
50代になってから「会社が冷たくなった」と感じるのは、会社が変わったのではなく、自分が「会社側が中核と考える世代」から外れたから──。そう語るのは、50代のキャリアに詳しい大塚寿氏だ。前編では「第二の人生を考えるスタートラインに立つための3つの行動」を紹介した。後編の本稿では、定年までに実践しておきたい5つのアクションを解き明かす。
※本稿は前後編の後編です。『THE21』2024年10月号の掲載記事より、内容を抜粋・編集しています。

私が特に重要だと思う、定年までにしておくべき5つのアクションをご紹介しましょう。
まず1つ目は「自分の市場価値を知る」ということです。50代の場合、その市場価値はこれまでの経験によって千差万別。エージェントに登録し、自分の「需要」を知ることで、取れる行動は大きく変わります。
時には想像以上に好待遇の求人が並んでいる可能性もありますし、残念ながら「これだったら再雇用のほうがマシ」という結果に終わった場合でも、その経験をしておけば、再雇用の待遇にある程度納得して働けるようになるでしょう。
それが済んだら、2つ目として「60歳以降の人生設計を、本格的に考える」ことも当然大切です。前編で紹介した「棚卸し」の結果と自分の市場価値を照らし合わせ、どんな人生にしたいか、そのために何が必要かなど、ぜひ具体的に考えてください。
最初は「自分の人生を自分で考えるリハビリ」くらいに考えて、気楽に取り組むのが望ましいと思います。
3つ目は「人脈を洗い出しておく」ことです。50代の転職は簡単ではありません。そんな中でも、部長級や社外取締役といった地位を狙える裏道が「リファラル採用」。つまりは役員、社員の紹介を通じた採用です。
そんな濃いつながりは社外にないよ、と思われるかもしれませんが、例えば「10年以上前にお世話になった取引先の管理職」や「顔見知り程度の後輩」といったゆるめのつながりからでも、こうした採用に至っている例が多くあります。中には、同業他社の知り合いの紹介で、職種は変えずにライバル会社に移ったという方も。
なお、ここで洗い出すべきは皆さんが定年前後に頼るべき人脈ですから、注目すべきは「歳下」です。過去の名刺を整理しつつ、こうしたつながりをリストアップしておきましょう。
昨今は年賀状を出す人が減っていますが、それを逆手にとってあえて年賀状を復活させるのもお勧めです。思わぬ人脈が息を吹き返すかもしれませんよ。
4つ目は「何かをゼロから始めてみる」ことです。ただし、例えば「毎朝のジョギングを始めてみました」程度ではダメ。「用具をそろえて、釣りを始めてみる」とか「プログラミングに挑戦する」といったように、少し覚悟が必要な大きめの挑戦をしてください。
なぜなら、予測のつかないことをして、日々新しい学びに触れることは、心身の充実にとってとても大切なことだから。実は私も、最近「狩猟」の免許に挑戦し始めました。猟銃の所持許可申請から煩雑なのですが、初めてのことばかりでワクワクが止まりません。猟友会の方々にしても、これまであまり交流できなかったような経歴の方が多く、世界がどんどん広がっているように思えるんです。
そして5つ目は「定年デビュー」を目指すこと。これは、会社人間として自分に刷り込んできたものをゼロセットし、新しい自分になる練習をすること、とも言えるかもしれません。
とにかく「現在の職場にいる自分」ではない自分のアピールポイントを、今のうちに模索することが重要です。オリジナルの肩書きを入れた新しい名刺を自作したりするのもアリ。家では「僕」と言いながら、学校では「俺」と言っていた子ども時代のように、会社の自分とは別の自分を生み出しましょう。
会社を辞めてなお「俺がいた○○社では今~」とか「俺の母校の○○大学では~」なんて話しかできないのでは最悪です。
最後に、今のうちに「やめるべきこと」についても2つお伝えしたいと思います。
まず1つは、いつまで経っても成果の出ない挑戦は、スパッと諦めてしまうことです。特に多いのが英会話。もう何年もオンラインで学んでいるけど、そこまで上達していない......そんな話をよく聞きます。厳しい話ですが、本当に必要なら1〜3年程度でなんとかなるものです。
それに、現役の頃ならともかく、50代から新たに英語を覚える必要はさほどないように思います。このように「なんとなく」惰性で続けているものは、バッサリやめてしまいましょう。
そしてもう1つ「周囲の目を気にすること」も、少しずつやめてしまってOKです。
50代の方々の場合、知らず知らずのうちに「会社中心の考え方」が当たり前になっているもの。しかし50代からは、無心に会社に尽くすのではなく、次のキャリアにつながるような会社員人生の終わらせ方を重視してほしいのです。
例えば「予算・目標の達成」を至上命題のように扱うのをやめるなど、会社の利益や会社からの評価に右往左往しない姿勢を身につけていっていただけたらと思います。

【大塚寿(おおつか・ひさし)】
(有)エマメイコーポレーション代表取締役。1962年、群馬県生まれ。(株)リクルートを経てMBA留学後、企業研修を展開するエマメイコーポレーションを創業。シリーズ28万部のベストセラー『40代を後悔しない50のリスト』(ダイヤモンド社)、『50歳からは、「これ」しかやらない』(PHP研究所)など、30冊以上の著書がある。
更新:09月23日 00:05