
資産形成YouTuber「不動産アニキ」としても活躍する、不動産投資家の小林大祐氏。グレートリセットが起こった後の社会で成り上がるため、今からできることはないのか。解説してもらった。
※本稿は、小林大祐著『2035年 増える富・消える富の見分け方 インフレ地獄を生き抜く資産戦略』(KADOKAWA)より、内容を一部抜粋・編集したものです。
※本稿は2026年3月時点の情報に基づき著者の考え方を示したものであり、個別の金融商品を推奨するものではありません。金融商品の価値は状況によって変動しますので、購入を含む投資の判断はご自身の責任で行なうようお願いいたします。
世界経済は今、大きな転換点に差し掛かっている。長いデフレが終わり、世界はインフレ局面に突入した。特にアメリカでは株式市場が堅調な値動きを見せる一方でインフレが高止まりし、国家債務は38兆ドルに達し、過去最大級に膨れ上がっている。国家債務の膨張は、金融危機の引き金になり得ることはすでに解説した通りだ。
もはやリセットは不可避の状況だ。ひとたび金融危機が起これば、ゴールド以外のあらゆる資産が暴落する。そして各国が一斉に金融緩和に舵を切ったときに、経済は回復する。これまで世界はこのサイクルを繰り返してきた。
グレートリセットをチャンスに変えるエネルギーとして最も力を持つのは、「機動力のある現金」だ。投資の神様といわれるウォーレン・バフェット率いるバークシャー・ハサウェイが50兆円近い現金を保有しているのは、まさに象徴的だ。
富裕層は、S&P500などのインデックスファンドを中心に機械的に買うという行動はほとんど取らない。極論すれば、S&P500という指数そのものに投資するのではなくその指数を構成している個々の銘柄を一社一社分解して分析し、それぞれの将来性、競争優位性、事業の持続性、そして現在の株価水準とのバランスを見極めた上で、割安性と確実性が両立している銘柄だけを個別に選別して購入する。
さらに、投資対象は個別株に限定されない。株式とは値動きの特性やリスク要因が異なる社債、あるいはインフレ耐性や有事耐性を持つコモディティとしての金などを組み合わせ、資産全体を多層的に分散させる。ここで重要なのは、単なる数量的な分散ではなく、値動きの相関が異なる資産を意図的に組み合わせる「性質の分散」を行っている点だ。
こうした設計によって、富裕層は手元資金を、株式市場の上下動だけに依存させることなく、地政学リスク、金融危機、金利変動、通貨価値の変動といった複合的なリスクをヘッジしながら運用している。つまり、短期的な値上がりを狙うのではなく、不確実性の高い環境下でも資産が毀損しない構造を先につくり、そのうえで資金を働かせていくという考え方だ。
このように、富裕層の資産運用は「指数を買って放置する」という単純な発想ではなく、分析・選別・分散・防御を前提とした高度に設計された資本配分によって成り立っている。結果として、環境が変わっても大きく崩れることなく、長期的に資産を増やし続けることが可能になるのである。
しかし、多額の現金を持っていない者にも、チャンスはある。なにしろ、世界のすべてがリセットされる可能性があるのだから、富める者とそうでない者が固定化してしまった社会でも、それが覆ることは十分にあり得る。二極化された社会がリセットされ、逆転することも可能になる。
そもそも日本は、他国に比べれば格差はさほど深刻ではなく、最も成り上がりが生まれやすい国のひとつだ。今は何も持たない者でも、逆転は十分可能だ。グレートリセットを恐れるか、その混乱に乗じて成り上がるかは、その人次第だ。
全国に空き家があふれかえっている。空き家どころか所有者すらわからない家も多く、もはや資産とは呼べない、不動産の〝負債化〟が全国で進行している。
ただし、すべての地域でそうなるわけではなく、地方であっても「生き残る地域」は存在する。それは産業が集積していて、人口が集積する地域だ。
具体的には、工業団地があって物流拠点がある、あるいは製造業が根を張っているような地域だ。これらの地域では、日本がたとえ人口減少局面にあっても住宅需要が一定以上維持され、空室率は低く、地価も安定するからだ。
産業というのは人の営みそのものであり、人とカネを呼び込む磁場だ。働く場所があり、モノが作られてそれが流れていく、そしてサービスが供給される、こうした機能が集積されている場所には、商業が集まり、人が住み、家庭が形成され、子どもが育ち、生活の需要が生まれる。当然、人が集まる、すなわち人口集積するということは、飲食や医療、教育も必要とされ、住宅の根強いニーズが生まれるのだ。
こうしたエリアの典型例が、トヨタ自動車が本社や工場を置く愛知県豊田市だ。規模の大きい製造業が根を張り、雇用の大きい職場や工場が近隣に存在し、物流の動線もある。
こうした場所では、商業も集積し、それに伴い住宅の根強いニーズがあるうえ家賃も下がりにくく、物件は回転し続けている。日本の地方の中ではこうした地域だけが、生き残るエリアになるのだ。
逆に、産業がない地域では何が起きるのか?雇用はなく、若者は都会へと出ていくため税収が減る一方だ。当然、インフラが維持できなくなる。そしてやがて、そこにある住宅や土地は「資産」ではなく、「処分不能な負債」と化すという悲惨な未来が待っているのだ。
何もないエリアはもちろんだが、観光だけに依存している地方都市や、雇用を支えていた企業が撤退してしまった地域も、資産価値の防波堤を持たないので投資してはいけない。そのエリアに腰を据えて定住する人口が一定規模に達していなければ、道路も鉄道も病院も、間違いなくいずれ維持が難しくなるからだ。
「利回り」や人口、知名度だけで楽観的な判断をするのはご法度だ。「あれ、よく見たら近くに工場も、大きな企業も駅もなかったな」というのでは遅い。もしそんなエリアに不動産を持っているなら、値段が付くうちに一刻も早く手放して、人口集積と産業基盤のある地域に資産を再配置するべきだ。
富裕層はすでに、地方に点在する不動産を、静かに、そして着実に動かし始めている。地方の不動産を売却し、都市部あるいは産業が集積する地域へと再配置しているのだ。
更新:04月26日 00:05