2015年10月15日 公開
2023年05月16日 更新
日々、飛行機の運航の安全を支える整備士たち。数多くの工具や部品を扱う仕事だが、どんな小さなモノであっても紛失することは許されない。不具合につながりかねないからだ。そんな整備士たちの整理・整頓術は、あらゆるビジネスマンの参考になるはず。全日空(ANA)の整備の現場を取材し、ドック整備士の木田賢弘氏にインタビューした。
飛行機の整備には、大きく分けて「ライン整備」と「ドック整備」があります。ライン整備はフライトごとに行なうもの。私が担当しているドック整備は、場合によりますが2週間~1カ月ほどかけて行なうもので、外装のパネルなどを外して機体を点検し、必要に応じて部品の交換や改修を行ない、また元の姿に復旧させる、という一連の作業です。
大きな飛行機を構成している部品は、大きなモノから小さなモノまで、何百万もあります。その1つでも紛失したりしては不具合を引き起こしかねません。うっかりポケットに入れて、どこかで落とした、ということがあってはならないのです。また、工具をうっかり機内に置き忘れた、ということも許されません。ですから、部品や工具の管理にはさまざまな工夫を凝らしており、厳密に整理・整頓しています。
工具について言えば、まず、置き場を決めて、必ずそれを守っています。モノと場所の両方に番号を振って間違えないようにすることはもちろん、ツールボックスの中にも工夫をしています。レンチの置き場はレンチの形に、ドライバーの置き場はドライバーの形に型抜きをしてあるのです。そうしておくことで、工具の置き場がすぐにわかるとともに、もし欠けていれば、何が欠けているのかがひと目でわかります。さらに、ツールボックスには、工具がそろっているかを確認するためのチェックリストもついています。
個人のツールボックスに入っていない工具は共有のモノを借りて使うのですが、それらはバーコードで管理されており、紛失などが起きないようになっています。
ただ、バーコード管理やチェックリストはもちろん重要ですが、個々人の意識も極めて重要だと思います。
私たちは、Pパンというプラスチック製のトレイに工具を入れて現場に行きます。あらゆるモノはPパンの中で管理すると決めておけば、モノを置くときにも意識が働いて、機体や床に置くのが気持ち悪く感じるはずです。
私も含めて、整備士にはモノが乱雑になっていると気持ち悪いと感じる人が多いと思いますが、すべての整備士が初めから完璧に整理・整頓ができるわけではありません。先輩たちから直に指導を受けて、身につけていくのです。
私が入社したばかりの頃、先輩に言われたのは「日常のクセは仕事にも出る」ということです。日常生活から整理・整頓を意識して行動していれば、職場でも自然と意識できるようになるのではないでしょうか。
共有の工具を借りる窓口。この窓口を利用する整備士はグループ各社あわせて約930名いる。共有の工具はバーコードで管理。
更新:11月22日 00:05