一言で「褒める」といっても、言い方を誤れば逆効果になってしまうこともありえる。現場のリーダーは、どのような褒め方を心がけるべきなのか。解説してもらった。
※本稿は、山本渉著『できるリーダーはどこを「ほめる」のか?』(朝日新聞出版)より、内容を一部抜粋・編集したものです。
褒めるスキルを高めるには、「どのような言葉を選び、どう伝えるか」がとても重要です。
「さしすせその法則」をご存じでしょうか?「さすがです」「知らなかった」「すごい」「センスいい」「そうなんだ」といったフレーズだけで褒められるというものです。
酔っぱらったお客さん相手ならこれでいいかもしれませんが、ビジネスや真剣な関係の中では不十分です。相手の心に響き、信頼関係を深める褒め方を目指すなら、もう少し具体的で「解像度の高い」褒め方をしていきたいものです。
ここでは効果的な褒め言葉のコツと、避けるべき表現をお伝えしていきます。
褒め慣れていない人が無理して褒めようとすると、つい誇張しすぎた表現になってしまう場合があります。無理してひねり出した大げさな言葉は、相手を戸惑わせたり、不自然に聞こえたりします。また、お世辞や皮肉と捉えられてしまい、逆効果になることもあります。
×「部長の仕事っぷりがかっこよくて、日々涙してます」
(大げさすぎて信憑性が欠落する)
○「部長のアドバイスのおかげで、プロジェクトが役員会で承認されました」
(実際に感じたことがベースで、敬意や感謝が伝わる)
○の例を見て、「あれ?これって褒め言葉なの?」と思われたかもしれません。でも、これでいいんです。まずは、「ありがたい」と思ったことや、「すごい」と感心したことを素直に口にしましょう。
無理して褒めようとせず、まずは自分が「すごい」と思ったことを素直に言葉にすることから始めてみてください。「嬉しかった」「驚いた」「助かった」などをそのまま伝えるだけで、自然な承認の言葉になります。
たとえば、「この資料、データが的確だから説得力があるね」と思ったことを伝えるだけでも、相手は褒められたと認識するものです。「君はすごい!データの入れ方が天才的だ!」と無理に褒め言葉にする必要はありません。
子育てでも同じです。子どもが自発的に宿題をしていたとします。「えらい!」と直接的に褒めてもいいですが、「自分から勉強始めて、パパ(ママ)は嬉しかったよ」と伝えるほうが効果的です。
自分の感情を交えた素直な言葉のほうが、相手のモチベーションを上げる「人を動かす褒め言葉」になります。無理して褒めようとせず、感心したことを口にすることから始めてみましょう。
褒め言葉はプレゼントと同じです。自分がいいと思っているものを押しつけるのではなく、相手が嬉しいかどうかが大切です。
わたしはかつてこんな「ダメな褒め」をしてしまった経験があります。後輩がプロジェクトを完成させたときに、「この仕事いいね。僕も昔これに似たことを実施したことがあって、それが評判よくてさあ......」と褒めは一瞬で、すぐに途中から武勇伝に変わっていきました。相手は嬉しくもないし、次からも頑張ろうとも思えません。反省する限りです。他にも、相手のモチベーションを上げない褒め言葉があります。
×「君にしてはよくやったね」「少しは俺に近づいてきたね」
(努力や成果を十分に認めていない)
○「初のリーダーでプレッシャーもあったのに、結果が出て素晴らしいね」
(相手が見てほしい箇所をしっかりと押さえたうえで褒めている)
自分が主役ではなく、相手の価値を誠実に評価する言葉を選びましょう。もちろん、相手が喜べば何を言ってもいいということではありません。「客観的な評価」と「相手が心地よく感じること」の両立が大切です。
更新:04月30日 00:05