
ビジネス界で結果を出しているリーダーは、「褒め」をうまく活用している人も多いという。そしてその中には、ソニーを再建した平井一夫氏もいる。その詳細を解説してもらった。
※本稿は、山本渉著『できるリーダーはどこを「ほめる」のか?』(朝日新聞出版)より、内容を一部抜粋・編集したものです。
企業を窮地から救ったリーダーの話です。グローバル企業のトップとしてソニーを再建した平井一夫氏は、リーダーは「社員を認め褒める勇気」を持つことが大切だと語っています。ある講演で平井氏は、「あなたのアイデアのほうが、私のよりも10倍いい」と部下に伝える勇気が、組織を前に進めるのだと強調しました。
優秀なリーダーは相手を承認し、しっかり言語化して褒めます。チャレンジを促し、仲間を引っ張るその原動力として「褒め」を活用するのです。
平井氏は著書『ソニー再生』の中で、世界中の拠点を訪ね歩き、社員の声を直接聞いた経験を語っています。その際に大切にしていたのは「異見を認める」ことでした。
自分と異なる考えや価値観を否定せずに受け入れる。これこそが、多様性の時代に必要なリーダーの資質であり、「褒める」前提になるスキルです。
・否定せず、ポジティブに変換する習慣を持つこと。
・相手のよさを見つける視点を持つこと。
・相手を観察し、関係を深める力を磨くこと。
褒め言葉のレパートリーを覚えるだけではなく、物事の見方を根本的に変えるこのような力こそが、褒めることを通じて養われます。
これらのスキルは、仕事ができるリーダーの必要条件になっているのです。「褒める」と共に身につく技術なので、本書の中で随時触れていきます。
経営学の大家ピーター・ドラッカーも著書『マネジメント』の中で、ポジティブに承認する効果をこう述べています。
“人は自らを必要とし、価値ある存在と見なしてくれるところで最もよく働く"
もちろん、適当に褒め言葉をかければいいということではありません。周囲への影響力を説いた名著『人を動かす』の中で、デール・カーネギーは次のように書いています。
“人を動かすには、まずその人のよい点を見つけ、それを心から認めることである。"
これらの効果はビジネスに限ったことではありません。育児やプライベートの人間関係でも同じです。教育コンサルタントのドロシー・ロー・ノルト博士はこう唱えています。
“子どもは批判されて育つと、非難することを学ぶ。子どもは認められて育つと、自信を学ぶ"
家庭でもオフィスでも、「褒める」「承認する」は共通の土台なのです。
2024年12月、ニュースでドナルド・トランプ氏とソフトバンクの孫正義氏の共同記者発表の様子が流れていました。孫さんがアメリカで1000億ドルを投資すると記者の前で発表した際、トランプ氏はその場で「2000億ドルにしよう」と挑発的に提案しました。
イエスと答えればビジネス的に困るし、ノーと拒絶したらせっかくの共同会見に水を差してしまいます。正解がない場面で、孫さんはこのように切り返しました。
“彼は素晴らしいネゴシエーターだ"
トランプ氏は満足そうに笑い、場は収まりました。相手を褒めることで窮地を脱したのです。これは単なる機転ではなく、普段から「褒める習慣」が身についているからこそ、とっさに自然に出てきた言葉だと考えられます。
本書の目的は、この﹁褒める習慣﹂を身につけることです。一度だけ誰かを褒めて終わりではなく、物事の捉え方や視点をポジティブに変える技を習得していきましょう。
準備されたフレーズを使うだけでなく、とっさの場面でも自然と褒めが出てくる。そうなれば、あなた自身のコミュニケーション力が格段に高まり、ビジネスでもプライベートでも信頼される存在になるでしょう。
更新:04月27日 00:05