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なぜ買った本を読めないのか? 積読が消える「本棚ひっくり返し術」

2025年12月19日 公開

あつみゆりか

本を読む女性

MBTI診断、ストレングスファインダー、動物占い、血液型占い——世の自己分析サービスがどれだけ進化しても、結局一番、自分の本質が表れているのは「本棚」だと語るのは『1冊まるごと「完コピ」読書術』の著者、あつみゆりか氏。本棚は最も自分の潜在意識と可能性をうつす"鏡"のような存在であり、本棚を眺めることで「積読」まで解消できるという。本稿では、年末の大掃除の時期、1年に一度やるだけでスッキリするという、本棚の前で行う「ひと工夫」を紹介する。

 

本棚はあなたより、あなたを知っている

2025年のビジネス書売上ランキングを見ると、「話し方」「マネー」「仕事術」といった定番テーマに加え、『嫌われる勇気』『覚悟の磨き方』『人生は気分が10割』のような、生き方そのものを問う"在り方系"の本が人気を博した一年でした。

興味深いのは、『世界の一流は「休日」に何をしているのか』のような"休み方"の本がヒットしたこと。データを見ると、「スキル」や「テクニック」と共に、多くの人が "自分の状態を整えること" に価値を感じている、そんな時代の空気が見えてきます。

ではあなたの本棚を眺めてみてください。どうでしょう?

並んでいる背表紙は、すごく参考になった本、心を救ってくれた一冊だけでなく、人に勧められたけど刺さらなかった本、持ってたらカッコいいかなと背伸びして買ったけど読んでいない本、今の自分ではまったく理解できなかった本など。そんな自分の思考が混ざり合った、あなたの心のアーカイブであり、"思考と野望の展示棚" とも言える場所ではないですか。

そしてベストセラーのラインナップと比較すると、さらにあなた独自の思考性が浮き彫りになります。

そう、本棚を眺めるって、ひとりで自分の歴史を振り返るみたいな行為。思考、願望、挫折、自己肯定感の欠乏まで。お金を出してまで買ったものの集合体はどんな占いよりもあなたの本音を映し出してくれます。つまり、あなたの脳内よりあなたのことを覚えているのが本棚なのです。

たとえば、あなたの本棚に並んでいるのが「話し方」「交渉術」「マネー」「マーケティング」といったわかりやすいスキル系の本が多いなら、不足感が明確な人。それらは「なりたい自分」の成分表とも言うべきラインナップです。

一方で、在り方の本をたくさん買っている人もいるでしょう。「幸せとは?」「気分の整え方」「人生の意味」「心の余裕」みたいなテーマです。こういう人は、言語化できないモヤモヤ、説明しづらい閉塞感、"とりあえずこのままじゃ嫌だ" という焦燥感が静かに積み上がってきている、そんな証拠だったりします。

 

論理で動くタイプ?それとも物語で動くタイプ?

今度は、たくさん買っているジャンルの本を何冊か手にとって、パラパラめくってみてください。

データがたくさん並んでいる科学的根拠が豊富な本、構造化など思考法の本、ロジックが見事に整理されている学者タイプの本。もしも共通項としてこういう要素が多いなら、あなたは "納得しないと動けない理屈先行型" です。会議でも根拠を求めるタイプかもしれません。

一方、泥臭い苦労をした上での著者の成功談、感情が揺さぶられる感動もの、著者の熱量が感じられるもの、物語などエンタメ要素が多いものなどを好む傾向なら、あなたは "ストーリーで動く感情駆動型"。人の熱にほだされやすく、その代わり爆発力もあるけど、論理的な思考はちょっと苦手。そんな傾向があったりします。

選んできた本の傾向で性格や思考を診断することだってできるのです。

 

「著者」買いって、憧れの象徴

また内容より"著者"で本を買うという人もいるでしょう。つまりそれは、「その人みたいになりたい」という願望が本棚に表れています。

例えば、経営者の本ばっかり買ってる人、いますよね。「え?別にだからと言って経営者になりたいわけじゃありません!」そう思った方は早合点しすぎ。その理由は起業願望という単純なものだけでなく、たとえば

・環境を変える突破力に憧れている
・意思決定の強さが欲しい
・仕掛ける人になりたい

そういうもう一段抽象化した願望が、無意識にその本を買うという行為に至らしめている。「著者がカッコいいから買った」という軽い動機であっても、その集合体は立派なデータです。

1回1回の購入で小さな判断が存在していて、その蓄積を眺めると改めて自分の思考性が見えてくるはずです。たとえ、なんとなく買っただけであっても、その"なんとなく"の積み重ねが、棚の中では完全に傾向として可視化されている。大掃除や断捨離って心も整うってよく言いますが、本棚を眺めるだけでも、そうした効果があるんです。

「やっぱり私、言語化できない不安を抱えてたんだな」とか、「変わりたいってずっと思ってたんだな」とか。本棚を眺めるって、自分との対話なんです。

 

積読が消える本棚のひっくり返しワーク

「じゃあ実際は読んでいない買っただけの積読でも、この傾向は変わらないの?」

そう疑問に思った方。はい、もちろん同じです。ただし、積読しただけでは、それは願望で終わってしまう。いくら本棚を願望で埋めても、あなたの日常は一向に変わりません。

そんな積読派のあなたにやっていただきたいワークがあります。私が提案するのはたったひとつ。本棚、全部ひっくり返してください、ということ。

本を棚から全て出して、

・ジャンル別の山にして
・その山の頂点(=今の自分が最も救われた本)を置く

これをやってほしいのです。この作業は必ず途中で手が止まります。なぜなら、買った時の感情が蘇ってしまうから。写真アルバムの整理と感覚が近いかもしれません。「この本がなかったら今の私はない」と思う本もあれば、「なんでこれ買ったんだっけ?」ってなるものもある。

だからこの作業は「片づけ」ではなく「人生振り返り」なんです。

そして、ジャンル別の山のてっぺんの本。そこには共通点があります。優しい語り口が好き、強い言葉で言われた方がやる気になる、女性著者が多いな、体験談が多い本が多いな、等。あなたなりの共通項が、あなたに効く本の特徴です。

逆に山の底に沈んだ本にも意味があります。

「つまらなかった」「挫折した」「読む気が起きなかった」それは=あなたが本において拒否する特徴です。この両方をメモしておくと、本選びが一気にラクになります。

 

これで「積読」解消まちがいなし。大掃除シーズンにもピッタリ!

私は常々こう思っています。

読めないのは、選ぶ基準がないから。ふわっとした動機で買った本は日常の忙しさや娯楽に負けてしまいます。だからこそ、この本棚ワークを一度やってほしい。

自己理解が進めば、「なんとなく買った」より、もっと深い「読む動機」が生まれ、それが「積読」解消には効果てきめんなんです。

「本なんて娯楽だよ」「積読だって買う楽しさがある」と反発する人もいると思います。でもどうせ読むなら、自分の人生が読書でちょっとでも前に進んだ、そんな感覚を得たくないですか? 年末の大掃除シーズンにもピッタリ。是非「本棚ワーク」を試してみてください。

プロフィール

あつみゆりか(あつみ・ゆりか)

大人の学びプロデューサー

1976年、米国ボストン生まれ。3児の母。人の学びを科学するSoZo(ソウゾウ)(株)代表取締役/マイナビウエディング元編集長。子育てとキャリアアップの両立で悩んだ自身の経験から、起業後は社会人の学びの機会を提供する事業を手がける。ブライダル業界ではWEBマーケティング第一人者として各業界紙の連載や講演を行なうなど、指導した経営層と担当者はのべ7,000人を超える。

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