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軋轢・理不尽は今もあるのか? 業界30年の目から見たコンビニFCの実態

村尾信一(フリーライター)

軋轢・理不尽は今もあるのか? 業界30年の目から見たコンビニFCの実態

「本部が加盟店を搾取している」。そんなコンビニ業界の負のイメージは、本当に正しいのだろうか。コンビニ店長の奮闘を描いた新刊『店長、パスタに箸をつけたらお客様がキレました。 コンビニで働く外国人たちと店主一家の23年』の著者である村尾信一氏に、業界が抱える本当の課題を解説してもらった。

 

コンビニフランチャイズへの偏見と実体

「意に反した発注を強要され、断ると契約更新をちらつかされる」
「近くに同一チェーンの新店を出され、売上が減少した」

ひと頃はこういった類いの不満がコンビニ加盟店のオーナーから聞かれたのは事実です。

この話題を論じる前にまず、筆者の素性を明らかにしております。

私は1995年から2025年までの30年間、セブン‐イレブン・ジャパンに在籍しました。主に加盟店オーナーと向き合うオペレーション本部に所属し、経営相談員(OFC)、地区責任者(DM)、統括責任者(ZM)などを経験させていただきました。成長著しい90年代から曲がり角に立たされた近年までの移ろいを、本部社員として体感してきました。

「発注を強要された」という不満は「発注こそが売上をつくる生命線」とばかりに、本部スーパーバイザー(セブン‐イレブンではオペレーション・フィールドカウンセラーと呼ぶ)が鼻息荒くアドバイスした時代が背景にあります。

強要の真偽はさて置き、オーナーからすると強要という受け止めになるのも頷けます。

ですが今はコンプライアンスの名のもとに、スーパーバイザーが発注数を強要することはご法度とされており、懲戒処分対象になっております。

逆に「最近のスーパーバイザーは具体的な発注数を言わなくなったから物足りない」と、不満をこぼすオーナーが増えたくらいです。

「近くに新店を出された」という不満はドミナント出店戦略(ある地域内における市場占有率を向上させて独占状況を目指す経営手法)を指すのですが、そもそも出店ペースは近年極端に鈍化しました。

最大手セブン‐イレブンの場合、2000年代後半は毎年1000店ペースで純増していたものが、2019年以降、2026年の現在までずっと総店舗数は2万1千店台のままです。

たとえ新店をオープンしても、売上不振店からの移転オーナーや複数店オーナーが中心で、かつての不満は聞こえてこなくなりました。

既存店を守るため、と言えば聞こえはよいですが、チェーンの成長といった観点からすると、本部内でも賛否の分かれるところです。

 

それでも悩み多きコンビニ稼業

では、現在もっとも多く聞かれるオーナーの不満とは何でしょうか?

「人手不足に苦しんでいる」
「社会保険料を含む人件費の負担が増している」
「客数の減少が深刻。コンビニの将来性に不安を感じる」

このほか、現場レベルでは

「カスハラに悩まされている」
「従業員が定着しない」
「サービス業務が多様化して従業員の教育が大変」
「外国人従業員の教育に苦慮している」

などと言った声も聞かれます。

これらの問題は、店の努力だけではどうすることもできない社会課題も含まれています。つまりさまざまな要因が複雑に絡み合った結果なのです。

元本部社員の私からすると、地域によって課題の優先順位は微妙に違います。いや、もっと言うと個店によって違います。あくまで一店一店に本部が寄り添って、できることから一緒に課題解決することが肝要です。

もっとも、問題点の共通項も多く、本部が主体的に解決すべき課題は多々あります。

ところがです。フランチャイズビジネスの難しさとも言うべきは、オーナーの資質、能力が十人十色だということです。

「本部に不満はありません。感謝してもしきれないくらいです」と言って、本部との良好な関係を築いているオーナーもいれば、「店が苦しんでいることを本部は分かっているのか?もっと店への支援策を手厚くしろ!」と、ことあるごとに不満をぶつけてくるオーナーまで。実に千差万別です。

従業員をしっかりと教育して、素晴らしい店をつくっている優秀なオーナー。彼らは、まさに独立した経営者としての気概を持って商売を続けておられます。そういう店ほど、本部を上手に利用して店を繁盛させています。

かたや本部におんぶに抱っこ。本部依存度の高いオーナーは何かにつけて、本部に責任転嫁して不満ばかり。そういう店ほど、従業員を教育できず店のレベルは低下。売上利益を減少させています。

たしかに昨今の社会環境変化は無視できませんが、むしろ店の内側にこそ問題があり、そちらのほうが影響度合いとしてははるかに大きい。それが現場を見て来た私の肌感覚です。もちろん、本部の問題も大きい。経営方針や営業戦略、加盟店支援策などが的外れでは店の努力も報われません。

ことほどさように、ひと言で問題の本質を表現できないのが、コンビニ業界、フランチャイズビジネスの難しさと言えましょう。あえてひと言で言うとしたら、「リーダーによって組織は変わる」ということでしょうか。これは本部、加盟店双方に言えることですが。

プロフィール

村尾信一(むらお・しんいち)

フリーライター

1967年、大阪生まれ。95年に株式会社セブン‐イレブン・ジャパンへ中途入社。直営店(トレーニングストア)店長、ディストリクトマネジャー(DM・地区責任者)などを経て2011年より東北ゾーン、北海道ゾーンのゾーンマネジャー(ZM・統括責任者)として広域統括を担う。2025年7月退職後は、フリーライターとしてビジネス誌などへ寄稿。著書に『鈴木敏文の遺言』(ビジネス社)、『店長、パスタに箸をつけたらお客様がキレました。コンビニで働く外国人たちと店主一家の23年』(飛鳥新社)。

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