2025年01月26日 公開

50代で大きくキャリアを転換させた先駆者たちは、どのようにしてそこにたどり着いたのだろうか。コンサルタントとして活躍する清水弘幸氏は、49歳のときにリストラを経験したという。再就職した会社を56歳で早期退職し、コンサルタントとして独立するまでの間に考えたこと、学んだことをうかがった。(取材・構成:林加愛)
※※本稿は、『THE21』2024年2月号の掲載記事より、内容を抜粋・編集したものです。
――外資系大手企業のエンジニアとしてキャリアをスタートされた清水さん。その後50代で中小企業診断士の資格を取得、現在はコンサルティング業と、大きく転身されましたね。
【清水】はい。今振り返れば、過去のキャリアの折々に、その布石が打たれていたように思います。最初の会社では電子機器の設計のほか、お客様のサポートやマーケティング、営業社員のトレーニングなど様々な仕事を経験しましたが、それぞれが現在につながっています。
――その頃から、転職や独立を意識されていましたか?
【清水】いいえ、40代まではまったく。とはいえ外資系企業という、人の出入りの多い環境で「もし自分なら?」とはよく考えました。転職してくる人、出ていく人、各々が自分の価値を認められて、新しい活躍の場を得ている。では自分なら、どのような強みを見出してもらえるだろう?と。
――その後、49歳で最初の会社を退職されていますね。
【清水】この退職は予想外でした。リーマンショックの影響で、人員整理の対象になったのです。その後、7カ月にわたって転職先を探す日々となりました。
――それは、精神的にもさぞ厳しかったのでは......。
【清水】そうですね。支えてくれた妻には感謝です。一方で、改めて自分の価値を熟考する時間を持てたのは良いことでした。その際、強みに加えて「楽しいと感じること」を振り返ったのですが、そこで発見したのは「成長」がポイントだということ。
私は自身の成長のみならず、人の成長にも喜びを感じる人間だと気づきました。部下の指導でも、そうした瞬間を何度も味わったものです。この発見が、今思えば最大の布石かもしれません。
――その発見を経てからの転職。これまでと、働き方の違いはありましたか?
【清水】転職先は中小企業だったので、大企業との違いや課題を多く経験しました。加えて、私の意識も変わりました。リストラ経験以来、会社に依存しない働き方・生き方を模索するようになり、定年が視野に入ってからは、独立を意識し始めるようになったのです。
――年齢に関係なく働き続けたい、ということでしょうか。
【清水】ええ、65歳を過ぎても働き続けたいと思っていたので。では、独立して何をするか。「人の成長が嬉しい」という価値観に基づいて考えたとき、コンサルタント業に強く惹かれました。そこで2013年、53歳のときに、コンサルタントの唯一の国家資格である中小企業診断士の資格取得を思い立ったのです。
――これまで考えてこられたことが、一つの目標につながりましたね。そこからは、資格取得に向けた勉強を?
【清水】はい。毎週土曜は大手予備校に通学して終日学び、平日は通勤時間と、帰宅後の3時間を勉強に充てました。猛勉強のおかげで、翌14年に試験合格、15年に資格を取得できました。
――見事、ストレートで目標達成。決め手は何でしょう。
【清水】一つは、理論や用語を学ぶ際、過去の経験と結びつけて記憶したことです。50代の学びは、経験値が最大の強みになるんですね。加えて、予備校の仲間の存在も支えになりました。授業後には毎回、仲間たちとその日の内容を振り返る勉強会を行ないました。そこでもよく、授業の内容と関連する過去の経験を話させてもらいました。アウトプットすることでより記憶が定着し、学びが深まったように思います。
――合格の翌年に中小企業診断士に登録。さらに半年後に独立されましたね。
【清水】登録後は2~3年の準備期間を置くつもりだったのですが、ここで再び予想外の展開に。会社が早期退職を募集したのです。前回と似た状況ですが、今回は資格がありますから、ピンチではなくチャンス。独立する最良のタイミングだと思い、真っ先に手を挙げました。
――では、準備期間なしでスタートを切ることに?
【清水】はい。顧客がいない状態で開業したので、最初は苦労しました。診断協会から紹介された単発の仕事しかない状態から始まり、その後、自ら契約をとるべく自社HPの立ち上げ、メルマガ発信、セミナー開催などの手を打ちましたが、8カ月間は「単発仕事」のみでした。
――そこからどのように、契約を勝ち取られたのですか?
【清水】経営者がどこに課題を持つのかを学ぶことが大事だと考えて、金融機関が主催する、経営者とコンサルタントのマッチング会に積極的に参加しました。最初に契約していただけたのは、そこで出会った会社です。そのつながりで、徐々に仕事が増えていきました。軌道に乗った実感を得られたのは、独立してから3年後くらいです。
――現在は「ものづくり利益力向上コンサルタント」として活躍中の清水さん。元エンジニアらしいキャッチフレーズです。
【清水】私の場合、設計の経験がお客様とのご縁の糸口になるケースがほとんどです。「製品の不具合が多い状況を解決してほしい」といったピンポイントなご依頼から始まり、徐々に製品企画や業務改革といったことも相談していただけることが多いですね。技術の話から経営の話までワンストップで相談できるところが、お客様に喜んでいただけているのでは、と思います。
――設計やマーケティングのご経験と、中小企業診断士としての知識が見事に掛け合わされていますね。
【清水】プラス、中小企業で働いた経験も今に生きています。私は最大でも数十人規模の、全社員と知り合える大きさの会社に特化してコンサルティングを行なっていますが、中小企業には、大企業にはない様々な課題が発生します。「こうすべき」とわかっていても、人手や資金が足りなくてできない、など。そこに寄り添い、手立てを考え、提案するのが私の役割です。いずれは私がいなくとも、自らそれを実践できる会社になってほしいと願っています。
――「自分がいなくても大丈夫」を目指すとは、とても誠実な姿勢ですね。
【清水】いえいえ(笑)。きっと、ものづくりに携わる人の気持ちがわかることと、人の成長が嬉しい性分のせいで、自然とそう思えるのでしょう。
――逆境も含めたすべての経験を、現在の充実へと結びつけられた清水さんから、ぜひ読者にアドバイスをお願いします。
【清水】セカンドキャリアを意識されている方は、とにかく早く行動するのがお勧めです。資格も、思い立ってから取得するまでには時間がかかります。年に1度しか試験がない資格なら、1回で合格できなければ、自動的にさらに1年伸びます。となると、50代があっという間に過ぎてしまいます。ですから「定年間近になったら」ではなく、ぜひ今、着手しましょう。新たな挑戦を心から応援しています。
【清水弘幸(しみず・ひろゆき)】
中小企業診断士/アットマーク・コンサルティング合同会社代表社員
1960年生まれ。静岡大学大学院修了後、横河・ヒューレット・パッカード(現キーサイト・テクノロジー(株))に入社。半導体測定器の設計、顧客サポート、海外向け販促企画などを幅広く経験。2009年に同社を退職し、転職後に中小企業診断士の資格を取得。16年に独立し、アットマーク・コンサルティング合同会社を設立。
更新:01月26日 00:05