2017年03月15日 公開
2023年04月06日 更新
物事を良く捉えるには、「使う言葉を選ぶ」ことも有効だ。
「たとえば『撤退する』という言葉をそのまま使うとマイナスのイメージがありますね。しかしその判断が本当に適切だと思うなら、『進まない決断をする』という言い方もできます。私は趣味の登山で時折この言葉を使います。これ以上進めない悪天候などの場面で、諦めるのが嫌だからといって前進すると、命にかかわります。ポジティブな表現は、冷静な判断を下す知恵でもあるのです」
周囲の人に対する感情も、言葉の表現によってコントロールしやすくなるという。
「『あの人は細かいことまでうるさい』ではなく『用意周到で慎重だ』なら、好意的な感情に転換できます。逆に、相手に与える印象を変えたいときも同じ。アポイントを取るとき『お忙しいところ申し訳ありません』より、『お時間いただいてありがとうございます』のほうが、相手も明るい気持ちで対面を迎えられますよね」
さらには書き言葉も、工夫ひとつで感情の整理につなげることができる。
「昔、上司への報告文が『事実と感想がゴチャ混ぜだ』と言われ、以来両者を分けて書くよう意識しました。すると、自分の中で事実関係がクリアになり、感情を整理できたのです。『こう感じていたが、こうも解釈できる』といった分析ができるようになりました。事実と感情を分けて言語化すること、これも感情コントロールに欠かせない術と言えるでしょう」
取材構成 林加愛
写真撮影 永井浩
『THE21』2017年3月号より
更新:11月23日 00:05