
「まずは自分で考えろ」が、
※本稿は、西原亮 著『コンサル時代に教わった 仕事ができる上司の当たり前』(ダイヤモンド社)より、内容を一部抜粋・編集したものです。
「部下に自発的に考え、行動できる人材になってほしい」
これは全上司の願いでしょう。だからこそ、相談に来た部下に対して、教育的指導のつもりでこう言ってしまうことが多くあります。
「答えをすぐに聞くな。まずは自分で考えてみろ」
しかし、準備のない「自分で考えろ」は、部下を育てる指導ではなく、上司の怠慢です。
特に、経験の浅い部下に対して「自分で考えろ」と言うのは、泳げない人を海に突き落として「自力で岸まで戻ってこい」と言っているのと同じです。部下は思考の迷路に迷い込み、時間を浪費し、自信を喪失し、溺れてしまいます。
私がコンサルタント時代、尊敬する先輩から叩き込まれた「鉄則」があります。
「部下に『考えろ』と言っていいのは、お前自身の中に『考え』があるときだけだ」
なぜなら、正しいフィードバックとは、「上司の考え(基準)」と「部下の考え」の「ギャップ(差分)」を埋める作業だからです(下図)。
もし、上司であるあなたの中に「こうあるべき」という基準がないまま部下に考えさせると、どうなるでしょうか?部下が必死に考えてきたアウトプットに対して、その場の気分や思いつきで「なんか違うな」「もっといい案ないの?」「ウチらしくない」と、「後出しジャンケン」のダメ出しをすることになります。
基準がない指摘は、指導ではなく「難癖」です。これを繰り返すと、部下は「どうせ何を言っても否定される」「正解探しゲームにつき合わされている」と感じ、上司を「老害」認定して心を閉ざします。

では、自発的な部下を育てるためには、どうすればいいのでしょうか?
答えは、「考える範囲を限定すること」です。
■実践例:新商品の企画書作成
×丸投げ:「新商品の企画書、まずは自分で考えてつくってみて」
→部下は何から手をつけていいかわからず、フリーズします。
○範囲限定:「企画全体の構成は私がつくる。君には、商品イメージ図を、若者向けとシニア向けの2パターンで考えてみてほしい。それと、20代に刺さるキャッチコピーを5つ考えてきてくれ」
いかがでしょうか。「商品イメージの2パターン」と「キャッチコピー5つ」。ここまで範囲が限定されると、部下は「それなら考えられそうだ」と脳を動かし始めます。
「範囲を限定する」ことは、過保護ではありません。
まずは小さな範囲で「自分で考えて、上司の基準をクリアした」という成功体験を積ませる。そして、その積み重ねによって、徐々に自分で考えられる範囲を広げていく。
この手順を踏むことで、部下は「自ら考え行動する人材」へと育つのです。
更新:08月21日 00:05