2017年12月08日 公開
2017年12月08日 更新
商社や食品会社を経てコンビニ大手ファミリーマートのトップに就任し、大規模な経営統合などを主導してきた上田準二氏。2017年の突然の引退は、それをネタにした「黒幕引き丼」の発売などでも話題になった。自らのキャリアを振り返りつつ、後輩世代の40代にアドバイスをいただいた。《取材・構成=村上敬、写真撮影=まるやゆういち》
コンビニ業界を長年牽引してきた名物経営者、ユニー・ファミリーマートホールディングスの上田準二氏が、2017年3月、社長から取締役相談役に退き、さらに2カ月後には取締役を退任。鮮やかな幕引きでサラリーマン人生の掉尾を飾った。上田氏の目に、さまざまな悩みを抱えた今の40代ビジネスマンはどう映っているのか。
「サラリーマンにとって40代は中間点に過ぎません。昔は定年が早かったけど、最近は65歳まで働くことがあたりまえになって、将来は70歳定年もありうる。そうすると、40代はちょうど折り返し地点。まだこれからです。
実際、キャリアが分かれ始めるのも40代です。20~30代は、とにかくスキルを磨いて、プレーヤーとして経験を積んでいく時期で、それはだいたいみんな同じです。しかし、40代になると、それまでに磨いたスキルを発揮して中間管理職として実績を出すことが求められる。その結果によって、マネジャーあるいはプレイングマネジャーとしてそのままやっていくのか、さらに上のポジションをいくのかも決まってくる。キャリアの分岐点です。
私が伊藤忠商事で課長になったのも、40歳頃でした。実は最初は、出世したくなかったんですよ。課長を拝命したとき、真っ先に頭に浮かんだのは年収のことです。当時は、残業の割増賃金でばっちり稼いでいましたから。ところが、課長になるとそれがなくなり、年収が減ってしまう。妻にどう言い訳すればいいのかと頭を抱えました(笑)。
それでも課長昇進を受け入れたのは、会社が自分の能力を評価してくれたから。人に認められることのありがたさは、お金に換えられるものじゃない。そう考えたら、年収くらいなんだと思えるようになりました。
それに冷静に考えると、いったん年収が下がっても、そのあと管理職として階段を上っていけたら、プレーヤーで居続けるより生涯年収は高くなります。結局、自分が頑張れば年収の問題は解決するんです」
プレーヤーとマネジャーの最大の違いは、部下がいて、そのマネジメントが必要になること。そこに悩む四十代も多いが、「むしろ楽しかった」と振り返る。
「仕事においてもっとも重要なもの――。それは社内外で信頼できる仲間を増やすことです。できるだけ広範囲に、ただ知っているだけでなく、心の通い合う仲間を作る。それでたいていの仕事はうまくいきます。
部下は、心通い合う仲間になり得るもっとも身近な人たちでしょう。だから課長になって部下を持つとき、仲間が増えると思って楽しみでした。
今の若い人は考え方や行動が不可解で、心が通わない、ということも聞きますが、価値観が違うのは当たり前です。『今どきの若いやつは』というギャップは、いつの時代もありました。私から見れば、今の40代の方も世代が違うと感じます。
では、ギャップを埋めるにはどうすればいいのか。私は上司自身が、部下の間に入っていくしかないと思う。いまの時代に同じやり方が通用するかわからないけど、私はとにかく部下を飲みに連れて行って、話をしました。
当時、私がいたのは、食用の鶏肉を輸入する畜産課。自分たちが輸入した食肉原料がどのような最終商品になっているのか調べるのも勉強だと、『焼き鳥研究会』を毎晩開催していました。時には終電を過ぎることもありましたが、そんな時は、部下を近隣のホテルに泊まらせて、しっかりサウナにでも入って翌朝はシャンとした顔で出てこいと、檄を飛ばしたものです。
ただ、いつもこの調子ではみんな疲れますので、水曜日になると部下を一日休ませました。急ぎの仕事があっても、『そこは俺がやっとくから、いいから休め』と。水曜日、畜産課のシマには私一人しか座っていなかったから、管理部門からずいぶん目をつけられました。
もちろん普段の仕事でも、部下のフォローはやっていました。たとえば『他の商社にお客様を奪われた』と報告があれば、突き放すのではなく、翌週一緒に行って、自分が営業するところを見せて教えます。そして、部下が真似をして結果が出たら、ちゃんと部下の手柄として褒めます。山本五十六の『やってみせ、言って聞かせて、させてみて、ほめてやらねば、人は動かじ』です」
更新:11月24日 00:05