2017年03月25日 公開
2019年07月22日 更新
フジテレビの深夜アニメ放送枠『ノイタミナ』の初代編集長として活躍してきた山本幸治氏。ノイタミナ(NOITAMINA)は、アニメーションの常識を覆したいという想いから、ANIMATIONの綴りを逆にしてつけられた名前だ。2014年にはフジテレビを飛び出して〔株〕ツインエンジンを起業し、活躍の場をさらに広げている。ツインエンジン自体は企画プロダクションだが、グループにアニメ制作スタジオが複数社ある。アニメ制作スタジオといえば経営が難しいというイメージが強いが、山本氏はどういう戦略のもとにグループを率いているのか? お話をうかがった。
――まず、ツインエンジングループの概要について教えてください。
山本 まだ情報発信をあまりしていませんから、わかりにくいですよね。めまぐるしく変わるので、会社案内も現在進行形で作っています。
ツインエンジンは企画会社です。物語や絵といったアニメの内容面の設計と、それと接続するビジネススキームの構築をしています。クリエイティブとビジネスの2つをエンジンの動力源にたとえたのが会社名の由来です。簡単に言うと、制作スタジオに対していかに良い発注をするかが仕事です。
ツインエンジンは中核となる戦略として「スタジオブランディングビジネス」というものを打ち立てていて、スタジオコロリド、ジェノスタジオ、レヴォルトという制作スタジオをグループとして強化しています。制作スタジオは、アニメの制作を受注し、実際に絵を描いて作るのが仕事です。これら制作スタジオ3社の代表は、今は僕が兼ねています。また、4月に劇場公開する『夜は短し歩けよ乙女』『夜明け告げるルーのうた』を制作しているサイエンスSARUという制作スタジオの取締役も務めています。
「台風のノルダ」
(c)2015 映画「台風 のノルダ」製作委員会
スタジオコロリドはツインエンジンよりも前に設立された会社です。世田谷区の豪徳寺にある、500平米くらいある4階建ての大きなコンクリートの一戸建てをリフォームしてスタジオにしています。『台風のノルダ』(2015年公開)という短編映画が最新作ですが、現在、長編映画の準備をしています。アニメ業界でデジタル作画を導入した先駆者で、何十社というアニメ会社が見学に来ました。メインのクリエイターの多くが20代という、可能性に満ちたスタジオです。
「虐殺器官」
(c)Project Itoh ⁄ GENOCIDAL ORGAN
ジェノスタジオは映画『虐殺器官』(今年2月3日公開)を制作した会社です。マングローブという制作スタジオが経営破綻したことを受けて、制作を継続するために2015年に設立しました。
マングローブの経営破綻は、アニメ業界の象徴的な事件でした。僕はマングローブの作風がすごく好きだったのですが、作品のクオリティを高めるために赤字を出して、その赤字を埋めるためにマングローブらしくない作品を受注してブランド価値を下げてしまい、縮小再生産のループの中で破綻しました。マングローブの魅力を受け継ぎつつ、業界の課題をどう解決していくのかという宿命を背負った制作スタジオだと思っています。
レヴォルトは完全に新設の制作スタジオです。アニメの制作現場の過酷さやテレビ放送に納品が間に合わないことなどがネットニュースになったりしていますが、そんな時間に追われる制作現場で飛ばされがちな工程、たとえば動画検査という工程をしっかりとやりたいという制作マンの理念のもとで、2016年に設立しました。
制作スタジオが目指す方向には質を求めるか量を求めるかの両極があって、質のほうの一端が、京都アニメーションのように、外注比率を下げ、自社内で制作するシステムを安定させるやり方です。このやり方を完成させるためには長期視点での人材の育成やノウハウの積み上げが求められますし、かつ、どこかで大ヒットがないと維持が難しくなっていくものなのですが、僕たちはそれをグループ戦略の中で短縮して実現できないかと考えています。
更新:11月22日 00:05