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土壇場でちゃぶ台返しを食らわないために 忙しい管理職がすべき5つの見直し

2025年05月27日 公開

高城幸司([株]セレブレイン代表取締役社長)

管理職

多忙を極める管理職。だがその忙しさのいくらかは、本人のちょっとした工夫で改善できるかもしれない。社内の人間関係、時間の使い方など、わずかな"調整"の積み重ねが、管理職を助けてくれるだろう。トップセールス、そしてコンサルタントとして数多の企業を見てきた高城幸司氏に、そのポイントを聞いた。(取材・構成 石澤寧)

※本稿は、『THE21』2024年6月号の掲載記事より、内容を抜粋・編集したものです。

 

見直しポイント 1 メンバーとの信頼関係

管理職の仕事の中でどこに時間がかかるかというと、まず思い浮かぶのは「会議での合意形成」です。かつての仕事の進め方は、リーダーが方針を決めてメンバーがそれに従う、というスタイルが主流でした。

しかし現在は、みんなの意見を聞いたうえで、それを一つの方針に取りまとめて進めるやり方が中心です。当然、時間と手間がかかりますから、それが負担になっている方も多いでしょう。

コンセンサスを得る手続き自体は外せませんが、その際のスピードと質を左右するのは、実はメンバーとの信頼関係です。みんながリーダーについて、「あの人が言うならそうしよう」と思っている組織とそうでない組織では、合意形成にかかる時間に差が出てきます。

あなたの部門ではどうでしょうか? 大丈夫と胸を張れるのでなければ、メンバーとの関わり方を見直す必要があるかもしれません。

ただ、メンバーとの信頼関係といっても、あくまで仕事に関係しての話です。プライベートについて理解を深め合ってはいけないわけではありませんが、そこまでやるのはきりがありませんし、仕事という本題からズレてしまう危険性もあります。

職場において、あなたは管理職という役割を任されたアクターだと考えてみましょう。時間が限られた舞台で、その役をいかに演じ切るか。そのために、他の演者であるメンバーとどう関わるべきか。自分を役割という角度から客観視してみれば、今までと違ったメンバーとの関わり方が見えてくるはずです。

 

見直しポイント 2 メンバーの価値観の理解

メンバーとの信頼関係の構築について、もう少し具体的にお伝えしましょう。信頼関係を築くというのは、「相手の価値観を理解すること」がスタートです。

例えば、メンバーからコンセンサスを得る際、「合理性重視で、不合理な部分があると納得しない相手」と、「ビジョン重視で、夢のある話なら多少無理があっても乗ってくる相手」とでは、訴求点は当然異なります。

また、メンバーに何か仕事を頼む場合でも、「その仕事で得られるスキルを説明すると響く人」もいれば、「一緒に働く人との人脈に興味がある人」もいます。「出張手当が付く、といった現金な部分が意思決定ポイントになる人」だっているでしょう。人によって、大切にしているポイントは大きく違うわけです。

各メンバーが何を大切にしていて、その逆に何を嫌っているのか、管理職であるあなたはしっかり把握できているでしょうか? コンセンサスを得るのに時間がかかると感じている人は、相手の価値観に沿った関わり方を心がければ、きっと格段にスムーズにいくと思います。

その際大切なのは、相手のため、という視点を忘れないことです。その意識が、各メンバーに役立ちそうな情報や仕事をキャッチするアンテナを立てることになり、メンバーとの信頼につながる会話や指示の仕方につながっていくはずです。

 

見直しポイント 3 抵抗勢力への対策

仕事が滞りがちな管理職によくあるパターンとしては、「抵抗勢力に対する対策」が不十分という点も挙げられます。

自部門内で合意形成ができて、それを元にした提案をさらに上の会議に諮るといった際に、提案をまとめるのに一生懸命でも、それに対する反対意見やそれへの対応策が準備できていない人も、意外に多いと思います。

反対意見や修正を促す意見が出れば、持ち帰って再度検討することになり、あなたの限られた時間はさらに削られてしまいます。ですから、会議に諮る際は、そこで完結させる意識で臨まなくてはなりません。その覚悟と準備が必要です。

可能なら、その案件に関わるステークホルダーに相談という名目で根回しを行なうべきです。それが難しい場合は、各関係者の顔を思い浮かべながら、どんな反対意見が出そうか、それに対する対策はどうするかを考えておく。

その際に大事なのは、先ほどメンバーとの合意形成のところでもお話しした「価値観」です。当然ですが、各ステークホルダーにも立場や経験をベースにしたそれぞれの価値観がありますから、それに沿った提案でなければ、「うん」とは言ってもらえない可能性が高いです。

少々古い例になりますが、プロ野球の名監督として知られた星野仙一さんと野村克也さんでは、采配の傾向がまったく違いました。「闘将」と呼ばれた星野さんが、ミスがあってもチャレンジを評価する傾向があったのに対して、「ID野球」で知られた野村さんは、勢いだけでは評価せず、データや根拠に基づくプレーを選手に求めました。

評価する人によってそれくらいの違いがあるのですから、相手の価値観を見極めて、その人が納得できる形の提案にしなくてはなりません。

そのうえで、「落としどころを考えておく」というのも大切です。事前に「ここまでは譲歩できる」というラインを決めておけば、会議の場でそのラインを守る形で交渉が進められ、持ち越しになる確率を減らせます。

また、落としどころが見えていれば、話を有利に進める作戦も立てられます。

例えば、ある事業で最低でも2億円の売上を達成したいという場合、目標をそのまま「2億円」とすると、関連部門の抵抗にあって、どう積み上げても1億6000万円の見込みしか立たなくなった、といったことがあるかもしれません。

そういう場合、売上目標をあえて「2億4000万円」に上げておけば、関連部門の抵抗があったとしても、見込みは「2億円」に落ち着くといったこともあり得ます。

提案をスムーズに通して、時間と気持ちに余裕をもって質の高い仕事をするためには、時にはこうしたテクニックも必要だと思います。

 

見直しポイント 4 効率化すべきか否かの区別

時間に追われていると、すべての仕事を効率化、短縮化したくなりますが、それはあまりいいやり方とは言えません。仕事の中には、効率化すべきものと、その逆に時間をじっくりかけたほうがいいものがあります。

まず交通費の精算などといった事務作業は、正確なのは当然として、早ければ早いほどいいわけですから、とにかく効率化すべきでしょう。人はこういう事務作業に達成感を覚えてしまう傾向がありますが、あまり余韻に浸りすぎないよう注意が必要です。

また、メンバーの意見を聞いたあと、リーダーが「決める」という意思決定をする際も、それほど時間をかける必要はありません。もし決められないとしたら、その前段階の情報収集や合意形成が不十分なのが原因です。

逆に時間をかけるべきなのは、関係者に意見を聞いたり、メンバーとアイデアを出し合ったりするといった、インプットや新しいものを生み出すための行動です。"膨らます仕事"と言ってもいいですが、付加価値を生むための行為にはなるべく時間をかける必要があります。

先に説明した「メンバーとの合意形成」や「抵抗勢力への対策」もこれに該当します。ここの部分で手を抜いてしまうと、後になって、メンバーが「実は、あのときは言えなかったんですが」と異論をはさんできたり、ステークホルダーから「そもそもこの企画は...」と致命傷になるようなちゃぶ台返しを食らったりすることになりかねません。経験のある人もいるのではないでしょうか。

こういった考え方は、時間をお金に置き換えるとわかりやすいかもしれません。コストを削れるだけ削って最低限の費用で生活しようとするのと、生活の質の向上や心を豊かにするものにちゃんとお金をかける暮らしをするのとでは、意欲や発想に大きな差が出てくるでしょう。

「安物買いの銭失い」という言葉がありますが、時間を節約しすぎて、仕事の目的を見失うことのないようにしたいものです。

 

見直しポイント 5 若者に対する接し方

ベテラン管理職の方の中には、今さら自分のやり方を変えるのは抵抗がある、という人もいるかもしれません。しかし、変化が続くビジネス環境では、旧来のやり方に固執する管理職は会社にとってお荷物になります。

加えて、近年の人手不足で、特に若手の人材が会社にとって貴重な存在になっていますから、彼ら彼女らにノーと言われれば、管理職のほうが居場所を失うことになるでしょう。

昔は情報を得る手段が限られていましたから、経験を重ねたベテランほど知識と知恵が豊富でした。しかし現在は、若者のほうが圧倒的な情報収集能力を持っており、ベテランの優位性はありません。若者たちもそれはわかっていますから、年齢や役職が上だというだけで尊敬してくれることはないのです。改めてその現実を受け止める必要があります。

ではどうしたらいいのか。フラットな立場で勝負したら勝てないのなら、若者の力を「利用する」と考えてみればどうでしょう? 「すまないけれど、ここの部分がわからないから教えてくれる?」と素直に聞いて、「こんなこともできるなんて、君はすごいね!」と称賛すれば、若者たちも悪い気はしません。

若い社員たちからすれば、ちょっと隙がある管理職のほうがかえって親しみやすいものです。「○○さん、ここができてないですよ」「ここはこうしたほうがいいんじゃないですか」と若い部下のほうから言ってくれるなら、信頼関係ができているといえるでしょう。あなたの部下はどうでしょうか?

最小の時間で最大の成果を求められる現在の管理職は、かつてない難題に取り組んでいると言っていいと思います。従来にない課題ですから、過去に答えはありません。

自分たちこそが次の世代のロールモデルになるのだという気概で取り組むことが、道を切り拓くスタートになると思います。

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