
近年、褒められることでのパフォーマンス向上効果が注目されているという。具体的にどのような事象があるのか。解説してもらった。
※本稿は、山本渉著『できるリーダーはどこを「ほめる」のか?』(朝日新聞出版)より、内容を一部抜粋・編集したものです。
ダルビッシュ有投手など、日本人選手も所属したシカゴ・カブスというメジャーリーグの球団があります。地元でとても愛されているチームですが、成績は振るわず、全球団で最も長くリーグ優勝ができていませんでした。
2016年、カブスはある儀式を導入します。それは、円陣を組んで選手同士がお互いを褒め合うというアクションでした。
選手は仲間からの承認で自信を得て、モチベーションを高めました。チームの空気は前向きに変化し、いきなり71年ぶりのリーグ優勝を果たしたのです。それだけでなく、108年ぶりにワールドシリーズも制覇。観客動員数も過去最高を記録し、まさに奇跡のような成果となりました。
もちろん、褒め合いだけがこれらの成果を生み出したわけではないのですが、チームを強くする一因になったことは間違いないでしょう。
例として野球の話を挙げましたが、ビジネスにもそのまま当てはまります。職場で褒め合う文化が育つと、組織の雰囲気はよくなります。褒められた人には自信がつき、新しいことに挑む環境が整い、結果としてイノベーションが生まれやすくなるのです。
また、モチベーション向上にも作用します。モチベーションには「外発的動機づけ」と「内発的動機づけ」の2種類があります。前者は給与や昇進など外部から与えられる要因、後者は「成長したい」「チームに貢献したい」といった内面から湧き上がる要因です。
褒めること自体は外的な刺激ですが、その承認が内発的な動機づけを呼び起こします。つまり、自ら学び、成長し、活躍しようとする姿勢につながるのです。その結果、個人のパフォーマンスだけでなく、チーム全体の力も底上げされていくのです。
かつては「厳しく叱責して鍛える」ことが効果的な指導法とされ、威圧や支配によって人を動かすマネジメントも珍しくありませんでした。しかし今、その手法は過去のものになりつつあります。
理由はハラスメント防止だけではありません。過度な叱責は心身の健康を害し、離職や対立を生み、組織の生産性を損なうなどのマイナスの副作用があまりに大きいからです。
もちろん正しい指導や改善のフィードバックは必要です。ただし、本当に人と組織を強くするのは、「追い詰める(ツメ)」よりも「褒めて伸ばす(ホメ)」なのです。
ふつうは「結果が出たから褒める」と考えますが、冒頭のカブスの事例のように、「褒めることによって結果が出る」というアプローチも知っておくと視野が広がります。
褒められた人に自信や意欲が芽生えることは多くの研究でも裏づけられていますが、実は、褒めた側にもよい効果があります。幸福学を専門とするアンソニー・ジャック氏(ケース・ウェスタン・リザーブ大学)は、「人に褒め言葉を贈ることは、ストレス耐性を高める効果がある」と研究で示しています。
マネジメントも育児もストレスがかかるものなので、ぜひ褒めることで自分自身の心を穏やかに保っていきましょう。
更新:04月25日 00:05