2016年08月14日 公開
8月5日に開幕したリオデジャネイロオリンピック。オリンピックという大舞台においては、普段とは雰囲気や緊張感がまったく違うという。どのアスリートも多くの時間を練習に費やし、本番に挑む。だが、本番でその力を十分に発揮できる人もいれば、できない人もいる。その違いは何か。
障害馬術日本チームがリオデジャネイロオリンピック出場を決めた際のコーチを務め、他にも馬術の国際大会で監督やコーチを歴任している中野善弘氏に、「本番で結果を出せる人と出せない人の違い」について伺った。オリンピックの障害馬術も、これを読めばぐっと興味深く観ることができるはずだ。
私がやっている障害馬術という競技は、競技アリーナにさまざまなデザインの障害が設置され、障害についている番号順通りに飛越しなければなりません。
馬にとっては初めて見る障害、苦手な障害もあり、本番までのトレーニングの成果が試されます。
障害は高さや幅が違い、オリンピックなどのトップレベルの大会では高さ160cm、幅200cmにもなります。連続して設置された障害やカーブの途中にある障害もあり、馬が飛びやすいようにどう誘導するか、また、どうすればより早いタイムでゴールを切れるかを選手は考え、競技に臨みます。
通常のルールは「減点法」で、障害の落下、障害の拒否、拒止は減点4、落馬、2回の反抗、コース間違い等は失権となります。
そうしたミスなく規定タイム内でゴールできた選手のうち、一番減点の少ない者同士でジャンプオフ(決勝競技)が行なわれ、また改めて決められたコースを無過失で、タイムの早い人馬が1位となります。
日本トップクラスの障害馬術選手から若手選手まで、多くの選手を指導してきましたが、どんなレベルの選手にも共通して言えることは、「センスの良い人や成功体験のある人ほど、本番で失敗に陥りやすい」ということです。
その理由は、“自分の感覚”を一番に信じてしまうからです。
つまり、周囲からのアドバイスを柔軟に取り入れることができず、「自分基準でここまでできていれば大丈夫」という勝手な自己判断で本番を迎えてしまうため、前評判以上の結果が出せないのです。
たとえば、本番直前の練習では人馬ともに十分に仕上がっているかのチェックを行ない、もし仕上がり状態が不十分な場合、監督やコーチがアドバイスをします。監督・コーチは選手を客観的に見ることができるため、本人が気づけない些細な変化や不調にも気づくことができます。結果を出せる選手はこのアドバイスを元に調整を行なうのですが、センスの良いとされる選手や成功体験のある選手ほど、『これくらいできていれば、あとは自分次第で本番もなんとかなるだろう』と安易に考え、この調整を軽視しがちです。その結果、本番で失敗してしまうのです。
更新:11月23日 00:05