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何度叱っても成長しなかった部下が ある日突然覚醒した本当の理由

池戸裕(ギフト[株]代表取締役)

「人を動かすリーダーの言語化」

「社員がもっと主体的に動いてくれたら…」。多くの経営者や管理職が抱える悩みだろう。しかし、最初から高い主体性を求める必要はないという。中小企業支援に精通する池戸裕氏に、解説してもらった。

※本稿は、池戸裕 著『人を動かすリーダーの言語化 「ストーリーのある理念」が組織を変える』(三笠書房)より、内容を一部抜粋・編集したものです。

 

最初から「自分ごと化」が起きなくても問題ない

「自分ごと化」が起こると、社員の行動や意識に大きな変化が生じます。

内面的な話なのでわかりづらいと思われるかもしれませんが、ここで起こる変化は、実際に目に見える変化であると断言ができるほど、人が変わったように輝き始めます。

よく「目の色が変わる」という表現をされることがありますが、まさにそのようなイメージです。

同じ人とは思えないようなモードに変わる。それも、ジワジワではなく、ある日突然であったりすることが、この「自分ごと化」の面白いところです。

「自分ごと化」による変容を引き起こしているのは、いわゆる本人の気づきです。つまり、本人が気づかなければ人は変わらないということの裏返しでもあります。

社長や上司が、どれだけ何を言っても変わらなかった人が、何かを自ら気がついた瞬間に変わったりします。

たとえば、部下から「課長、気づきました!こういうことですね!」と意気揚々と言われたけれど、心の中で「ずっと前から同じこと言っていたよ」と思う。そんな経験をしたことがある人もたくさんいらっしゃるでしょう。

やはり上司や経営者の役割は「いかに本人が気づいてくれるかのサポートである」ということを感じざるを得ません。

自分ごと化は、単なるモチベーション向上策ではありません。個人と会社がともに成長し、社会に大きな価値を生み出すための鍵であり、欠かせないものでもあります。

会社がこの取り組みを続けることで、社員一人一人が「自分の人生を生きている」と実感しながら働ける環境が実現します。

これこそ、会社を経営する、またマネジメントする立場の人間としては最上の喜びですし、まさに「このために会社をつくったのだ」と思えるシーンの一つではないでしょうか。

 

まずは「脱・他人ごと化」を目指す

このように「自分ごと化」が起きれば、会社にとっても社員にとってもWin-Winの状態となり、両者が成長していく構図が描けます。

しかし、最初からそううまくいくとは限りません。むしろ、理想通りに進まないほうが多いのが世の常でしょう。

そこで、現実的に目指す最初のゴールをお伝えいたします。

「自分ごと」という言葉があるように、反対の言葉を使えば「他人ごと」という状態も存在します。

会社でどんな大変なことが起きようとも、完全に他人ごと。どんなにうまくいかなくても、究極、会社がどうなろうとも、自分の人生には全く影響もなければ、なんとも思わない。そんな状態では、働くことすら辛くて、しんどいものになっていくのではないでしょうか。

そう考えると、いきなり自分ごと化の最高到達地点を目指すより、最初は「脱・他人ごと化」くらいのレベルを目指して始めるほうが現実的かもしれません。最初から「自分ごと化」を目指すほうが難しいのですから。

いずれにしろ、やり方は一つではありません。

あなたの会社に、あなたの会社のメンバーに合ったやり方が必ずあります。その方法を探すこと自体も、一つの企業活動であり、そのプロセスそのものが会社にとって財産になっていくのです。

ぜひ「メンバーの自分ごと化」を支援してあげてください。

 

明確な企業理念で「脱・他人ごと化」を図る

では、どのようにして「脱・他人ごと化」を目指せばいいか。

その一例をご紹介しましょう。以前ご支援させていただいたM社という、営業のDX化を支援する会社のお話です。

M社は、マーケティングAIを活用し、地方の中小企業における営業力の向上を支援されている会社でした。こういったSaaS(Software as a Service)系サービスはすでに市場にもありましたし、そのようなサービスで加速度的に成長し、上場を見据えるといった企業はたくさん見てきました。

ただし同社は、地方の中小企業をターゲットに、単にサービスを導入するだけではなく、実装して自走できるようになるまでのコンサルティングをセットにして事業展開していました。

一見、非合理であり、効率が悪いことをやっているようにも感じたのですが、なぜそこにこだわっているのかは、代表の経歴や背景を伺っていく中でわかっていきました。

山口県のある地方、幕末の中心地で生まれ育ったこと。これまでのキャリアの中で、日本全国の中小企業に出会う機会が星の数ほどあり、同時に星の数ほどの悩みを聞いてきた背景。そんな悩める地方の中小企業を救いたいという考え。そして、この国をよくしていきたいという心からのブレない想い──。

あたかも文明開化に近いような想いを持ち、言わば「営業開化」でこの国の夜明けをつくりたいと思っている。そんな代表のメッセージを理念として、言葉をつむいでいきました。

ここまで明確な理念を語ることができていれば、そんな理念に共感した人だけが集まってきます。

さらに、この軸を前提にした判断ができる組織になっていくのは、想像に難くないのではないでしょうか。

少なくとも「東京都内にターゲットを絞ろう」「導入金額の大きい大手企業向けのサービスにカスタマイズしよう」などといった考え方は生まれにくく、やるべきことが明確になっていきます。

そうなると、既存の社員はもちろん、新入社員も最初から「地方の中小企業を元気にするのが自分のミッションだ」ということが自覚できます。

ここまで明確にしても、最初から完璧に自分ごと化するのは難しいかもしれません。ですが、少なくとも完全な他人ごと化は起こりにくいはずです。

明確な企業理念を打ち出すことで、社員の自分ごと化が促進され、組織の推進力がどんどん高まっていくのです。

プロフィール

池戸裕(いけど・ゆう)

ギフト株式会社代表取締役

2005年、中小企業に特化した採用コンサルティング会社に就職。入社時から中小企業の経営者の採用・組織の課題を聞く中で、好調な会社と不調な会社の決定的な違いの根っこは組織・売上・採用問わず、まずよい経営理念の有無であることを学ぶ。その後、経営課題を根本解決する第一歩となる理念策定・言語化のスキルを身につけるため、コピーライターの道を志す。2010年、コピーライターとして入社した株式会社パラドックスにて、理念言語化からはじめる企業ブランディングの経験を積み、2015年に独立、ギフト株式会社を設立。クライアントワークでは、理念の言語化を軸としたブランディングを通じて「意志を起点にありたい企業を描く」中小企業の経営者を主に支援。300社以上の経営者との対話を活かし、経営にみっちり伴走。売上・成約率UP、採用成功、組織における従業員エンゲージメント向上など、100年続く企業づくりをめざしたブランディング支援によって、数多くの経営改善の実績を持つ。

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