2017年10月10日 公開
2023年01月12日 更新
かつて、50~100ページにもおよぶ社内向け提案書を作っていたという無印良品。紙の量が実行力と反比例していることが問題であると、社長に就任した松井忠三氏は資料削減を含めた改革を断行した。無印良品が行なった改革とは。そして、その結果たどり着いた「良い資料」とは。
2001年に㈱良品計画の社長に就任した松井忠三氏は、当時不振にあえいでいた同社の組織改革を断行し、数年で見事な復活へと導いた。改革の主眼は「実行力」の強化──常に行動し、試行錯誤し、改善を繰り返せる「強い現場」を作ることにあったと松井氏は語る。その考え方は、同社の「資料」の作り方をも一変させるものだった。
「当時の良品計画、そして同社を擁するセゾングループには、『紙が多い』という企業文化が根づいていました。私も、出向前に在籍していた西友では日々何10枚、ときに100枚以上の資料を作っていました。トップから求められる『新規性と緻密なロジックを併せ持つ提案』を出すための作業でしたが──良品計画に来て、それこそが不振の原因だ、と発見するに至りました」
そのきっかけは、異業種組織との交流にあったという。
「互いにどのような書類フォーマットを使っているのか、という情報交換を行なった際、好調な企業の社内提案書は2~3枚程度しかないと知って驚きました。そして、シンプルな書類であればあるほど現場への指示が的確になることもわかったのです」
社内では「常識」だった長大な提案書には、市況分析から導き出される長期の戦略構想などが綿々とつづられてはいたが、現場の具体的な行動へと反映できる要素は皆無だった。
「無印良品の各店舗にもそれらの資料が送られていましたが、長いばかりで役に立たない、したがって読まれない。実行に落とし込めない戦略作りのために、私たちは人員と時間を使ってコストを空費していたのです」
紙の量と実行力は反比例する──この考えのもと、松井氏は「商品説明用資料などを除き、会議に出す社内提案書はA4の用紙1枚に収まる量で作ること」というルールを作った。
「5W1Hと費用対効果だけを記し、あとは口頭で説明すべし、と社員たちに伝えました。慣れるまでは皆、戸惑ったようです。裏表両面にびっしり書いたり、A3に書いて縮小コピーしたりと悪あがきする者も(笑)。とはいえ実践を重ねるうち、作り手の労力も少なく、受け取り手も素早く理解できるメリットを実感できたようで、次第に浸透していきました」
その後、さらに紙の量を減らすためにペーパーレス化も推進。会議資料はタブレット画面や映写機での確認を基本にすることで、配布のためのコピーなどに伴う雑務もカットできた。
更新:11月25日 00:05