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「最後は勇気なんです」 『電波少年』の仕掛け人・土屋敏男が制作で貫いてきた信念

2026年10月09日 公開

土屋敏男(テレビプロデューサー)

土屋敏男
写真:イッツコムのマスコットキャラクター"コムゾー"と土屋敏男さん

平成初頭、日本テレビで伝説的な人気を博した「電波少年」シリーズ。手がけたのは、テレビプロデューサーの土屋敏男さんだ。同局を離れた後も、映画のプロデュースやローカル番組の企画など、精力的に活動を続けている。

そんな土屋さんの代表作の一つが、映画『わたのまち、応答セヨ』。愛知県蒲郡市を舞台に、かつて栄えた繊維産業にフォーカスを当てたドキュメンタリーだ。2025年に全国の劇場で上映された本作が、10月に全国112社のケーブルテレビ局で一斉放送、うち97社で10月12日(月・祝)に同時放送される。

土屋さんはなぜ、人の「本気」にこだわり続けるのか。イッツコム主催の取材会で、作品づくりの根底にある信念を聞いた。

 

リスクを超えた先にしかないもの

――過去のインタビューで「奇跡は運と努力と才能と勇気があるところにしか降りてこない」というご発言がありました。努力や才能があっても、なかなか最後の勇気を出せずに足踏みしてしまっている方も多いと思うんですが、土屋さんご自身はそういうリスクがある場面で、どうやって勇気を振り絞ってきたのでしょうか。

【土屋】リスクを超えたところの先にしかやっぱり面白いものはない、というのが自分の中の実感でしょうね。みんながやること、みんながやりそうなこと、みんなが賛成することの先には、大したものはないんですよ。

――予定調和には面白みがない、というご実感なのですね。

【土屋】自分にしか見つけられていないものの先にしか、やっぱりない。僕の場合は電波少年がそうでした。大人たちは「テレビでこれ?」と思っていたんだけど、当時の中学生・高校生たちは最初「こんなのテレビでやっていいの?」って言いながらも、熱心に見続けてくれて、それが次のテレビになったわけです。

だから、今、地上波テレビが元気がなくなってきているのは、要は新しいテレビを生んでいないからだと思うんですよ。今うけているもの、みんなが当たっているものを、ある種、焼き直していいると思うんです。それだと次のテレビが生まれない。テレビ自体が過去のものになったら困りますよね。

――確かに、焼き直しは多いですもんね。どこの局の番組かわからない、個性がない感じは確かにあります。

【土屋】必要なのは"個の強さ"なんですよね。みんなで相談するとか、上からOKをもらうとか、そういうことから離れたものだと思うんです。でも最後は勇気なんですよ。ちゃんと一歩出て、そこに地面があるかどうかわからないんだから。落ちるかもしれない。

 

保見団地のブラジル人に声をかけ続け、生まれた感動

――みんながやってるものじゃダメなんだ、という信念ですね。

【土屋】だから、失敗ももちろんしますよね。失敗もするけど、やっぱりそれが未来を作るんだと思うので。愛知県豊田市(ひまわりネットワーク)で僕がやっていた番組にしても、今までのケーブルにはない番組を作ろうとしていて、「地域吸着番組」というものを作っていたんですよね。

――地域吸着番組。どんな番組ですか。

【土屋】ケーブルテレビって地域密着って言うじゃないですか。その上をいかなきゃダメだな、と。吸い付く、街を変える、ということをやろうとしていたんです。

豊田市に保見団地という、映画にもなった団地があるんですけど、トヨタなど自動車産業がどんどん大きくなっていくと下請けが増えて、日本人だけでは足りなくなってブラジル人を連れてきて働かせる、という三次下請けの時代が1980年代、90年代くらいにあったんですね。一番安いから団地に住むわけです。保見団地は結構大きいところなんですけど、6割、7割が実はブラジル人ということになっていた。

そこは孤立していくし、教育レベルも低かったりして、地元の暴走族とそこで育った若い子たちで喧嘩が起こるような、ものすごく荒れている時代もあって。「あそこには近づいちゃいけない」という、触れてはいけないエリアみたいなところだったんです。

もう一方で、年に一回豊田で「豊田おいでんまつり」というのがあって、いろんな人がチームを作って踊りを競い合う祭りがあるんですよね。これに保見団地のチームを作って参加させようと。ブラジル人だからリオのカーニバル、ダンスが好きに違いない、と一年かけてやったんです。

――面白い発想ですね。それは、どうやって進めていったんですか。

【土屋】毎週毎週、ロケに行って、何の手がかりもないところで「こういうお祭りに出ませんか?」ってずっとやっていったんですよ。それこそ全身タトゥーの若い子に脅されたりもしたんですけど、優しい人たちもいて「私たちのチームで出るわ」って言ってくれたりして。豊田出身のお笑い芸人をレポーターとして毎週行かせていたんですけど、ブラジル人のチームが出場して、準優勝するんです。

感動でしたね。密着しているとディテールが見えてくるんです。人を知ることもそうだし、もう一歩先へ行って、街を良くする、街を変えていくことをドキュメントバラエティとしてやっていました。

 

予算や場所よりも「本気が面白い」

――第三者としての密着じゃなくて、第二者のような形で関わっていく。面白いですね。
もう一つお伺いしたいんですけれども。土屋さんというと、日テレでメディアの最前線に立ち、大きな予算でムーブメントを起こしてきた方というイメージがとても強いんです。そんな中で地域で働くこと、地場産業、ローカルな仕事が持つ面白さ、あるいはこんなところに可能性があるなと思ったところは何でしょうか。

【土屋】どこにでも本気の人はいるということです。電波少年って何かというと、人をいかに本気にさせるかということなんです。「猿岩石」もやりましたけど、「ウッチャンナンチャンのウリナリ!!」で社交ダンスの大会に芸能人たちがチームを組んで本気で挑む、ドーバー海峡を横断する、とても無理だと思われるようなことにチームを組んで必死に練習して挑む、というのもそうじゃないですか。本気が面白いと思っているんです。

だから「わたのまち、応答セヨ」も、地元の繊維業者の鈴木さんや石川さんをはじめ、本気の人たちがいたし、さっきの豊田市の番組も、あいつが本気になるから保見団地のブラジル人たちも本気になって挑戦して練習して、準優勝した時に泣くわけですよ。

――本気だからこそですよね。

【土屋】それはやっぱり見せるに値するものになるわけですよね。どこでも本気が撮れれば面白くなる、というのは、僕が何十年と作ってきたテーマでもあるかなと思いますね。

――予算の大きさや、どこで何を発表するかというのはもちろん重要ではあるけれど、それよりも。

【土屋】そうです。人間の本気は人を動かすんだな、というのを今回もすごく感じさせられました。それを見てくれた若い子たちが、自分も本気で何かやろうと思ったら、いろんなことが変わると思うんですよね。

 

【放送概要】
番組名:映画『わたのまち、応答セヨ』
放送日時:2026 年 10 月 12 日(月・祝)20:00~ ※伊豆急ケーブルネットワークは 21:00~
放送チャンネル:
[イッツコム] イッツコムチャンネル 10(地デジ 10ch)
[ケーブルテレビ品川] シナガワン TV10 チャンネル 10 しながわ(地デジ 10ch)
[伊豆急ケーブルネットワーク] いるかチャンネル(地デジ 12ch)
ほか上記3社含む全国のケーブルテレビ局97社で10月12日(月・祝)に同時放送。また、全国112社で10月に一斉放送。

プロフィール

土屋敏男(つちや・としお)

テレビプロデューサー

元日本テレビプロデューサー。「元気が出るテレビ」「ウッチャンナンチャンのウリナリ!」などバラエティ番組を演出。「電波少年」シリーズではTプロデューサー・T部長として出演し話題になる。2017年萩本欽一のドキュメンタリー映画「We Love Television?」を監督。一般社団法人1964TOKYO VR代表理事。

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