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収入が多い50代ほど要注意! 老後に向けて作りたい「お金が出ていかない仕組み」

2025年08月27日 公開

高山一恵(ファイナンシャルプランナー)

悔いのない老後のために

「理想の老後」は人それぞれだが、どんな老後を目指すにせよ、定年前後には「お金との向き合い方」を一度見つめ直しておく必要がある。そこで、現役のFPとして、数多くのミドル世代のライフプランニングも行なっている高山氏に、その具体的な方法を聞いた。(取材・構成:林加愛)

※本稿は、『THE21』2024年9月号より、内容を一部抜粋・再編集したものです。

 

老後のイメージは「5年刻み」で考える

5年刻みで考える

定年退職は、お金の一大転換点です。現役時代の終わりを意識するようになったら、「お金との向き合い方」も変えていく必要があります。

現役を退けば言うまでもなく、収入はコンパクトになります。反面、子どもが独立したり住宅ローンの返済を終えたりと支出も減少。食費や被服費も現役時時代に比べるとかからなくなり、全般に出入りは小さくなります。

ただし、老後だからこそかかる費用もあります。医療費や介護費の他、住まい関連ではリフォームや住み替えを検討する方もいるでしょう。将来施設に入ることを考えているなら、そのための資金も必要です。

また、収入増のために「いつまで働くか」も考える必要あり。それに応じて年金の受け取り方も変わってきます。さらには退職金をどう受け取り、どう使うかも考えなくてはなりません。

このように、老後のお金には多様な要素が絡み合うため、「何から考えれば良いかわからない」という方も多く、私のもとへも、そうした相談者がしょっちゅういらっしゃいます。

そんな方々にまずお聞きするのは、「そもそも、どのような老後を送りたいですか?」ということです。基本の衣食住が満たされていればOKか、旅行や趣味も楽しめるゆとりある生活がしたいのか。それに応じて必要な資金や、すべき準備を考えていくのが基本です。

「イメージが全然湧かない」という方は、「5年刻み」で考えるのがコツです。50~55歳、55歳~60歳......と、およそ90歳ごろまでの5年間ごとに、どんな生活を送っていたいかを書き出してみると良いでしょう。

短いスパンに分けるとイメージが描きやすく、「いつまでにやりたいか・できるか」を意識することもできます。自分に残された時間、体力、そして「お金」を考えるうえでの、良い入口となります。

 

「出ていくお金」をセーブするコツ

出費グセから抜け出す

イメージが大まかにつかめたら、現時点でのお金の使い方を確認しましょう。ここを把握していない方は意外に多く、定年後に思わぬ家計圧迫につながることがあります。

特に要注意なのが、今の収入が「多い人」です。現役時代の収入が高かった方ほど支出も多く、定年後になっても、そのクセが抜けにくいからです。取り崩しのペースが速すぎて危険水域に入り、焦って相談に来る方もいます。

逆に、収入がさほど多くない方はある意味「節約慣れ」しているため、定年後の意識の切り替えもスムーズな印象を受けます。

出費グセが抜けない方は、本人の努力よりも「お金が出ていかない仕組み」を作るのが有効です。その仕組みとは、お金を3つの口座に分けることです。

1つ目は生活費のための口座。月々の生活費×6=半年分ほどのお金を入れておくと良いでしょう。
2つ目は、リフォーム費用や医療費など、使い道のハッキリしている、まとまったお金を入れておく口座です。こちらも定期預金や個人向け国債など、安全性の高い方法で確保しましょう。
そして残りは3つ目、投資信託などの運用口座です。

このように、「使っていいお金」「使ってはいけないお金」を明確化しておくと安心ですし、使える範囲内でやりくりする意識も備わってきます。

そのうえで、「何にどれくらいお金を使っているか」を分析しましょう。家計簿をつけていない場合は、直近1カ月の買い物のレシートを「固定費」「変動費」「その他」の3つに分類するだけでOK。すると、削減すべきポイントがわかりやすくなります。ただしその際、変動費ばかりに目が向かないように注意しましょう。昨今は物価が上がっているため、食費や日用品を少々節約したところで、さほど効果は出ないからです。

狙い目は固定費です。例えば電気代なら、アンペア数を下げれば大幅に費用が下がります。通信費も、スマホの料金プランを替える・格安スマホに替えるなどの工夫ができます。

民間保険料の見直しも有効です。例えば、子どもが学齢を終えて独立した後ならば、死亡保障の必要性は低くなってきます。

一方、がん保険などの医療保険は性急に解約しないこと。厚生労働省の推計によると、日本人の生涯医療費(一生のうちに使う医療費)のうち、70歳以降の医療費が約半分を占めています。年を重ねるほど増える病気のリスクには、きちんと備えておきましょう。

 

いつまで働き、どう年金を受け取るか

次は、収入との向き合い方について考えましょう。近年は現役を退いた後も働く方が多数派ですが、「いつまで、どう働くか」は人によって違ってきます。

退職時点での資金と、前述の「どんな老後を送りたいか」を比較すると、必要な収入がわかります。それに応じて、厚生年金加入者としてしっかり働くか、パートやアルバイトで働くかを検討しましょう。

起業という選択肢もあります。実は、現役時代のスキルや人脈を活かして個人で開業する「シニア起業」が年々増加しているのです。働きながら取得した税理士資格を活かし、定年後に開業された相談者もいます。50代のうちから準備を始めておくと、よりスムーズで、成功率も高まります。

働き方とセットで考えたいのが、年金の受け取り方です。基本は65歳で受給が始まりますが、働く時期を長くするなら、開始時期を繰り下げると良いでしょう。65歳の誕生月から1カ月繰り下げるごとに、増額率は0.7%ずつ増えます。70歳まで繰り下げれば42%、75歳なら84%の増額となります。

とはいえ、やみくもな繰り下げには要注意。無理をして働き続けると健康を損なう恐れもありますし、75歳からの受給は、12年後まで「元」を取れません。87歳より前に寿命が来ると総額ベースでは損となるのです。また、受給額が多くなると、その分、税金や社会保険料も多く引かれる(およそ10~15%の天引き)ことも意識しておきましょう。

一方、自営業の方からよく聞くのが、「国民年金のみでは心許ない」という声です。その場合、今のうちに月々の保険料に400円プラスして払うと、「付加年金」を上乗せで受給できます。

例えば、向こう10年間、400×120カ月=計4万8000円の付加保険料を払った場合、200円×納付月数分=2万4000円が毎年入ります。額は小さくとも、2年で元がとれるという意味では、とてもお得です。ただし、厚生年金の被保険者は加入できないなど、条件もあるので注意は必要です。

厚生年金と同レベルの年金収入を目指すなら、国民年金基金に入るという方法もあります。掛金は満額で月々6万8000円までかけられ、全額が社会保険料控除の対象となるため、所得税や住民税が軽減されます。付加年金との併用はできないものの、iDeCoとの併用は可能です。

 

退職金は「いっぺんに」もらうと危険!?

退職金の受け取り方

退職金を年金形式で分けて受け取るか、「退職一時金」として一気に受け取るか、はたまた併用するか、皆さん悩まれるところです。

退職一時金は、退職所得控除が受けられるため、節税メリットは大。ただしこの制度は現在見直しを検討されているため、皆さんの退職時にも当てはまるかどうかは不透明です。

デメリットは、気が大きくなって使いすぎる危険があることです。特に危ういのが、全額を投資につぎ込むこと。「将来的に必ず要る」とわかっている額は、現金として持つことが必須です。それらは先ほどお話しした「2つ目の口座」で確保し、残りを運用口座に入れるのが良い方法です。

退職金の使い道として住宅ローンを一括返済する方もいますが、これは以前はあまりお勧めしていませんでした。住宅ローンの金利が変動も固定も低く、利息圧縮効果がわずかにとどまっていたからです。

しかし、現在は変動金利0.7%程度、固定金利1.9%程度になっています。今後も徐々に金利が上がっていくようであれば、繰り上げ返済を検討しても良いかもしれません。

また、住宅リフォームも検討の価値あり。体力の衰えに合わせて住みやすい家にすることは、とても有意義です。耐震・バリアフリー・省エネなど、リフォームの目的によっては「投資型減税」という制度を使って、10%の控除を受けることもできます。

 

今後は、70歳まで資産形成できる

運用については、定年退職後も続けるのがベターです。新NISAも大いに活用しましょう。ただし、現役時代よりリスクを下げることも大切。インデックスファンドなど、手堅い商品を使った長期投資を主軸にすると良いでしょう。

余裕のある方なら、まとまったお金で「キャッシュフロー資産」をつくるのもお勧めです。

例えば、投資信託の中で最近人気を集めている「高配当株ファンド」。これは業績良好で高配当な企業の株を集めたファンドで、年に4回の配当金が出ます。利回りはおよそ4%、新NISAを使えば配当金も非課税です。1000万円投資すると年間40万円が入ってくるのはかなりお得。その40万円で、家族と旅行に行ったり、季節ごとに美味しいものを食べたりと、様々な楽しみ方ができるでしょう。

資産形成をいつまでするか=「いつから取り崩しを始めるか」は、70歳が一つのポイントだと思います。多くの方が70歳まで働くという意味でもそうですし、世の中の様々な制度も、実質「70歳定年」の方向に動きつつあります。

例えば厚生労働省は、財形住宅貯蓄の加入年齢の上限を現在の55歳から、一気に70歳に引き上げることを検討しています。iDeCoの加入年齢の上限はすでに引き上げられ、一定の要件を満たせば70歳まで加入できることになりました。また「高年齢者雇用安定法」という法律でも、「企業は本人が希望すれば再雇用する義務あり」とする年限が、65歳から70歳に引き上げられる可能性が濃厚です。

70歳までは「働く」「投資する」などの方法で資産形成を行ない、それ以降は徐々に取り崩しに入っていくスタイルが、これからは主流になっていくでしょう。

 

【高山一恵(たかやま・かずえ】
ファイナンシャル・プランナー(CFP)/Money&You取締役
中央大学商学部客員講師。一般社団法人不動産投資コンサルティング協会理事。慶應義塾大学文学部卒業。2005年に女性向けFPオフィス、(株)エフピーウーマンを創業、10年間取締役を務め退任。その後現職へ。NHK「日曜討論」「クローズアップ現代」などテレビ・ラジオ出演多数。ニュースメディア「Mocha(モカ)」、YouTube「Money&YouTV」、Podcast「マネラジ。」、Voicy「1日5分でお金持ちラジオ」運営。『はじめての新NISA&iDeCo』(成美堂出版)など書籍100冊、累計190万部超。1級FP技能士。住宅ローンアドバイザー。

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