2017年04月06日 公開
2017年08月10日 更新
水道も電気もない集落に、お洒落な娘さん。
「君たちは夢のようなノマドだ」とおだててくれるのは、バカンスの権化フランス人。
「世界一ミニマムなキャンピングカー」ともてはやすのは、2倍の排気量のバイクにまたがったドイツ人。
「この車でシベリアを走るの? バカなの?」と鼻で笑ってくれたのは、どこから見ても日本人にしか見えなかった、ロシア人のおっさん。
ノマドを務めて12年。
軽自動車を棲家にして1年半。
暗黒大陸を彷徨って、4ヶ月。
セネガルから東に進路をとり、ブラックアフリカの真髄マリに入りました。
アフリカの内陸部は、もはや暑くはありません。熱いです。
となり村で核融合していそうな核疑惑レベル。
とかく先進国気取りの連中が、どうしてアフリカはいつまでたっても経済発展しないのかと、働きぶりやら人格やらを問いただすものですが、マリ滞在2週間にして悟りました。
朝から晩まで、サウナに閉じこもって仕事をしてみてください。
マラリアを抱えた蚊を追い払えないほどに意識が遠のいたら、アフリカでの生き様が見えてきます。
太陽の子……としか言いようのない、マリ。
母なる日差しは、顔の産毛をじりじりと燃やしながら、子泣きじじいのように重く頭にのしかかってきます。
生きる術は、無駄に動くべからず。
牛ですら、草も喰まずに木陰で直立不動。微動だにしません。
多くの村人は日がな1日木陰に寄り添い、深い闇からぢーっと沿道を眺めて過ごします。
ブラック企業からしたら怠けているようにしか見えませんが、お天道様の声なき声に従っているのです。
達人ともなると、どんなに暑くても眠れるようになります。
暑い日中は寝て過ごし、涼しい夜も寝るわけで、いつ働いているんだって話です。
世界各地で頻尿に明け暮れていた拙者にして、日に2度しか小便が出ないマリ。
太陽がくれた季節は、臨界点に達した「猛夏」だけ。
太陽の身に余る恵みは、彼らの口数を減らし、動作を緩慢にします。
そつなく仕事をこなすには、下手の考え休むに如かず。
とかく賄賂が付きもののアフリカの国境で、マリはほぼ顔パスでした。
書類を読む係官の目が泳いでいるというか、瞳孔が開いているというか、焦点が定まっていないのです。
難癖をつけて賄賂をたかれるほど頭は回転せず、アイドリングで精一杯。
最低限の質問をしたらパスポートにスタンプを押し、逃げるように休憩する係官です。
更新:11月23日 00:05