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中小企業が大手媒体で採用できない理由 勝てる戦い方とは?

岩崎千夏(人事コンサルタント・国家資格キャリアコンサルタント)

岩崎千夏氏「人が来ない会社の採用戦略」

大企業ならいざ知らず、人手不足に頭を悩ませる中小企業は多いだろう。「地方だから」「待遇が大手に劣るから」といった理由はあれど、それを逃げ道にしてあきらめてよいのだろうか?中小企業ならではの採用の秘訣を、書籍『人が来ない会社の採用戦略 求人媒体に頼る前に考えるべきこと』より紹介する。

※本稿は、岩崎千夏著『人が来ない会社の採用戦略 求人媒体に頼る前に考えるべきこと』(インプレス NextPublishing)より内容を一部抜粋・編集したものです。

 

問題の解決から、目を背けてはならない

「地方だから人が来ない」「土日も出勤だから応募がない」長年、多くの中小企業の経営者と向き合う中で、こんな言葉をたくさん耳にしてきました。これらの言葉は、あたかもそれが避けられない運命であるかのように、安易な「逃げ道」として使われます。

たしかに人手不足は、全国的な問題です。帝国データバンク「人手不足に対する企業の動向調査(2025年7月)」によると、企業の50.8%が正社員不足という結果に。半数を超える企業が人手不足を訴えている結果となりました。

このデータを見ると、「他社も同じ状況だから仕方ない」と感じてしまうかもしれません。しかし、そうした言い訳の裏には、問題の根源から目を背けてしまいたいという本音が隠されているのではないでしょうか。言い訳している時点で、採用できるわけがありません。

仮に、青森県にある老舗の製造業のA社長の例を挙げましょう。「うちの会社には人が来ない。青森だし、土日も仕事だから仕方ないんだよ」と、A社長は会う人会う人にそうぼやいていました。

しかし、A社長の会社が募集しているのはたった1人です。そして、青森県内には就職を希望する若者が何百、何千人といます。出会えない要因は、別のところにあるのです。

私は、A社長に問いかけます。「最近、婚活の需要が高まっていますよね。A社長、御社は婚活男性だとどんな立ち位置でしょうか?」突然の問いに面食らった様子の社長に、私は続けます。「アラブの石油王のように、何もしなくても女性が寄ってくる、選び放題の立場でしょうか?」

私の問いかけに対し、「そんな訳がないだろう。もっと苦労して探している一般男性だよ」と即答しました。「その通りです。苦労して、多くの女性の中から、たった1人の伴侶を求めている状態です。ならば御社がすべきことは、魅力を伝えてアピールすること。諦めていても、結婚はできません。まずは動くしかないのです」

私がそう伝えると、A社長は唖然とした顔をしていました。「でも、婚活市場にはたくさんの女性がいるのも事実なんです。きっとあなたの魅力に気づいてくれる人だって、1人はいるはずです」

極端な例に見えるかもしれません。しかし、事実です。どれだけ婚活市場に多くの女性がいたとしても、あなたが動かなければ決して伴侶に出会うことはありません。ぼやいている時点で、負けているのです。逆に真剣に動いて自分の魅力を伝えれば、たった1人と出会える可能性があります。採用は、婚活と同じ。たった1人と出会い、マッチングすることなのです。

「給料が高いところに引き抜かれるのは仕方ない」「福利厚生が充実していないから勝てない」といった諦めの言葉も、他責思考の典型です。

最悪なのは、採用面接で応募者に「うちは給料が安いから申し訳ないね」と口にすること。一見、謙虚で正直な言葉に聞こえますが、これは絶対に言ってはいけない言葉です。その言葉を聞いた応募者は、「正直な会社」だと高く評価するでしょうか。

いいえ、「この社長は、会社が成長して待遇が良くなることを期待していないのかな」と感じます。ここでは待遇改善は見込めないと、別の企業を探します。

そもそも、この言葉はその場にはいない、現状の待遇で懸命に働いている既存社員への配慮を欠く発言でもあります。給料が安くても懸命に働いてくれている既存社員の貢献意欲を削ぐことにもつながります。

経営者自身が「給料が安くて申し訳ない」と口にすると社員はどう思うでしょうか。「どうせ会社は変わらない」という諦めが芽生えます。会社への貢献意欲を失い、給与に見合う最低限の業務しか行わない状態になりかねません。ひょんなきっかけで、すぐに退職してしまうでしょう。

まずは他責思考を打ち破ることが必要です。他責にして、愚痴をもらしていても、状況は変わりません。現状維持は、企業を廃業へと導きます。

 

「知らない」「動かない」が、企業を破滅に導く

では、どうしたらいいのか。まず必要なことは、「知る」「動く」の2つです。ただし、「知る」を自称している方の中には、「知っていると思い込んでいる」人が大いにいます。

たとえば、全企業平均の求人倍率。この数字だけを見て、採用難易度を判断していませんか。昨年は上手くいったから同じ方法で大丈夫と考えていませんか?

採用市場は常に変化しており、昨年と今年の採用も全然違います。自社を取り巻く採用環境の「真実」を詳細に知ることが不可欠です。具体的には、「自分たちを知る」「ターゲットを知る」「ライバルを知る」3つの視点が重要になります。この部分については、第2章で詳しく解説します。

「動く」についても注意が必要です。やみくもに動いたところで、採用は成功しません。知識が間違っているゆえに、動き方を間違えている企業も多く存在しています。多くの地方・中小企業が、旧態依然とした採用の常識に囚われ、自ら採用を不利にしています。特に私が強く否定したいのが、「求人媒体への過信」と「母集団形成への盲信」です。

 

大手媒体で中小企業が勝てない理由

「地方中小企業は大手サイトに求人を出すな」これは私が一貫して主張していることです。今、大手媒体に求人を掲載している時点で、中小企業にとって「最初から勝ち目のない戦い」だと認識すべきです。

大手媒体は、掲載するだけで採用できるわけではなく、有利なのは資金力のある大企業です。もしフルオプションで最上位プランを契約できるのであればまだしも、そうでなければ勝ち目がありません。大手求人媒体の利用は避けるべきです。

多くの経営者が、媒体営業の「媒体に出せば取れる」「母集団が集まる」といった甘い言葉に流されます。登録者数が何十万人いようと、中小企業にとっての採用成功を保証するものではありません。

リクルートワークス研究所の「第42回ワークス大卒求人倍率調査(2026年卒)」を見ると、従業員規模300人未満の企業の有効求人倍率は8.98倍に達する一方、5000人以上の大企業では0.34倍でした。この数字が示すのは、中小企業が大手企業と同じ土俵で戦えば、圧倒的に不利だということです。

大手媒体でいくら求人を出しても、給与や休日といった条件面で大手企業に劣る中小企業は、検索フィルターで外されてしまい、応募者が集まることはありません。スクロールの後半にいても、誰も目にしてくれないのです。

大手媒体は避けるべきですが、地域特化型や業種特化型の媒体であれば、まだ検討の余地はあります。しかし、その場合でも、採用活動の「費用対効果」と「自社の経営戦略」を明確に連動させることが不可欠です。

多くの企業が「母集団形成」という言葉を盲信し、「たくさん集めて、その中から良い人を選ぶ」という思想に囚われています。しかし、採用予定が年間1〜2名の企業に、わざわざ100人もの応募は必要ありません。

私は「多人数を集めて選考する」という考えが、現在の採用市場に合致していないと考えています。「企業が選ぶ立場である」という旧来の認識から抜け出せていません。「たった1人を確実に採用する」という哲学こそ、地方・中小企業が実践すべき採用戦略の最適解です。

大手企業のように数万名の応募から数十名、数百名の採用を行う企業が母集団形成に注力するのは理解できます。中小企業がそれを真似ても、ただコストと手間が無駄になるだけです。「特定の1人に深く訴えかける求人」の設計こそが、これからの採用戦略の要となります。

プロフィール

岩崎千夏(いわさき・ちなつ)

人事コンサルタント・国家資格キャリアコンサルタント

企業人事を経て現職。採用・育成・評価制度・組織開発を通じ、経営者と現場の双方に伴走してきた。採用課題を手法ではなく経営の問題として捉え直す支援を得意とし、耳の痛いことも含めて正面から向き合うスタンスを貫いている。

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