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自由闊達、臨機応変。流しのウェイターが働く国(セネガル)

2017年03月05日 公開
2017年08月10日 更新

<連載>世界の「残念な」ビジネスマンたち(19)石澤義裕(デザイナー)

実は勤勉かつ合理的なセネガル人たち


身なりのこざっぱりした人ほど、フレンドリー。

走行距離15万kmの軽自動車に鞭を打ち、アフリカを放浪しています。
すべての登場人物が賄賂をタカってくるあこぎな国境を2勝1敗2分でくぐり抜け、アフリカ大陸の最西端セネガルにたどり着きました。

 

女性ばかりが輝く街・ダカール

首都ダカールは、パリ-ダカール・ラリーの元ゴール。2009年にレースが南米に引っ越したためか、ほぼ白人の姿を見かけません。

300年以上もフランスの植民地だったわりに、ヨーロッパ臭のしないリアルアフリカ。

ありとあらゆる道で捨てられた車が屍をさらし、歩道の片隅で死体のように寝ている老婆。
ヤギが泣き叫び、馬車が駆けずり回る砂まみれの街ですが、女性たちは華やかです。

長い足の上に形の良いをお尻をのせ、背筋を伸ばして歩く娘さんたち。ムスリムとは思えぬほどに肌をさらし、情熱的な唇。ミシンで編んだかのように緻密なドレッドヘアー。
目に愛嬌がないため恋をする隙もありませんが、歌舞伎町に連れ帰ればお嬢として活躍しそうなオスマシ美人です。

年相応のお肉を身にまとったご婦人たちは、極彩色のワンピースを着こなします。
芸術的に盛り上がった大きなお尻を左右に振り、お蝶夫人のように歩く姿はさながらお妃。頭に華やかなターバンを巻きながら、ペラペラのサンダルを穿くアンバランスさが魅力的です。

対する男性陣は、Tシャツ一枚の地味系。日本の格差社会を凌ぐ男女格差です。

 

世界一勤勉なムスリムはセネガル人?

一方、奇妙に派手な一団もいます。
布を継ぎはぎしたサイケデリックな服装に、洒落た腕輪や数珠。
彼らは、独自に進化したイスラム教の一派です。

掟破りの偶像崇拝。
宗教指導者の御本尊をイラスト化し、巷の独裁者よりも街中に奉っています。
国家規模のヒーローとして、神格化されているのです。

また、彼らは祈りません。
その教えは、「働くことは、祈ること」。
祈る代わりに、働きます。断食もしません。

世界一勤勉な、ムスリムなのです。

とはいえ、東南アジアや中央アジア、イランやトルコと多くのイスラム教の国を旅しましたが、セネガルほど軒先や路地で祈る人たちはいません。

世界一、祈る姿を見せるムスリムでもあります。


宗教指導者のイラストを3つも貼ったタクシー。

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著者紹介

石澤義裕(いしざわ・よしひろ)

デザイナー

1965年、北海道旭川市生まれ。札幌で育ち、東京で大人になる。新宿にてデザイナーとして活動後、2005年4月より夫婦で世界一周中。生活費を稼ぎながら旅を続ける、ワーキング・パッカー。

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