2018年01月12日 公開
2023年01月30日 更新
人事組織の専門家である柴田氏は、企業の幹部候補や管理職を対象に研修をすることも多い。そこで目の当たりにするのが、必要なスキルやマインドが身につかないまま、四十代を迎える人が多いという現実だ。
「働く人のパフォーマンスは、『特定スキル』『ポータブルスキル』『心の持ちよう』の3層から成り立っています。
特定スキルとは、特定の会社や組織で仕事をするために必要なスキル。ポータブルスキルとは、どんな会社や業界、職種でも必要となるスキルです。心の持ちようとは、人間性や人としての器だと考えてください。
20代のうちは、会社で与えられた仕事を一生懸命やって、特定スキルを身につければいい。しかし、30代から40代は、意識してポータブルスキルを鍛える必要がある。さらに40代から50代は、心の持ちようが伴わなくてはいけません。
ところが、大企業で出世してきた人ほど、ポータブルスキルが身に付いていない。組織が大きいと、個人がやることもマニュアルやフォーマットで細かく決められ、言われた通りにやれば仕事をこなせるからです。
しかし今は、どんな大企業でも、組織の統廃合やリストラが行われる可能性はある。その時、特定スキルに依存している人は、行き場を失うことになります」
代表的なポータブルスキルとは、次のようなものだ。
「議論をまとめ、納得させるファシリテーションスキル。相手の表情を読み、表情で語るスキル。聞き手を惹き込むプレゼンテーションスキル。わかりやすい文章や資料を作るスキル。情報を整理し、構造化するスキル。最低限この五つが身につけば、どこでも仕事ができます。
これらのスキル自体は基礎的なものであり、適切なトレーニングをすれば、誰でもできるようになります。たとえば『相手の表情を読む』も、高度な読心術を学べと言っているのではなく、『相手の顔を見て会話する』という基本的なことをやればいいだけ。でも実際は、報告する部下の顔を見ずに、資料ばかり見ている上司がいかに多いか。
プレゼンテーションのスキルにしても、『一分間で自分の考えをスピーチしてください』と言われると、何をどう話していいかわからず、しどろもどろになってしまう。心当たりがある人は、大至急ポータブルスキルを磨く訓練をすべきです」
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更新:11月25日 00:05