2015年10月11日 公開
2023年02月27日 更新
現在のところ、マイナンバーの利用は「社会保障・税・災害対策」に限定されていますが、今後活用の範囲は広がっていきます。
まず2018年には、銀行の預貯金口座にマイナンバーを登録する制度がスタートします。これは任意ですが、銀行口座にマイナンバーを登録することになれば、オレオレ詐欺や架空請求など不正利用を目的とする口座が開設しにくくなることも考えられます。金融庁の指導や金融機関ごとの方針によりますが、積極的に運用される可能性は高いかもしれません。
また、過去に受けた予防接種や健康診断履歴をマイナンバーで管理して、転職や転居しても次の健康保険組合や自治体に引き継げるようにする法案も審議されています。さらには、個人番号カードに健康保険証の機能を持たせることも検討されており、政府としては、ゆくゆくは個人番号カードを包括的な公的身分証明書として活用できるようにしようとしています。
これを便利だと感じるか、監視下に置かれているようだと感じるかは人それぞれですが、「個人番号カード」は、未来の私たちのビジネスや暮らしを変える、興味深い側面もあります。
たとえばITベンダでは、銀行のATM端末に個人番号カードをタッチするだけで、ATMのカメラに映った顔とカードに入っている顔写真を照合して本人確認をし、その場で新規口座開設ができる新しいシステムをすでに開発しています。また、引っ越し時の水道・電気・ガスの開設も、個人番号カード内の情報により、ATMで簡単に届け出ができるようになるかもしれません。
あるいは、ショップのポイントカードやスポーツクラブの会員証の代わりにしたり、ポイント付与も個人番号カードで行なうこともシステム的には可能です。
このようなことは、「個人番号」を利用する必要はなく、「個人番号カード」の機能だけで実現可能ですから、民間での活用はさまざまな用途が考えられ、アイデア次第で新たなビジネスモデルが生まれていくでしょう。
また現在、電子的な個人認証は、生体認証や指紋認証など、あらゆるシステムが運用されていますが、個人番号カードが普及していけば、顔認証の時代がやってくるかもしれません。
住民基本台帳カードは利用範囲が限定的でほとんど普及しませんでしたが、個人番号カードは、民間での活用範囲が広がれば、鉄道各社のプリペイド型電子マネー(Suica、ICOCAなど)のように圧倒的な普及率となることも考えられます。
このように、「個人番号」そのものではなく、「個人番号カード」には大きな可能性が秘められています。個人番号カードの導入は、行政での活用のみならず、民間企業にもさまざまなビジネスチャンスをもたらす可能性があるのです。とかく“政府の都合”ばかりが取り沙汰されるマイナンバーですが、ビジネスの側面で注目してはいかがでしょうか。
取材・構成:麻生泰子
(『THE21』2015年10月号より)
更新:11月23日 00:05