2015年10月15日 公開
2023年05月16日 更新
格納庫内では、あらゆるモノの置き場が決められている。たとえば、B787のエンジンを交換するために必要な台車いっぱいの工具。この台車には置き場の番号と地図が貼られており、置き場の床にも同じ番号が書かれている。また、台車の中に入っている小分けされたトレイ(「Pパン」と呼ぶ)とその置き場にも番号が振られており、どのPパンが取り出されているのかがひと目でわかる工夫をしている。
どの工具が取り出されているのかすぐにわかるように、ツールボックスの中の小さな工具の置き場は、工具と同じ形に型抜きをしてある。
これは、個人のツールボックスだけでなく、B787のエンジン交換用の工具が入った台車の中にあるPパンなどでも同様だ。
整備士たちは、作業に必要な工具を入れるため、共有の空のPパンを使う。誰がどのPパンを使用しているのかは、Pパンを保管してある棚の横に掲示された管理表に記入し、すぐにわかるようになっている。使用後のPパンは逆さまにして戻すのがルール。もし中に置き忘れた工具があっても、落ちるのですぐに気がつくからだ。
組織としてミスの起こらない仕組みを築き上げているだけではなく、各整備士がそれぞれに工夫していることもある。お話をうかがった木田氏の場合は、作業時に小さめのドライバーや帽子、ライトなどにコードをつけて作業着とつなぎ、落としたりしない工夫などをしている。自分のクセを把握し、それを補う工夫も重要だ。
作業の区切りがついたときは、必ず工具が揃っているのを確認する。こまめにチェックすることで、もし紛失した場合でも「昼の休憩前にはあったが、午後3時には見当たらなかった」などとわかり、探す範囲を狭められるからだ。また、個人のツールボックスの中の工具にはすべて個人名が書かれており、月に1回、その名前まで確認する総合チェックを組織として行なっている。
《取材・構成:西澤まどか 写真撮影:まるやゆういち》
《『THE21』2015年11月号より》
更新:11月22日 00:05