2015年10月11日 公開
2023年02月27日 更新
もう一つ、デメリットとして考えられる最大の懸念は、「情報漏えいや不正利用の危険性」です。
先日、年金情報の漏えいが発覚しましたが、現代社会において、個人情報の漏えいを完全にゼロにすることは不可能です。だからこそ、私たちは最低限の基礎知識を身につけて、番号の取り扱いに注意をすることが大切です。そのために、2つの大原則を覚えておいてください。
第一に、マイナンバーは「教えない、聞かない」のが大原則です。
マイナンバーが必要になる場面は、今のところ、税と社会保障に関する書類を作成するときのみに限られます。たとえば、税関係では、源泉徴収票、支払調書、扶養控除等申告書など。社会保障では、被扶養者届、被保険者資格取得届、離職票など。また、有価証券の取引口座、保険料の支払いや解約返戻金を受ける際も、税が関わってくるので必要です。
このような税や社会保障関連以外の手続きを理由に他人のマイナンバーを聞き出したり、他人の番号を漏えいした人は厳しい罰則を受けることになります。
第二に、マイナンバーを使用する際は「本人確認」が必要です。先述のように、個人番号カードで本人確認するか、通知カードの場合は、免許証やパスポートによる本人確認が必要となります。
つまり、悪意を持った誰かが番号を手に入れたとしても、マイナンバーは本人確認をせずになんらかの手続きに使うことはできないので、たとえマイナンバーを入手されても、本人不在で年金の受給が行なわれるなどの犯罪で利用する可能性は低いと思われます。この「マイナンバー提出時に本人確認をする」システムは、現在アメリカで運用されている番号制度において、番号の不正入手による成りすましが横行したため、それを防ぐために日本が独自に取り入れたルールです。
また、マイナンバー制度によって、あらゆる個人情報が一元管理されるのではなく、これまでどおり、各行政機関で管理される「分散管理」(※注3)が取られます。一カ所に個人情報が集約されるわけではないので、万が一情報漏えいがあっても、すべての個人情報が一気に流出するわけではありません。
政府側は「漏えいの危険性は極めて低い」としていますが、制度設計上は漏えいを前提にしており、たとえ漏えいしたとしても問題が生じないシステムが構築されています。その意味では、マイナンバー制度は良くできた制度ともいえます。
ただし、今現在もいわゆる「名簿業者」が個人の勤め先や収入、出身校のデータをいつの間にか持っているように、今後も個人情報は少しずつ漏えいしていく可能性はあります。そのときに個人が特定される数字(マイナンバー)があることでバラバラだった情報がひもづけされて、詳細かつ膨大なデータになっていくリスクはあります。
(※注3)分散管理
現在、行政機関はそれぞれの機関が個人情報を保有する、分散管理のかたちをとっている。マイナンバー制度は、これらをまとめて一元管理化するのではなく、今までどおり分散管理のまま、必要な情報を照会・提供しやすくするもの。
更新:11月23日 00:05