
ネガティブ思考は、ただ押しのけても消えるものではない。ネガティブ
※本稿は、チェイス・ヒル、スコット・シャープ著、山口真果訳『「考えすぎてしまう」が一瞬で消える法』(SBクリエイティブ)より、内容を一部抜粋・編集したものです。
ネガティブ思考は心配や考えすぎに似ていますが、大きな違いがあります。それは、ただネガティブであるということです。心配もありますが、頭と思考のほとんどを占めているのは、自分自身に言い聞かせるネガティブなことがらです。ネガティブ思考と心配に共通しているのは、どちらも認識することが重要だという点です。
ただ消え去るのを待ったり、押しのけたり、無視したり、それほど悪いことではないふりをしたりはできません。そんなことをすると、さらに悪化するからです。うっとうしいきょうだいのようなものです。あなたが爆発するか、相手が爆発するまで、繰り返し邪魔されます。
では、どのようにネガティブ思考に対処すればいいのでしょうか?存在を認め、注意を払いましょう。分解して、根本的な原因を突き止めます。たとえネガティブ思考を避けたとしても、それは一旦あなたのもとを去ってまた戻ってくるか、より支配的になり長期間とどまるかのどちらかです。
例を挙げると、「私は絶対にあんな人間にはならない」「私は絶対にあんなことをしない」と自分に言い聞かせていると、気づかないうちにそれが自分に返ってくる可能性があります。
特定の人物になることや特定の人物のように振る舞うことを全力で避けていたとしても、いつの間にか避けていたはずの人物そっくりになっていたり同じことをしていたりするものです。これがネガティブ思考の仕組みです。だから避けるのはやめましょう。
ネガティブ思考に対処するためのより効果的な方法は、観察することです。
もし「私は優れた人ではないし、これから先もそんな人にはなれないだろう」と考えているなら、するべきはその思考に気づくことだけです。その考えをネガティブまたはポジティブだと判断しないでください。疑問を抱いたり定義したりしないでください。ただ観察しましょう。
一旦立ち止まり、このネガティブ思考を見て、感じたら、深掘りしてください。人生において何が起きているのか、自分に何が起きているのかを考えます。「自分は優れた人間ではない」という気持ちはおそらく、しようとしていたことに失敗した、望んでいた仕事を手に入れられなかったなどの事実から生じているはずです。
理由を特定し、こう考えましょう。「望んでいた仕事を得られなかったから、自分は優れた人間ではないと考えるのは簡単だ。でも、だからといって同じ分野で別の機会がないとは限らない。私はいつでも好きなときに他の選択肢を検討できる」
観察し、一旦立ち止まって思考を特定し、根本原因を深掘りしたら、どういう気持ちになるか確認します。より建設的だと感じ、気分もよくなっているはずです。
これはアクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT)(Psychology Today、日付不明)と呼ばれます。ACTが優れているのは、思考を無視したり変えたりしないという点です。そうではなく、自分のものの見方と反応の仕方を変えます。ACTには他にも、ネガティブ思考を減らすためにできるちょっとしたプロセスがあります。
笑えるミームを見たり、面白い言い回しを検索したり、ポジティブな影響を与えてくれる人と話したりすると、注意がネガティブ思考から離れます。これは避けているということではありません。後で対処する時間ができるまで、焦点を切り替えているということです。幸せな思い出や、思わず笑顔になる物事に頭を切り替えることに専念しましょう。
知人が以前こう言っていました。「働いて給料をもらうようになったら、そのうちの10%は貯めておく
か自分のために使うかしなさい」と。これを実践し始めると、私は次第に気分がよくなるのを感じました。
請求書、家賃、食料、他の人の世話などについて頭を悩ませるのは簡単なので、自分自身のことは後回しにしてしまいがちです。自分を大切にするとは、親しい友人や家族を扱うように自分を扱うということです。ネガティブ思考が頭の中から去ろうとしないなら、大切な人がネガティブな発言をしたときにあなたがするであろう反応をしてみてください。
ネガティブ思考を抑えようとした結果、回避行動をしている可能性があります。どこからともなくネガティブ思考が生まれるとき、あるいは何らかの物事に誘発されるとき、それは侵入思考と呼ばれます。侵入思考に関連する行動変化の例を挙げます。
・ナイフを見たとき、あるいは手にしたときに暴力的な思考が生まれるため、ナイフを捨てるか、二度と触らないようにする。
・子どものそばにいると侵入思考が生まれるため、子どもと関わらないようにして、子どもに目を向ける方法に特別に気を配ったり、世話するのをやめたりすらする。
このうちのいずれかが当たっていると思うなら、止める必要があります。糧を与えれば与えるほど恐れは育ち、悪化します。最終的には家から出られなくなるほどです。
このような考え方をやめれば、思考はあなたをコントロールしているわけではなく、自然に去っていくのだと気づくことができます。思考は、あなたにあれをしろ、これをしろと強制しません。脳の邪魔をする、ごちゃまぜになった言葉や文章でしかないのです。どのような行動をとるかを決められるのはあなただけです。
『ジャーナル・オブ・クリニカル・サイコロジー』には、心配とネガティブ思考の影響に関する研究結果が掲載されています。参加者は物事を2つのカテゴリーに分類するように求められます。起きている時間の半分以上を心配しながら過ごしている人は、何かを2つのカテゴリーに分類することがより難しいとわかりました。
この研究は、情報を処理して明晰に考える能力をネガティブ思考が弱めていることを示します。つまり、問題についてネガティブに考えたところで何も解決しないばかりか、ネガティブな考え方を取り巻く不明瞭な思考パターンのせいで、いろいろなことがさらに困難になるということです。
多くの場合、私たちはネガティブな思考パターンをコントロールできません。これは、脳が私たちのものの考え方や受け止め方に基づき、時間をかけて変化するからです。
すでに紹介したとおり、扁桃体は情動反応の処理と「闘争、逃走、凍結」反応の制御において重要な役割を果たします。ですが、状況に対する反応は、過去の経験に大いに影響されます。
たとえば、渋滞にはまったときにストレスを感じ、危険な目に遭うかもしれないこと、約束に遅れること、事故に巻き込まれることについて心配する人がいるとします。この人にとって渋滞は実際の危険というよりもいら立ちの元にすぎず、たいていの場合、難なく落ち着きを取り戻すことができます。
一方、渋滞に関連する多大なストレスを体験したことがある人にとって、同じ状況はより強い反応を引き起こす恐れがあります。扁桃体は実際の脅威に直面したときと同じシグナルを身体に送るため、警戒が強まります。
こうした強い反応は、過去のネガティブな経験に影響を受けた扁桃体が、実際の脅威と偽の警告をなかなか区別できないために起こります。このように感度が高くなるのは、ストレスとネガティブな思考パターンに長期間さらされたことが原因です。
視床は感覚信号や運動信号を司ります。これらの信号を身体に送りますが、本物の危険と偽の警告を区別することはできません。扁桃体と視床は連携し、あなたが考えたり思考をコントロールしたりする方法に応じて、身体に送るストレス反応を作ったり消したりします。
偽の警告は、危険があると扁桃体が視床に告げていることを示します。視床はその後、身体にアドレナリン信号を送り、脳が知らせている危険と戦う準備か逃げる準備をするように伝えます。これはどこからともなく生じる現象で、時間を経てたくわえられたネガティブな思考パターンのみに基づいて生まれることもあります。
コルチゾールは脳のストレス要因です。気分、意欲、恐怖をコントロールします。不安、うつ、ADHD(注意欠如・多動症)、PTSDなどの気分障害によって、コルチゾール値が上昇することがあります。心の病気を抱える人は、そうでない人に比べてコルチゾール値が高くなるため、なかなか心を落ち着けることができません。こうした人の脳には他にも白質や灰白質などに異常があります。
灰白質は情報を処理する場所で、白質は脳のニューロンがこの情報を脳内の必要な場所に送るためのケーブルのような領域を指します。慢性的なストレス、コルチゾール値の上昇、ドーパミンまたはセロトニン量の低下はすべて、より多くの白質接続の生成につながります。
白質と灰白質のバランスがとれていると、海馬などの気持ちや記憶を司る脳の領域は安定します。これによって身体に偽の警告を送る視床の「トリガー」の数が少なくなります。
白質と灰白質のバランスをとるには、ポジティブ思考を練習し、ネガティブな習慣を変えることです。
いい行動をしたときに自分にごほうびをあげ、自己鍛錬の手法を作り上げることで、脳をトレーニングできます。
たとえば、ある店へひとりで歩いていくことが怖い場合、半分の距離はひとりで歩くことで自己鍛錬し、後の半分は電話をしながら歩くことにします。目標に向けた小さなステップを完了できたら、自分にごほうびをあげます。やがてひとりで家と店を行き来できるようになれば、もっと大きいごほうびをあげます。
更新:05月14日 00:05