2017年05月29日 公開
2023年01月25日 更新
エアビーアンドビーCEO ブライアン・チェスキー氏(写真提供Airbnb)
「ホテルは持たないけれども世界最大規模を誇るホテル業は?」
なぞなぞのように聞こえるかもしれないが、大真面目なこの質問の答えは「エアビーアンドビー(Airbnb)」だ。
エアビーアンドビーとは、世界最大の「空き部屋(短期レンタル)」のマーケットプレイス。基本コンセプトは、一軒家やアパートの中の空き部屋を貸したい人と、旅行やその他の理由で部屋を借りたい人のマッチングである。設立は2008年。9年目にして評価額300億ドル(3兆円)を誇ると言われ、191カ国65,000都市以上を対象市場とする、まさに「ネット時代の申し子」のようなビジネスである。
最近、エアビーアンドビーは、「空き部屋の貸し借り」だけでなく、新しいサービスとして「体験」の提供を始めた。「体験」とは地元に住む人がガイドを務め、その土地だから楽しめる自分の「こだわり」を披露するサービスだ。
たとえば東京なら、「生け花を習おう!」「キャラ弁をつくろう!」「書道を習おう!」「わさび狩りに行こう!」などがある。このようにして、エアビーアンドビーが提唱する「Belong Anywhere(暮らすように旅をしよう)」を具現化する、新しい旅のかたちを提案しているのだ。
「ネット・ビジネス」としてのエアビーアンドビーは、人が集う「プラットフォーム」を提供するだけであり、アセットやノウハウを持たない。質の高いサービス/体験を提供できるか否かは、部屋や「体験」を提供する「ホスト」の腕にかかっている。これが、エアビーアンドビーが、顧客との協業によってつくられるいわば「共創型ビジネス」であり、同社が戦略的フォーカスとして「コミュニティ」を第一に考えている理由である。
エアビーアンドビー、サンフランシスコ本社(写真提供ダイナ・サーチ、インク)
もうひとつ、エアビーアンドビーには有名な逸話がある。共同創業者でありCEOのブライアン・チェスキーが、シリコン・バレーの天才投資家ピーター・ティールから出資を受ける際にもらったアドバイス、「Don’t F**k up the Culture(企業文化をぶち壊すな)」を心に留め、設立当初から企業文化に徹底的にこだわり、それに「戦略的に」取り組んできた。
2015年には企業情報の投稿サイトglassdoor.com(グラスドア・ドット・コム)により、「最も働きたい会社」に選ばれ、グーグルやフェイスブックなどという有名企業からも、その企業文化に魅了されて転職してくる人が絶えないという、アメリカのIT/ネット・ビジネス業界を担う大手有名企業やスタートアップがひしめき合うサンフランシスコ・ベイエリアで最も話題の会社となっている。
今回、2015年にオープンしたばかりの新社屋を訪問し、同社の企業文化育成の立役者であるチップ・コンリー氏(戦略アドバイザー)とマーク・レヴィ氏(社員エクスペリエンス・グローバル担当責任者)のお話を聴くことができた。また、エアビーアンドビー・ジャパンの東京本社にも訪問し、代表取締役の田邉泰之氏にお話をうかがった。
チップ・コンリー氏(左)、マーク・レヴィ氏(中央)、石塚しのぶ(右) (写真提供ダイナ・サーチ、インク)
更新:11月22日 00:05