAをどう使えばいいのか」より、内容を一部抜粋・再編集したものです。
※本稿は2024年6月時点の情報に基づき、投資に対する著者の考え方を示したものであり、個別の金融商品を推奨するものではありません。金融商品の価値は状況によって変動しますので、購入の可否を含む投資の判断はご自身の責任で行なうようお願いいたします。
新NISAは、個人投資家なら「やらなきゃ絶対損」というくらい夢のような制度です。投資未経験者にとっても、投資を始める絶好の機会だと思います。
なんといっても、運用益が非課税で、その期間が無期限であることが最大のメリットです。通常の証券口座では約20%の税金がかかるのに対して、NISAで口座を開けば利益は丸々手元に残ります。
仮に、成長投資枠の年度限度額240万円をめいっぱい使って株を買い、それが10倍の2400万円になったとしても、税金は一切かかりません。夢のようです。
これから投資を始める人にお勧めのNISA活用法は、「つみたて投資枠」を使って投資信託でコツコツ運用することです。その理由は、毎月一定額を自動的に投資する積立投資なら、初心者がやりがちな失敗を回避しつつ、株価の上がり下がりを気にせず続けられるからです。
株式投資でいちばん大切なのは、株価が下がっても絶対に売らないことです。しかし、初心者は買った株が下がると、不安になったりパニックになったりして、あわてて売ってしまいます。その点、積立投資なら株価が下がっても売らずに持ち続けることができます。
次に大切なことは、株価が暴落したときに勇気を持って株を買うことです。暴落した株はいずれ上がる可能性が高いので、下がった株こそ「買い」なのです。しかし、これも初心者には心理的ハードルが高いでしょう。
この点についても、積立投資なら自動的に投資し続けるので、投資家が相場を見ながら売買のタイミングを自分で判断する必要がありません。相場が下がればより多くの数量を買うことができるので、初心者はぜひ積立投資をすべきだと思います。
では次に、投資信託を選ぶ際の注意点をお伝えします。投資信託には、大きく分けて2種類あります。
TOPIX(東証プライムの全銘柄を対象とした株価指数)や、日経平均株価(日経225とも言う。東証プライムの全銘柄のうち代表的な225銘柄の株価指数)などのインデックス(株価指数)に連動させる「パッシブ運用」(インデックス運用とも言う)と、運用会社のファンドマネジャーが独自の判断で有望な銘柄を厳選して投資する「アクティブ運用」です。
前者は手数料が年0.1%程度と低いのに対し、後者は成長が見込まれる銘柄をリサーチするコストがかかるので、年1%超と高く設定されています。
私のアドバイスは、「手数料の高いアクティブ運用は避け、パッシブ運用の投資信託に投資すべき」です。これまでパフォーマンスの良かったアクティブ運用の投資信託であっても、これからも好成績を残せるかはまったく未知数です。パフォーマンスが良かったために資金流入が続き、かえって運用難に陥って成績が落ちるケースも多々あります。
また、私の経験上、TOPIXの成績を上回るアクティブ運用の投資信託はかなり珍しいです。パッシブ運用の投資信託のうちどれを選ぶかですが、私が推奨するのは、TOPIXに連動するETF(上場投資信託)です。
日経225に連動するETFと比較すると、パフォーマンスを見れば大差ありませんが、「バブルっぽい半導体関連株」の比率が高い日経225連動のETFよりも安心して投資できると思います。
ただし、注意したいのは、株価指数に連動するETFには、レバレッジのかかったものもあるということです。例えばレバレッジが2倍のETFなら、100万円の資金で200万円分の投資ができます。株価が上がれば2倍の儲けが出る一方で、株価が下がれば2倍の損失が生じます。リスクが大きいので初心者は避けるべきです。レバレッジのかかった銘柄か否か、購入時にしっかり確認しましょう。
海外株であれば、全世界の株式に分散投資できる「eMAXSSlim全世界株式(オール・カントリー)」、通称「オルカン」や、米国株を代表する「S&P 500」に連動するインデックスファンドであれば、安い手数料で投資できます。
ただし、海外株には為替リスクがあるので注意が必要です。私個人としては、さすがに今の為替水準だとドル建ての資産には投資したくないですね。その点、日本株なら為替リスクを回避できますし、海外株よりも割安だと思います。
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更新:11月04日 00:05