2017年04月25日 公開
――2010年のチェジュ航空をはじめ、LCCとのパートナーシップ契約を次々と結んでいます。これはなぜですか?
村瀬 あらゆる交通をネットワーク化し、シームレスにつなげて、目的地に簡単、便利に行けるようにすることを目指しているからです。誰もがそれを望んでいるでしょう。
LCCで空港に降りた人は、空港が目的地ではなくて、空港から目的地までなんらかの手段で行かなくてはなりません。そのために、短い乗り換え時間で高速バスを使っていただけるようにするためのパートナーシップ契約です。
LCCと高速バスだけでなく、鉄道や旅客船など、あらゆる交通をシームレスにつなげることが重要だと考えています。
――鉄道といえば、第三セクターから運行事業を引き継いで、2015年から京都丹後鉄道の運行もしていますね。
村瀬 これまで当社が手がけてきたのは、200kmを超えるような、都市と都市を結ぶ長距離の交通でした。これからは、都市を中心にしたエリア内の交通にも力を入れていきます。エリア内の交通で基軸となるのは、速達性と定時制という特長のある鉄道。だから、鉄道事業に参入したのです。
京都丹後鉄道は5市2町を通っていて、114kmもの長さがあります。これを基軸にして、枝葉となる路線バスやレンタカー、自転車などの交通をマーケティングしながら整備し、みんなが使える交通に変えていっています。WILLERの総力を挙げて、モデル都市を作っているところです。
――具体的には、どういうことをしているのですか?
村瀬 移動というのは、目的があるからするわけです。高速バスは、もともと目的を持っている人に向けたサービスです。たとえば「東京ディズニーリゾートで遊びたい」という目的を持っている人のために、東京ディズニーリゾート行きの高速バスを提供する。
しかし、鉄道の場合は沿線が決まっていますから、乗っていただくためには自分たちで目的を作り出さなければなりません。もちろん、景観や食、沿線の方々との交流といった、目的になり得る素材はもとからあるのですが、放っておいてもそれを目当てに人がどんどん来るほどのコンテンツにはなっていません。
そこで必要なのは、コンテンツ自体の魅力を上げることと、エリア内に点在するコンテンツを交通でつなぐことです。東京の価値が高いのは、上野の美術館や東京タワーといった個々のコンテンツの魅力はもちろんですが、それだけでなく、上野の美術館から東京タワーに地下鉄で簡単に行けるように、交通が整っているからです。
ですから我々は、この1~2年間、魅力の高いコンテンツのアイデアを生むためのビジネススクールを開講したり、そのアイデアに投資するための地域ファンドを作ったりすると同時に、地元のバス会社と共通の1日乗車券を作るなど、交通を整備する取り組みも進めてきました。
――今のところ、手応えはいかがですか?
村瀬 地元の方々との連携など、下地はできたという感じですね。人が集まってくるという結果が出るのは、これからです。
――他に、今、とくに注力されていることはありますか?
村瀬 日本国内の地域の価値だけでなく、世界の都市の価値を上げることも、これから10年間をかけてやっていきます。これまで築いてきた日本品質のサービスを世界に提供していきたい。現地のサービスを否定するわけではありませんが、選択肢として示していきたい。そうすることで、「世界中の人の移動にバリューイノベーションを起こす」という当社のビジョンの実現に向かっていけると思います。
たとえば、2016年にはベトナムにWILLER VIETNAMという会社を作りました。ASEANをはじめ、世界各地で調査を始めているところです。
《写真撮影:まるやゆういち》
更新:11月22日 00:05