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葛西紀明・負けず嫌いの「レジェンド」のやる気UP術

2017年11月08日 公開
2017年11月14日 更新

葛西紀明(スキージャンプ選手)

「いつか風向きが変わる」と信じ、続けてきた

モチベーションを高める要素の一つに、ライバルや勝負に「勝ちたい」という欲求がある。しかし、40代ともなると、そもそも闘争心が薄れてしまっている人もいるだろう。プロスポーツ選手の中には40代でも第一線で活躍している人がたくさんいるが、中でも「レジェンド」と呼ばれ、41歳にしてオリンピックのメダルを勝ち取った葛西紀明選手はその代表格だ。「勝利への欲求は、確実にモチベーションになっている」と語る葛西選手に、年齢を重ねても衰えないやる気の源泉についてお話をうかがった。《写真撮影=津田明生子》

 

やる気を維持するには「新しいこと」が必要

スキージャンプ競技で10代の頃から現役で飛び続け、史上最多7回のオリンピックに出場、41歳のときに出場したソチオリンピックでは銀メダルを獲得するなど、華々しい活躍を長期にわたって続ける葛西紀明選手。「以前は、調子が出なくてやる気を失うような弱気なときもあったが、最近ではそうした弱い自分がいない」と語る。転機になったのは2002年のことだった。

「この年に出場したソルトレイクシティオリンピックが散々な結果に終わりました。それは、『もう、自分にはこれ以上進歩はないかもしれない』と、すっかりモチベーションを失ってしまうほどの挫折でした。
しかし、そのあと新たにフィンランド人コーチにつき、新しい練習メニューなどを取り入れてみると、次第にやる気が戻ってきて、成績も上がってきたのです。
今思えば、それまでの私は競技生活がすでに長かったこともあり、既存の価値観に縛られていました。自分のやっていることが全てと思い込み、練習内容なども自分のやり方を曲げずに、新しいことをしようとしなかった。でも、打ちのめされたことで、もう一度ゼロからやり直そうという気持ちになり、新しいものを受け入れてみる気持ちになったのです。それ以降はモチベーションを良い状態で保ち続けられています。
そうした意味では、今40代の方も、ひょっとしたら同じような状態にあるかもしれません。『やる気が出ない』という人ほど新しいことに目を向けてチャレンジしてみてほしいと思います」

 

20年前の挫折すらいまだに悔しい!

02年の挫折が自分を変えた――そう語る葛西選手だが、中でも悔しい思い出としていまだに忘れられないのが、1998年の長野オリンピックで団体戦のメンバーから外れ、そのときの日本チームが金メダルを取ったことだ。

「生来の負けず嫌いなので、悔しい経験はなかなか忘れられないですね。今も、長野のジャンプ台に行くとあのときの写真が飾ってありますから、それを見るたびに悔しい気持ちがよみがえります(笑)。
ただ、その悔しさや『勝ちたい』という気持ちが自分を奮い立たせてくれるのも事実。そうしてトレーニングをすれば、それが確実に実力アップにつながり、自信ややる気につながっていきます。つらいときはもちろんありますが、『練習しなければ勝てない』『強い選手はもっと頑張っているぞ』と自分に言い聞かせながらやっています。
でも、『つらいこと』も実は好きなんですよ。練習しながら『つらい』と思うと、『でも、これが成績に、勝利につながるんだ』と思えば嬉しくなるし、やる気も出ます。ですから、後輩たちのつらそうな顔を見るのも好きです(笑)」

 

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「理不尽」に耐えればチャンスは必ず訪れる >

著者紹介

葛西紀明(かさい・のりあき)

スキージャンプ選手/〔株〕土屋ホーム スキー部 選手兼監督

1972年、北海道下川町生まれ。92年のアルベールビルオリンピックに19歳で初出場して以来、リレハンメル、長野、ソルトレイクシティ、トリノ、バンクーバー、ソチと史上最多計7回の冬季オリンピックを始め、数多くの国際大会に出場。ソチオリンピックでは個人ラージヒル銀、団体銅の2つのメダルを獲得。40歳を超えてなお第一線で活躍し、「レジェンド(生ける伝説)」と国内外から尊敬を集める。「ワールドカップ最年長優勝」「冬季五輪7大会連続最多出場」「冬季五輪スキージャンプ最年長メダリスト」「ワールドカップ最多出場」「ノルディックスキー世界選手権最多出場」の5つのギネス世界記録ホルダー。

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