トリンプ・インターナショナル・ジャパン社長時代、19期連続増収増益という記録を打ち立てた吉越浩一郎氏。徹底的な"デッドライン付き仕事術"で残業ゼロを実現したことは有名だが、実は、この仕事術を下支えする重要な要素が「休息」だったと言う。圧倒的なアウトプットのための、一流の休息術についてうかがった。(取材・構成=林 加愛、写真=永井 浩)
長時間労働は「無能の証」と断言する吉越浩一郎氏。トリンプ・ジャパン社長時代は残業ゼロを徹底、定時になると自らフロアの電気を消して回ったという「伝説」も残っている。
「仕事というものは本来、就業時間内のパフォーマンスが問われるもの。『時間内で』という縛りがあってこそ、効率を上げる工夫ができる。それが個々人の能力の向上につながるのです」
限られた時間を濃い密度で働くということは、「質の高い休息を取る」ということと表裏の関係にある。
「集中して働けば、疲労が溜まって能率が落ちます。それをリセットするには休息が不可欠。それも細切れではなく、まとまった休みを取るべきです」
そして、社長就任後ほどなく、「課長職以上は少なくとも年1回、2週間連続で有給休暇を取るべし」というルールを作った。
「最初はかなりの抵抗を受けました。本人たちはもちろん、その部下たちから『課長が2週間も留守では仕事が回らない』と苦情が出たこともあります」
しかし、吉越氏が耳を貸すことはなかった。「自分がまとまった休みを取りたかったから」と笑うが、現実問題として、誰かが2週間いないだけで成り立たないという仕事のあり方こそ正されるべき、と考えたからだ。
「情報共有の不徹底、部下の自立度の低さ、それを許している課長のマネジメント。それらを改善するためにも、強制力が必要でした」
多くの人が連続休暇を取れるようになったある年からは、ルールの浸透を図るため「2週間連続休暇を守れなかった者は、翌年の連続休暇禁止」という罰則まで設けたが、これは思わぬ結果を招いた。
「ある課長が、『去年のペナルティで今年は休暇が取れませんでした。ということは来年も、再来年も、私は長期休暇がとれないのでは!?』と訴えたのです。言われてみればそのとおり、すぐ改定に(笑)。そのような珍事もありつつ、徐々に皆、慣れてくれました」
社長在任中、同社は「19期連続黒字」の快挙を達成している。そのパフォーマンスの裏に、一連の「戦略的休息術」があったことは言うまでもない。
更新:11月22日 00:05