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ついに開始!「マイナンバー」とは!?

2015年10月11日 公開
2023年02月27日 更新

影島広泰(弁護士)

 

税金を徴収するために始まった!?

 では、そもそもなぜマイナンバー制度は導入されることになったのでしょうか。ひと言で言うと、「行政を効率化して、公平・公正な社会を実現する」ため、言い方を変えれば、「税金を漏れなく徴収する」ためです。タテワリだった行政に横のつながりを持たせることで業務や作業を効率化し、さらに、より正確な所得把握が可能となることで、社会保障や税の給付と負担の公平化を図るようにする──というのが政府の公式見解です。そしてその背景には、政府の財政再建という大きな目的があります。

 マイナンバーの利用範囲は、当面は「社会保障(年金分野、労働分野、福祉・医療・その他の分野)、税、災害対策の3分野」のみ。つまり、今後はみなさんが給料をもらったり、税金を払ったり、社会保険料を支払う際に、マイナンバーが必要になります。さらに、確定申告、医療保険の保険料支払い、年金の給付を受ける際、相続する際なども該当します。

 現在、個人の情報については、日本年金機構が年金情報を把握し、国税庁が所得や納税を、市役所は住所や家族構成を……などと、行政機関ごとにバラバラで管理されています。これらの情報をすべて照合するには、大変な困難が伴います。これまでは、引っ越しで所在がわからなくなった、同姓同名の人と間違えたなどのミスもありましたが、マイナンバーにより、簡単かつ正確に個人を識別することができるようになるのです。

 

離れて暮らす子供の扶養控除に注意

 では、具体的に私たちにはどのようなメリットがもたらされるのでしょうか。

 たとえば、2008年に、基礎年金番号に統合されていない5,000万件の年金記録が宙に浮いた「消えた年金問題」がありました。マイナンバー制度が施行されれば、個人番号ですべて管理できるので、このような問題は生じにくくなるでしょう。

 また、生活保護の不正受給や脱税などの不正がしにくくなることで公平性・公正性が強まります。行政機関が個人番号で納税や所得、社会保障の情報をひもづけできるので、所得があるにもかかわらず申告していなかったり、生活保護を不正に受給していたりすると、ただちに明らかになります。

 さらに、国民が享受できるメリットとしては、「利便性の向上」が挙げられます。今までは行政で手続きをする際に本人確認や添付書類を求められることがたびたびありました。そのために、住民票や所得証明書を事前に役所などに取りに行かなくてはならなかったところを、今後は必要な添付書類を管理している行政機関にその場で問い合わせることができるので、事前に集める必要がなくなります。

 一方で、気をつけなくてはならないこともあります。

 たとえば、サラリーマンで副業をしている人。少額なのでうっかり申告し忘れていたら、個人番号で国税庁に副収入を把握され、申告漏れを指摘されてしまう。

 あるいは、離れて暮らす大学生の息子が、アルバイトで扶養控除の壁である年間103万円以上稼いだ場合。これまでは親が子供の状況を把握しておらず扶養のままということが多かったのではないかと思います。しかし、個人番号によって親子関係や子供の所得がひと目でわかるようになり、扶養控除を外さなくてはならないケースも出てくるでしょう。

 このように、これまで各税務署が個別に調べなければわからなかったことが個人番号によって簡単に割り出せるようになり、これまで一部うやむやですまされてきた所得の申告がより厳しくなることが考えられます。

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著者紹介

影島広泰(かげしまひろやす)

弁護士

1973年、静岡生まれ。98年、一橋大学法学部卒業。2003年、弁護士登録し、牛島総合法律事務所入所。現在、パートナー弁護士。15年、情報化推進国民会議本委員。ITシステム・ソフトウエアの開発・運用に関する案件、ネット上の紛争案件などに従事。『担当者の疑問に答えるマイナンバー法の実務Q&A 』(レクシスネクシス・ジャパン)など、マイナンバーに関する著書多数。

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