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携帯電話のキャンペーンで「ツナカレー」を配布? ダジャレをテコに発想を変える

野呂エイシロウ(放送作家・戦略的PRコンサルタント)

ダジャレをテコに発想を変える

ちょっとだけ、「目のつけどころ」を変えることで、今までの悩みが意外に簡単に解決することは、よくあることです。

最近、ビジネスシーンで「商品やサービスが売れない」「時代の変化についていけなくなった」という声を聴くことがありますが、そうした場合でも「目のつけどころ」を少し変えれば、どこかに突破口があるのではないでしょうか。

本稿では、放送作家で戦略的PRコンサルタントの野呂エイシロウさんに、「連想ゲーム視点」について解説して頂きます。

※本稿は、野呂エイシロウ著『道ばたの石ころ どうやって売るか? 頭のいい人がやっている「視点を変える」思考法』(アスコム)より、内容を一部抜粋・編集したものです。

 

連想ゲーム視点

私がある婚活サイトと一緒に仕事をしている時に、ある有名なトンカツ屋さんのカツサンドが流行っていたので、その商品にQRコードをつけて「婚活サンド」を売らせてくださいと頼んだことがあります。

その後、トンカツ屋さんのほうから「発想が面白い」と言ってもらえて、その後も仲良くなり、いろいろ相談したりされたりの間柄になりました。

「なんだ、ダジャレじゃないか」と思うかもしれませんが、ダジャレだって、立派な視点のずらし方です。同じ発音で意味が異なるものは、世の中に数多くあります。

「ふとんが吹っ飛んだ」とか「イクラはいくら?」みたいな、一見くだらないダジャレのように見えますが、「ふとん」と「吹っ飛ぶ」というまったく意味の違うものが、発音が同じということでつながります。

こうした、言葉の発音や意味を少しだけ「ずらす」のも、視点を変えるうえで有効で、なおかつスタンダードな方法です。ひょっとすると、私が会議で一番使っている方法かもしれません。ここでは「連想ゲーム視点」と呼びます。

「こんなダジャレがビジネスの役に立つの?」と思われるかもしれませんが、「言葉」の強度を上げることは営業にも有効です。

例えば、高齢者向けの商品をクライアントにプレゼンする時に「『老いるショック』に負けない商品です」なんてプレゼンしてみてはどうですか。論理だけ、データだけで説明するよりも印象に残りそうです。ちなみに、「老いるショック」という言葉は、みうらじゅんさんが作った造語です。さすがですね。

連想ゲーム視点で生まれた人気商品の1つに、鳥取県で育てられた鯖「お嬢サバ」があります。

鯖は一般的に、寄生虫がつきやすく火を通さないと食べられないといわれていますが、完全養殖の稚魚を、ろ過された地下海水で育てることで、寄生虫がつかない鯖に育つそうです。

当然、手間をかけて育てられるため、箱入り娘になぞらえて「お嬢サバ」というネーミングが生まれました。「さま」と「サバ」の1文字違い、そこに「お嬢」がつくことで、グッとブランド価値が上がります。

こうしてみると、やはり言葉遊びというのは、楽しく、印象に残りやすいものです。
集客にもブランディングにも上手く活用したいものです。

こうしたシャレは雰囲気を明るくすることができます。

会議で意見がなかなか出ずにどんよりした空気に包まれることってありますよね。そんな時は勇気を持ってダジャレでも言ってみると、意外やウケることがあります。

その昔、織田信長が桶狭間の戦いで奇襲をかける直前、織田軍に重い雰囲気が漂いました。その時に信長は、加藤という武士を呼びつけ「加藤、この戦に勝とう」と言ったという話があります。あの信長がダジャレを言って、逆に士気を高めようとしていたんですね。

このように、重苦しい空気を打破したい時には有効です。でも、会議が活性化していて盛り上がっている時にダジャレを言うのはNG。ウケたとしても話が別の方向にいってしまうことがあるので、使うタイミングが大事です。

さらに、単純なダジャレからもう一歩踏み込んで、すでにある言葉に少しだけ何かをつけ足してみる、という方法があります。

ここで、1つ問題を出しましょう。

【問題】 東京にある大手百貨店の「伊勢丹」。連想ゲーム法を使って、新しいビジネスを提案してみてください。

「『いせたん』という言葉のなかに、同音異義語が見つからないから無理ですよ」

そう思うかもしれませんが、簡単にあきらめないでくださいね。

たしかに、見つけづらいですが、もうひと工夫で何とかなりそうです。

ちなみに、私だったら「伊勢丹」という名前の下に「塩」をくっつけます。すると「伊勢タン塩」になります。そして「伊勢タン塩やりませんか」と提案しますね。牛肉を売るデパートの催事になりそうです。

「伊勢丹」という言葉のなかだけで探すと限界があるのですが、何文字か加えるだけで、使える範囲がかなり広がります。

これは、「伊勢丹」という言葉と、デパ地下に売られていそうな食品との共通点を抽象化した答え、ということもいえますが、思いつきとしてはダジャレです(笑)。

しかし、こうして言葉を数珠つなぎしていけば、自然と発想が鍛えられると思います。

 

言葉以外の要素で連想を広げられる

さらに、もうひと押し広げるならどうでしょうか。

まったく同じ発音ではなく、似た発音のものも守備範囲に入れてみます。

以前、ダジャレをきっかけにして、私が提案をした携帯電話会社のキャンペーン企画があります。

今から10年ちょっと前になりますが、携帯電話各社がネット環境のつながりやすさを競う状況がありました。そこで、某携帯電話会社で「つながりやすさ」をアピールする方法を10人以上で話し合う会議がありました。

私は昔からカレー屋をやりたくて、この企画でカレーができないかなと考えていました。「『つながれ』になぞらえて、ツナのカレーを配ったらくだらないかな」と考えて提案したんです。その時は「ツナガレーってただのダジャレじゃん」と言われたのですが、後日また会議に呼ばれて行ってみると、そこにはパッケージの見本がいくつも置いてあったんです。

そうしたら「食べ物を配ったことがなかったから、どうなるか試してみたい」ということで、会議に参加していた人たちとアイデアを出し合いながら企画を進ませることになったのです。ただ、ツナ味がなく結局ポークカレーになってしまいましたが、「つなガレー」というダジャレを活かしたカレーを関連ショップで限定配布するキャンペーンを実施して話題となりました。

ダジャレだけが連想ゲーム視点ではありません。

最近、進めているプロジェクトに「一貨店」を作ろう、というものがあります。百貨店はすでにありますが、そもそも百も商品があるのは多いんじゃないか、という発想です。

これも「百貨店」の百という数字に着目して、そこから連想して視点を変えるとどうなるかと考えた結果生まれたものです。

1つしか商品がないというのは、普通はあり得ないことでしょうけど、だからこそ1つしかない商品をどうディスプレイするのかなど、考えがいがありますね。振り切ったからこそ光る企画になったと思います。

 

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