THE21 » キャリア » 活かされない人材はいない...パソナマスターズ社長が語る「要となる管理職の役割」

活かされない人材はいない...パソナマスターズ社長が語る「要となる管理職の役割」

2025年03月27日 公開

中田光佐子([株]パソナマスターズ代表取締役社長)

(株)パソナマスターズは、総合人材サービス大手のパソナグループの一社として、中高年・シニア人材の能力開発と活躍機会の創出を支援する会社だ。人生100年時代に注目されているこの会社を率いるのが中田光佐子氏。「かつてはリーダーになんてなれないと思っていた」と語る中田氏は、なぜ経営トップとなったのか。リーダーとしての自己成長論を伺った。(取材・構成:石澤寧、撮影:まるやゆういち)

※本稿は、『THE21』2025年3月号[私の体験的リーダー論]より、内容を一部抜粋・再編集したものです。

 

「自分が応える」決意がリーダーの基礎力に

――中田さんの最初のリーダー経験とはどんなものでしたか?

【中田】20代後半に、営業支援担当の内勤メンバーを束ねる役割が最初でした。営業職のスケジュール調整や派遣スタッフの方々に仕事を依頼したあとのセットアップなど、部門全体の支援業務を行なうチームのチーフです。人数は6人程度でした。

――当時はどんなことを心がけていましたか?

【中田】それまで私は外勤の営業職だったのですが、当時の役員から言われたんです。「この仕事は、チームのメンバーや営業マンから、1日に何回質問や相談を持ち掛けられるかが大切。その数が、あなたがチーフの役割を果たしているかどうかの指標になるから」。それで、「そうか、声を掛けられるのがチーフの仕事なのか」と。

私は素直なので、その日から声を掛けられたくて仕方なくて(笑)。「何かない?」と自分から動き回って、相談や頼まれた仕事には、絶対にノーと言わないと決めて取り組みました。

――リーダーになりたての頃から強い気持ちがあったんですね。

【中田】私がリーダーになったのは、決して早いほうではなかったんです。同期でも早い人なら入社3年目くらいでなるところを、私は6年目くらいでした。でも、それがかえって良かった。それだけ自分自身の体験からメンバーの気持ちを理解できるようになりましたから。だから、自分がリーダーとしてできることは精一杯やろうと心に決めていました。

とはいえ、内勤の仕事は初めてですから、相談されたり頼まれたりしても、知らないこと、できないことがたくさんあります。そこで今度は私が人に聞いたり相談に行ったりするわけです。

すると、この件ならこの部署に聞けばいい、こういう問題なら○○さんに相談するといい、というのがわかってくる。自分一人でわかること、できることも増えてきます。そのうち別の部門からも相談がくるようになりました。 

人からの頼まれごとや相談でも、自分がボールを持って応えると決めたことで、自分の知識が増えて、社内人脈もできて、人から頼られるようにもなった。リーダーとしての基礎力を鍛えることができたのが、このときの経験だったと思います。

 

「自分の中のプロ」のアラートに従う

中田氏のリーダー術

――担当する組織が大きくなるにつれて、直接目が届かないメンバーも増えてくると思います。どんな工夫をなさっていましたか?

【中田】コミュニケーションがないと仕事は絶対にうまくいきませんから、直接話す機会をできる限りつくるようにしていました。地方の支店にも定期的に足を運んでいましたし、メールだけでなく、電話でこまめに連絡するようにしていました。

私は「ある人が心に浮かんだら、その人に必ず電話を入れる」ということを習慣にしているんです。

営業職時代に、取引先の担当者の方や派遣スタッフさんの顔がふと思い浮かぶことがあり、そのままにしていたら何らかのトラブルが起きてしまった、という経験が何度かありました。これは、私の中にいる「人材のプロ」が、私に対してアラートを出していると自己理解しました。それ以来、私の中にいるプロを信頼してこの習慣を続けています。

思い起こせば、私がメンバーだったときも、急に上司から電話がかかってくることがありました。当時は気づきませんでしたが、そうやって見守られて私は育ってきたのだと、今になってわかります。

私も同じように、そばにいないメンバーについても、いつも目に見えないところから見守る気持ちを持っています。

 

「活かされない人材」なんていない

――中田さんのような頼れるリーダーになるには、どんな能力を鍛えればいいのでしょうか。

【中田】リーダーとしてまだまだの私が、それでも社長を務めさせていただいているのは、「自己認知」に努めてきたからだと思います。自分がどういうときに喜びを感じて力を発揮できるのか。逆に、何が苦手で不得意なのか。自分の観察を重ねてそれがわかり、自分で力を入れるべき仕事と人にアサインすべき仕事の区別がついたのです。それでチームとしての成果を挙げることができました。

自己理解で養った観察眼は、メンバーの理解にも役立ちます。例えば、毎朝誰よりも早く出社するのに、営業成績がなかなか上がらないメンバーがいました。早朝出社の意味がない、と周りの人は言うのですが、私はそうは思いませんでした。従来の評価軸から外れたところにこそ、人の可能性が眠っています。

このメンバーは、しっかりと準備して仕事に取り組みたいタイプ。そういう人は数をこなすスピード重視の営業は苦手だけれど、時間をかけて企画を進める仕事には向いています。実際このメンバーも企画重視の仕事に変わったら、見違えるような活躍を見せてくれました。

リーダーに、「メンバーをしっかり見てその人の良さを活かそう」という意識があれば、「活かされない人材」なんていないんですよ。

――リーダーの立場にある人は、肝に銘じておきたい話です。

【中田】私はこれまでたくさんのメンバーと一緒に仕事をしてきましたが、その中で影響を受けなかった人は一人もいません。誰と話をしても必ず気づきや学びがあります。誰もがオリジナルですから。

私はメンバーの話を聞くときは必ず「なるほど」と言って聞くようにしています。そう意識して言うことで聞く姿勢が整います。

しっかり向き合って聞いていると、そこには新しい事業につながるすごいアイデアが含まれているかもしれない。リーダーの見識が浅ければ組織のリスクになりますから、常に学ぶ姿勢で聞くことが大切だと思っています。

 

マネジメントのやり方が劇的に変わったきっかけ

――最近は、年上の部下や、派遣社員や外部スタッフ、外国人のメンバーでチームが構成されるなど、多様性が増しています。今のリーダーにはどんな態度が必要でしょうか。

【中田】推進する方向性の芯は持ちつつ、メンバーに合わせて、リーダーは自らの姿勢を変化させることも必要だと思います。私自身も壁にぶつかり、自分のリーダーシップを見直した経験があります。

それは30代後半にパブリック事業部の部長になったときです。メンバーの多くは40代、50代で、私の先輩や元上司もいました。私よりも経験が豊富な人たちですから、指示がすんなりとは通りません。私も「べき論」を振りかざしてしまい、ぶつかることも少なくありませんでした。

そこで当時の上司に、「10も15も年上のメンバーが相手だと言いづらい」「会社としてもっとやりやすいかたちを整えてほしい」と相談をしたんですね。

するとその上司から、中田は勘違いしていないか、と言われました。

「部長は一つの役割に過ぎないのに、相手が年上だから言うべきことを言えないのは、部長は上だという驕りがあるからではないのか。それに、会社がもっとうまくやってくれと言うが、メンバーから見たらお前が会社そのものだ」と、私の甘さをはっきりと指摘されたのです。

「そうか、私は会社なんだ」と遅まきながらリーダーの立場を認識したのがこのときです。私=会社なら、その会社をもっと知らなくてはなりません。経営陣が発信するメッセージを読み込み、自部署の事業とのつながりを再確認して、メンバーに自分の言葉で伝えるように努めました。

メンバーの経験に敬意を持ちながらも、部長として言うべきことは言う。ただし、借りてきたような言葉ではなく、腹落ちしたものを自分の思いとして伝える。このやり方に変えてから、マネジメントが劇的にうまくいくようになりました。

同質性の高いチームなら勢いで促すこともできるかもしれませんが、多様性の高いチームでは通用しません。メンバーの役割、ミッションを言語化して、相手が納得するまで説明する。その姿勢が、今のリーダーには必要だと思います。

――最近は、リーダーになることに消極的な人も増えています。

【中田】私も管理職になることに消極的という時期がありましたから、気持ちはよくわかります。会社に取り込まれて、自分を失うような気持ちになるのでしょう。

でもそれは、「社会の一部になりたくない」と言うのと同じでは、と思うのです。どんな会社も、社会に役立っているから存在しています。そこで働く人はその一部を担っているのですから、すでに会社の一部になっているわけです。

それに、リーダーになるということは役割が変わるということであって、自分が失われるわけではありません。実はその逆で、自らの役割を自覚したうえで、「自分ならどうするか?」と自分に軸を置いて答えを出していくのがリーダーだと思います。

リーダーになれば、仕事の大変さや責任の重さに増して、より広い視野を手に入れることができます。それは、より大きな自由を手にすることでもあります。

メンバーとお互いに助け合い、成長し合いながら、より自分らしい働き方を追究できる。それがリーダーという仕事だと私は思います。

 

【中田光佐子(なかた・みさこ)】
(株)パソナマスターズ代表取締役社長。1997年、(株)パソナに入社。人材に関わる様々なビジネス経験を経て、2018年4月、(株)パソナマスターズの代表取締役社長に就任。新会社にて「生涯現役社会」の実現に向けて、ミドル・シニア層の活躍機会の創出や企業のセカンドキャリア施策の支援に取り組んでいる。

 

THE21の詳細情報

関連記事

編集部のおすすめ

部下のメンタル向上が上司の評価につながる...日米で大きく異なる「管理職の役割」

牛尾剛(米マイクロソフトAzure Functionsプロダクトチーム シニアソフトウェアエンジニア)

「部下がやる気にならない」と悩む管理職に求められる3つの視点

小川実(一般社団法人成長企業研究会 代表理事)

部下に慕われる管理職が実践する「わからないふり」

山本真司(立命館大学ビジネススクール教授)