2015年10月09日 公開
2016年01月09日 更新
いつも笑顔でマイペース。テレビで観る蛭子能収氏の立ち居振る舞いは、至って自然で無理がないように感じる。そののびやかさは、どういう心の持ちようから生まれているのだろうか? 物事にとらわれない自由の秘訣をうかがった。
漫画家とタレントという2つの顔を持つ蛭子能収氏。その幅広い活動の中でも最近とりわけ注目を集めているのが、テレビ東京系で放送されている番組『ローカル路線バス乗り継ぎの旅』で見せる自由奔放さだ。その姿に、視聴者は一種の憧れを抱く。とくに会社勤めのビジネスマンは「あんなふうに自由に振る舞えたら」という気持ちになるのではないだろうか。しかし、蛭子氏本人は、「決してしたい放題に行動してはいない」と語る。
「何も考えていないようでいて、実は考えているんですよ。思いを言葉で上手に表現できないほうなので、誤解されがちなのですが……。
スタッフの指示は必ず守っています。そこから外れることは決してしていません。それ以外の、たとえば『飲食店で何を食べるか』といったことは指示されていないから、好きなものを頼んでいるだけです。それで、その土地の名物ではなく、パンとコーヒーなどを注文したりするのが、視聴者の方々には面白いのでしょうね」
この番組は、路線バスのみを使って4日以内に所定の目的地に到達するというルールのもとで進行する。スタッフと出演者は、時に過酷なスケジュールをこなしつつ、旅の成功を目指す。
「制限時間内の到着が全員の共通の目的。僕も『成功させたい』という強い思いを持って臨んでいます。その中で、許された範囲で僕らしさを出す感じですね。自由そうに見えるのも、実は演技かもしれませんよ?(笑) それはともかく、僕も番組を作るチームの一員として、ちゃんと考えながら仕事をしていることは確かです」
このように、仕事に対する蛭子氏の考え方は意外にストイックだ。しかし、そこにストレスや悲壮感の影は感じられない。この「真剣で気楽」な姿勢は、これまでに就いたどの職業においても持っていたものだという。
「仕事は一生懸命やる。その結果として得られるお金と自由を楽しんで使う。この点は一貫していると思います」
漫画家になる前、蛭子氏はサラリーマンだった。最初に就職したのは看板店。その後、ちり紙交換の仕事を経て、ダスキンの配達と営業を8年にわたって務めた。
「ちり紙交換もダスキンの仕事も、1人でクルマを運転する、自由にやりやすい仕事でした。ダスキンのときはお客さんの家を1日に200軒くらい回るんです。勤務時間は8時間でしたが、ムダなく効率的に回れば5時間で終わります。そうすれば、早く競艇場に行けるわけですよ(笑)。好きなことをするために、どう効率的に仕事をするかを考えていました」
更新:11月22日 00:05