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挑戦心に火をつける! 米起業家の言葉

2015年05月12日 公開
2023年05月16日 更新

竹内一正(ビジネスコンサルタント事務所「オフィス・ケイ」代表)

ジョブズ、ゲイツ、マスク……名経営者の珠玉の言葉

現代のアメリカを代表する起業家たちの言葉は、挑戦心を失いがちな我々の心に火をつけてくれる。それら珠玉の名言を、米起業家たちについての著書を数多く発刊している竹内一正氏に選んでいただいた。
 

スティーブ・ジョブズ

(アップルコンピュータ創業者)

「 ハングリーであれ、愚かであれ」

「他人の人生を生きてはいけない」


アップルコンピュータを創業し、マッキントッシュ、iPod、iPhone、iPadなど数々の革命的な製品を開発しながら、2011年に惜しまれつつこの世を去ったスティーブ・ジョブズ。数多くの名言があるジョブズだけに一つに絞るのは難しいのですが、ここでは二つ選ばせてもらいました。

まずはあまりにも有名な「ハングリーであれ、愚かであれ」。2005年にスタンフォード大学で行なわれた講演会で発せられたひと言です。

飽食の時代、ハングリーになるのは非常に難しいことですが、誰もが豊かさに慣れてしまっては、イノベーションは生まれません。また、ここでいう「愚か」とは、「当たり前のことを疑うこと」だと私は解釈しています。たとえば「前例がこうだから」「上司からの命令だから」と何も考えないで仕事をこなす姿勢からは、成長は期待できません。
納得できない命令には、「なぜ、それをやるのですか?」と聞き返してみる。時に批判覚悟で「当たり前を疑う」という愚かさこそが、成長の原動力となるのです。

そして、「他人の人生を生きてはいけない」ということもまた、ジョブズの生涯を通じての重要なテーマでした。「会社のために」「上司のために」などという言葉は一見美しいですが、それは誰かの言いなりに仕事をしていることに他なりません。
「会社のために」というお題目のもとに倫理観が失われ、その結果起こった企業不祥事も、枚挙にいとまがありません。

ジョブズには、これも有名な「今日が人生最後の日だとしたら、今日やることは本当にやりたいことか」というセリフがあります。ぜひこの問いを胸に、「自分は、自分の人生を生きているのか」としばし立ち止まって、考えてみてほしいと思います。

もう一つだけ、ジョブズについて取り上げておきたいのが「点と点を結ぶ」という言葉。今やっていることに一生懸命取り組んでいれば、そのときは無駄だと思ったことがやがて役に立つことがある、ということです。

有名な例が、ジョブズが大学時代に学んでいたカリグラフィー。当時はなんの役にも立たないと思っていたものが、マッキントッシュの美しいフォントを生み出すことにつながりました。「自分の人生を生き」、目の前のことを一生懸命こなしていれば、やがて点と点が結びついて成功に至る。そのことを体現した生涯でした。
 

イーロン・マスク

テスラモーターズ会長/スペースX社CEO

「 真似するのではなく、基本的原理から発想する」


電気自動車「ロードスター」「モデルS」で自動車業界に旋風を巻き起こし、商業用宇宙ロケット「ファルコン9」にて民間企業で初めて国際宇宙ステーションとのドッキングを成功させる……。今や、ジョブズを超える経営者とまで評されるのが、電気自動車メーカー・テスラモーターズ会長であり、ロケットベンチャー企業・スペースX社創業者のイーロン・マスクです。その型破りな発想の原点とも言えるのがこの言葉です。

「学ぶ」という言葉が「まねぶ」から来ているように、他社を真似て商品を開発するのが間違っているわけではありません。ただ、それでは「世の中をあっと言わせるようなもの」を作ることができないのも事実です。

「火星に人類を移住させる」と公言するイーロンは何か物事を考えるに当たり、常にその根本に立ち返って発想します。これは、彼が学生時代、物事の原理原則を考える学問である「物理学」を専攻していたことに由来します。

たとえば、電気自動車のコア技術である「バッテリー」が良い例です。三菱や日産などは大型の専用バッテリーを開発してきました。一方、イーロンは、ノートPCで使う汎用品の小さなリチウムイオン電池を大量に(約七千個も)並べて一つのバッテリーパックとして高性能を実現したのです。まさに、「バッテリーとは何か」という基本的原理に立ち返ったからこそ、出てきた発想でしょう。

また、現在挑戦中ですが、スペースX社では一度飛ばしたロケットの再利用実験を進めています。「一度使ったものを再利用することができれば、ロケットコストは劇的に安くなる」というのは、根本から考えればまさにそのとおりですが、「ロケットは使い捨て」という常識にしがみついた既存の宇宙ロケット企業では踏み出せない大きな壁でもありました。従来の常識を一度忘れて「そもそも」に立ち返ることで、革新的なイノベーションは生まれるのです。

イーロンは南アフリカ出身で、その後アメリカに移住。若い頃は肉体労働などをして稼ぎながら学業を続けた苦労人でもあります。しかし、当時を振り返って、「貧しくてもハッピーであることは、リスクを取る際に非常に大きな助けとなる」と言っているように、常に楽天的であり続けました。根本から考え、楽天的に実行する。真のイノベーションはそこから生まれることを、彼は教えてくれます。

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