2016年08月14日 公開
アドバイスをするコーチ
さらに、こういう人たちはスランプに陥りやすいという特徴があります。スランプになって初めて自分を客観視し、人の助言が耳に入ってくるようになるのです。成績が乱高下する傾向にある選手の多くは、こうしたタイプと言えます。
一方、トップアスリートの中でも常に良い成績を出せている人は、どれだけ成功体験を積み重ね、センスが磨かれても自分を過大評価せず、他者からの助言を柔軟に取り入れます。だから本番でも結果が出せ、スランプに陥ることもないのです。
これは他のスポーツはもちろん、ビジネスでも同じでしょう。職場では監督・コーチは上司にあたると思います。皆さんもいろいろと細かい要望や指摘をされ、うんざりするといった経験がある方も多いと思います。
特に入社3~10年目くらいで、1人である程度仕事をこなせるようになり、成功体験も持ち始めた頃のビジネスパーソンに多いのではないでしょうか。
自分の感覚を持つことはもちろん重要ですが、客観的な意見に素直に耳を傾け、時には自己流を軌道修正することが、結果を追い求める上では重要なのです。
結果を出せる人は「意思の強い人」というイメージを持っている方も多いと思います。もちろん、自分の意思を貫き通すことは悪いことではありません。しかし、個人競技ならともかく、チーム競技になるとそれだけではうまくいきません。自分の意思を押し通すことで、相手の感情を害し、それが物事を悪い方向に進めてしまうことが多々あるからです。実際、トップアスリートの多くは強い意思を持ちつつも、「相手の感情」を尊重するという特徴があります。
実は、これは馬術においても一緒です。相手は『馬』ですが、馬も人間と同じく意思を持つ生き物です。そのため、選手の指示を受け入れてくれないこともあるのです。
そんなときに、ムチを使って自分の意のままに馬を動かそうとすると、逆に反発され、障害でミスをしたり馬が立ち止まってしまったりすることになります。それが嵩じて、落馬という事故につながることもあります。
これは、センスの良い馬を相手にしているときほど当てはまります。結果を残せる選手は、その時々の馬の状態を正確に察知し、『馬が力を100%発揮できているか』『気持ちよく障害を飛べているか』を常に意識しているのです。
相手が人間の場合も同様です。交渉の際、自分の意思を押し付け“相手をコントロールしてやろう”というマインドでは、物事をうまく進めることはできません。相手の経験やスキルが自分よりも優れている場合、反対に相手の意のままに操られてしまうこともあります。
私は、障害馬術選手の育成以外に、乗馬クラブクレインの関東にある6つの事業所の運営責任者も担っていますが、やはり優秀なスタッフほど「相手の感情を意識する」ことを心がけているように思います。
乗馬体験にいらっしゃるお客様や新たに入会したいというお客様に対し、一方的に伝えたいことを話すのではなく、「相手がなぜ乗馬に興味を持ったのか」「何がネックになっているのか」「心地よい空間と感じてくれているか」を意識して話を進められるスタッフほど、お客様との関係構築も上手くいきますし、結果にもつながっているようです。
更新:11月23日 00:05