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集中力は「保つ」ものではない? プロが教える注意を戻し続ける技術

伴元裕(福岡ソフトバンクホークスメンタルパフォーマンスコーチ)

「集中力革命」

福岡ソフトバンクホークスのメンタルパフォーマンスコーチとして、チームの優勝・日本一に貢献した伴元裕氏。仕事や勉強を前に「集中できていない」と感じる場合、どうすればよいのか。プロの見識を解説してもらった。

※本稿は、伴元裕著『集中力革命 ブレても力を発揮するメンタルの技術』(Gakken)より一部抜粋・編集したものです。

 

「集中できていない」という気づきから始まる

たとえば、勉強しようと机に向かった瞬間、「何から手をつけるんだっけ......」と立ち止まってしまうことがあります。やることがまったくわからないわけではない。

ただ、集中を戻す先がまだ整理されていないと気づく瞬間です。このとき、落ち着かない感覚だけが先に立ち、注意の置き場所が定まらなくなり、周囲の人がとても集中しているように見えることがあります。その瞬間、頭の中でこんな言葉が浮かび始めます。

「集中できていないな」「勉強のペースが遅れているかもしれない」「ちゃんとやれているだろうか」

その言葉が出てきた瞬間、注意は今の行動から離れ、結果や評価のほうへと引き寄せられ始めています。

ここで大切なのは、この状態を「失敗のサイン」だと決めつけなくていいということです。集中できていないと感じたとしても、何かが壊れているわけでも、能力が足りていないわけでもありません。ただ、これから何に注意を向けるかを、整理し直せる地点に立っているだけです。

集中できていない瞬間を切り取ると、注意を向けられる対象はいくつも存在しています。やるべき行動もあれば、うまくやれているかどうかという問いもあります。不安や焦りといった感情もあれば、その瞬間に起きている事実もあるでしょう。私たちは、その中から無意識のうちに一つを選び、そこに注意を向けています。

今、注意がどこに向いていたのかに目を向ける――。選択肢の整理が必要な瞬間に気づくことが、すべてのスタートになります。

 

試合に臨む人の頭の中

試合に向かう時間は、いつも独特の緊張感があります。会場に入る前、アップを終えたあと、あるいは試合開始や自分の出番を待っている数分間......。まだ何も始まっていないはずなのに、頭の中ではすでに何かが動き始めている、そんな感覚です。

準備を怠ってきたわけではありません。これまで通り練習を重ねてきたし、やるべきこともやってきました。身体の動きも、感覚も決して悪くはありません。少なくとも、自分でわかるほどの不安要素があるわけではない状態です。

それでも、気づくと意識は少しずつ先へ向かっていきます。

「結果はどうなるだろうか」「うまくやれるだろうか」「失敗したらどう見られるだろうか」

こうした考えが頭の中に浮かんだ瞬間、自分の中に「評価する目」が立ち上がります。プレーする前の自分を、外側から眺め、ちゃんとできているかどうかを確認し始めてしまう、そんな、自分を外側から確認する管理者モードに入っていることに、ふと気づいてしまうのです。

そんな意識に気づいたとき、多くの場合、人は焦るものです。このままではいけない、ちゃんと整えなければならない。湧いてきた緊張や不安を、どこか間違ったものとして扱い、正しい状態に戻そうとします。あるいは、感情を否定し、消そうとし、落ち着こうとする人もいるでしょう。

しかし、そこでふと立ち止まってほしいのです。

「違う、感情は否定しなくていいんだ」と。

緊張していることも、不安を感じていることも、この場面では自然な反応なのです。それ自体が、これからのパフォーマンスを壊しているわけではありません。

ではこのとき、「今、自分で、できること」は何でしょうか。ここで求められるのは、結果を変えようとすることではありません。自分がこの場で、どんなプレーをしたいのかというパフォーマンス目標に、注意を戻すことなのです。うまくやれているかどうかではなく、少しでもその意図に近づこうとする姿勢を保てているか。その確認が、次の行動を選び直すための土台になります。

そのうえで、注意を置く先は、「今、ここで、実際に動かせるもの」になります。

たとえばゴルフであれば、うまく打てるかどうかを考える前に、アドレスに入ったときの足裏の感覚に注意を向けます。地面に体重がどう乗っているか、呼吸がどこまで下りてきているかなどを確認します。

あるいは、サッカーやバスケットボール、ラグビーであれば、自分の役割や保ちたいプレーの意図に一度立ち返り、そのうえで、ボールを受ける前の立ち位置、視線の置き方、身体の向きといった、次のプレーにつながる行動に注意を戻します。

注意が再び逸れることもあるでしょう。周囲のノイズ、人の動き、結果への期待や不安、自分のパフォーマンスへの評価......。これらは何度でも顔を出しますが、それでいいのです。できているか、できていないかが問題なのではありません。良い状態か、悪い状態かを判断する必要もありません。

注意が逸れたことに気づいたら、そのたびに「今、ここで、できる行動」に注意を戻し続ける。そのあり方を保てばいいのです。集中とは、保ち続けるものではありません。逸れたことに気づき、戻し続けるものなのです。そして、その過程そのものが、パフォーマンスを支えることになります。

プロフィール

伴元裕(ばん・もとひろ)

福岡ソフトバンクホークスメンタルパフォーマンスコーチ

株式会社OWN PEAK代表取締役。7年間の商社勤務経験を経たのち、米国オリンピックトレーニングセンターのメンタルトレーニングを学ぶため渡米。デンバー大学大学院スポーツ&パフォーマンス心理学修士課程を修了する。在学中にMLSコロラドラピッズアカデミーにてメンタルトレーナー(インターン)を経験。2017年に帰国後、OWN PEAK創業。スポーツ、ビジネス、教育現場における実力発揮のためのメンタルスキルの獲得を支援している。

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