
2026年にはデビューから40周年を迎え、「⻄村知美 40th Anniversary Live」を開催する西村知美さん。そんな西村さんは芸能界きっての「資格マニア」として広く知られる。前編では資格に挑戦するきっかけや、苦手分野への挑戦について聞いた。後編では、資格を通じて広がる人とのつながりや、多忙な中での勉強法、そして90歳で目指す「人生アドバイザー」という夢について語ってもらった。(取材・構成:林 加愛)
※本稿は『THE21』2025年10月号 特集「いま取るべき『資格』の選び方・学び方」より、内容を一部抜粋・再編集したものです。
――確かにそうですね。一方で、興味の赴くまま幅広く挑戦するスタイルには、楽しさやワクワク感が感じられます。
西村 ありがとうございます。おっしゃる通り楽しいですし、意外なところで役にも立ちます。それは「コミュニケーションが豊かになる」ということ。例えばラジオ番組のゲストで来られた方が何かのエキスパートだった場合、そのジャンルを少しかじっているだけで一歩踏み込んだ質問ができ、話が盛り上がります。
また、仕事の現場でも「デジカメエキスパート2級」の知識があるおかげで、カメラマンの方と色々なお話ができます。もちろんスキルには雲泥の差がありますが、だからこそ質問できるし、勉強になるお話が聞けて役得です(笑)。
――カメラマンの方もきっと嬉しいと思います。資格が人とつながるきっかけになる、というのは新鮮な視点ですね。
西村 実は、これには原体験があります。中学生のときに盲腸で入院した際、担当医の先生がご年配の男性だったので、少しばかり緊張していたんですね。ところがその先生が囲碁好きだとわかり、「私、囲碁部です」と言ったら一転、楽しくお話ができました。同じ関心事があれば、年齢も職種も超えて親しくなれると知ったので、資格取得のレッスンやスクーリングに行くたび、仕事も年齢もバラバラの受講仲間に話しかけるようになりました。
――資格を通して知識や、人とのつながりが広がる。素敵なお話です。
西村 一つの資格から別の資格へ、という広がりもあります。例えば、子どものためにと35歳で取得した「おもちゃコンサルタント」。この資格は、世界のおもちゃや歴史といった知識から、おもちゃの手作り方法や「このペットボトルで10通りの遊びを考えてください」などのクリエイティブな要素まで、様々な学びが入っています。その勉強が「介護に応用できる」と気づき、50代で「レクリエーション介護士2級」を取得しました。
――おもちゃから介護とは、意外な展開です。
西村 私も予想外でした。そもそもの発端は、おもちゃコンサルタント取得の5年前にさかのぼります。ヘルパー2級の研修で、高齢者施設で働いたとき、レクリエーションとして塗り絵の用具を渡されたご婦人が、「こんな子どもみたいなことできないわ!」とおっしゃったんですね。そのときから「大人が楽しめる遊び方はないものか」と心にひっかかっていて、図らずも5年後、そのヒントを得た形です。
――そしてさらに15年後、新たな資格を。
西村 はい。レクリエーション介護士講座の最終課題で、私は「大人の塗り絵」という企画を提案しました。例えば色鉛筆を「くじ」の要領で3本引いてもらい、その3色限定で花を彩る、など。こうした制約を設けるとゲーム性が出ますし、選んだ色によってはかなりの創意工夫が必要で、その方独自の表現の糸口になります。
――おもちゃコンサルタントでの学びが活かされていますね。
西村 ほかにも、一つの資格の学びが枝分かれ的にほかの資格に広がった経験はたくさんあります。というより、すべての学びが連鎖していますね。何かを知ると、必ず次の「これも知りたい」が現れて、気づいたらこれだけ資格数が増えていた、というわけです。
――多忙なお仕事の合間を縫って多数の資格を取得されていますが、どのように勉強時間を確保されているのでしょう。
西村 私の勉強は基本、一夜漬け方式です。学生時代からの習慣ですが、仕事も一作一作、脚本をインプットしてはアウトプットする連続ですから、短時間で集中的に頭に入れるスタイルが合っているのでしょうね。とはいえ、短時間でもある程度まとまった時間は捻出しなくてはなりません。そこで行なっているのが「時間貯金」。この日は勉強に集中する、と決めたらほかの家事や作業を簡略化したり、家族に協力を頼んだりしています。
――短時間で頭に入る秘訣も、ぜひ知りたいところです。
西村 あくまで私の場合ですが、「書いて、声に出す」ことを繰り返すと頭に入りやすいですね。言葉を自ら発すると、ある意味言霊というか、放った音声が自分に返ってくる感覚があります。暗記をするときは、覚えるべきワードとその説明文を書き、最初は単語を隠して説明文を見て単語を当て、慣れてきたら説明文のほうを隠し、単語を見ただけで説明できるようにしています。
――綿密ですね。セリフを覚えるプロセスとも共通性がありそうです。
西村 まさにそうです。ちなみに、私は勉強も脚本も文章だけでは覚えられない傾向があるので、絵や図もよく描きます。登場人物の関係性やストーリーの流れは毎回図にしますし、勉強では「桶狭間の戦い」の概要を理解するために、桶に入った織田信長が「今川焼」を食べている絵を描いたこともありました(笑)。
――ここでもユニークな創意工夫が(笑)。
西村 でも年齢とともに、どうしても記憶力は落ちてくるものですね。一夜漬けで頭に入れても、試験を受けたらすぐ忘れてしまうのが悩みの種です。対策として、LINEで自分だけのグループをつくり、覚えたことを記録してときどき見返すようにしています。
――年齢を重ねられる中で、受ける資格の傾向に変化などは出てきていますか?
西村 はい。国家資格や公的資格のような勉強量を必要とするものより、趣味寄りの民間資格が増えてきました。理由の一つはやはり暗記ができなくなってきたからですが、もう一つは、第2の人生を楽しむためです。60代になったら、仕事より趣味を主軸にしたいと思っています。
――ビジネスパーソンで言う「定年後」に近いイメージかと思われます。仕事熱心な人ほどいつしか趣味がおろそかになり、定年後に手持ち無沙汰になりがちなのですが、今の間にできる準備はあるでしょうか。
西村 趣味を見つけるなら、三つの視点で考えるのがお勧めです。一つは健康に関するもの。私の場合は「ジュガ」というハワイ発の健康体操を学んでインストラクター資格を取りました。二つ目は、食など生命活動に直結するもの。三つ目は、芸術系の趣味です。何かを表現することは、年齢に関係なく楽しさの源になると思います。
――素敵なアドバイスをありがとうございます!
西村 いえいえ。アドバイスと言えば、私は90歳で「人生アドバイザー」になるという目標を持っています。趣味を満喫した後、もう一度仕事に復帰したいと。
――90歳で!? 人生アドバイザーとはどんな仕事ですか?
西村 そういう職業はまだないので(笑)、私が第1号になるつもりです。さすがに90年分の人生経験があれば、こんな私でも説得力を持って話せるのではないかと(笑)。と言っても一方的な決めつけや、「元気でないとダメ」というポジティブの押し売りのようなアドバイスは避けたいですね。ただ皆さんに伴走し、生き生きと人生を送れるお手伝いをする──そのとき、学んできたことが活かされるなら、私にとっても最高の人生になると思います。
更新:01月25日 00:05