2015年05月08日 公開
2023年05月16日 更新
日本でも終身雇用が崩壊し、年功序列から実力主義に人事制度をシフトしつつある企業が多いと思いますが、30代の若手社員にまで、成果に応じて給与などの待遇に大きく差をつけている企業は多くないと思います。
しかし中国は違います。多くのローカル企業、欧米企業は、完全実力主義、成果主義を取っています。たとえば、大卒同期入社の30歳社員でも、入社後の評価によって給与が月1万元(約18万円)から月3万元(約54万円)まで3倍程度の差がつくケースもあります。
このような話を聞くと、日本のビジネスマンの方々の中には「中国のような実力主義の環境であれば、自分はもっと頑張れるのに」と思われる方もいるのではないでしょうか。
ただし、中国で出世して高い給料をもらうのは、そう簡単ではありません。たとえば、みなさんが中国である地区の営業責任者になったとします。あなたの評価は、昨年と比較してどれだけ売上げを伸ばしたかといった定量的な「KPI実績」に基づいて決まります。
その際、担当した地域によって競合の多さ、商売のやりやすさなどはもちろん異なりますが、中国の企業ではそういう環境要因はいっさい無視して、どの地域の営業責任者も一律のKPIで評価されるのです。
各地区の営業責任者がKPIの成績順に上から並べられ、毎年上位10%は昇進し、下位10%は降格させられる、という仕組みで運用されているのです。
日本のように、担当地域ごとの有利不利をある程度考慮したうえで評価を調整するようなことは、中国ではありません。評価者による主観を少しでも評価に入れてしまうと、被評価者から「不公平だ」と不満が続出するからです。
このような中国の「完全成果主義」人事制度では、結局成果は運次第という考え方もありますが、逆に、できるだけ結果が出やすい地域の責任者に任命してもらうための事前の根回しができるかどうかが重要となり、それも含めて、すべてその人の実力次第と考えたうえで作られているとも言えます。
数字だけで評価され、一回一回の結果で自分の今後のキャリアが決まってしまう中国人会社員は、ある意味日本人よりも大変かもしれません。というわけで、彼らは自らのキャリアで成功するために、社内の主要部門関係者と良い関係を築く努力を欠かさず、嫌いな上司にも媚を売りながら、日々頑張っているのです。
(『THE21』2015年1月号より)
更新:10月04日 00:05