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AI初心者がまず最初にやるべきことは? 専門家が教える「ChatGPT活用法」

2025年01月30日 公開

大西可奈子(AI研究家)

AI

ChatGPTの登場以降、急速に身近な存在となった「AI」。ただミドル世代の中には、今なおAIを自分たちとは関係のないものと捉え、若い人に任せきりにしている人も多い印象だ。しかし、AI研究家の大西可奈子氏は、今や「使わないと損」という状況にあると指摘する。(取材・構成:山岸裕一)

※本稿は、『THE21』2024年2月号の掲載記事より、内容を抜粋・編集したものです。

 

AIは今や「使わないと損」

AIの意味が変わりつつある

2022年末に対話型のAI「ChatGPT」が登場して以降、AI活用の潮目は大きく変わりました。AIを専門としてきたはずの私でも、戸惑うほどの変化です。

今や、AIは「使いこなせると有利」というものではなく、「使えないと損」なものになっています。この時代にAIを使わず仕事をしていくなど、丸腰のまま戦場に赴おもむくくらい無謀なこと。そう言えるほどの劇的な進化が起きているのです。

従来のAI(人工知能)と言えば、例えば「工場にあるベルトコンベアのリアルタイム映像から不良品を見つけ、自動ではじくAI」というように、何か特定の目的に向けて個別に開発・利用されるものでした。囲碁や将棋のAIでも同じです。

それに対し、ChatGPTなどの対話型のAIは、従来のものと同じく「AI」と呼ばれてはいるものの、まったくの別物と捉えたほうがいいでしょう。

これらのAIは、利用者との会話のラリーを自然に成立させることができるうえ、指示や操作に専門知識は一切不要。しかも、学習した膨大な量のデータをもとに、質問や指示に応じた回答を新たに生成できるわけですから、「この目的にしか使えない」ということがありません。言わば、汎用性が飛躍的に高まったのです。

 

ChatGPTに「会話」ができる理由

ChatGPTの仕組み

あまり詳しくない方でもイメージできるよう、その仕組みについてもう少し詳しく解説しておきましょう。

まず、ChatGPTの土台には、大規模言語モデル(LLM)と呼ばれるものがあります。これは、インターネットなどから収集した大量の文章データを元に「文章の単語同士の並びから、次の単語を予測する」というシステムです。

例えば、LLMに「お客様にはご迷惑と......」と、文章の途中まで入力されるとします。すると、次に出現する単語は「ご不便」である確率が最も高いと予測されます。そうなると、次は「を」が入り、その次は「おかけし」......と、この連続で文章を生成するわけです。

つまり、生成AIは利用者の質問の内容を「理解」しているわけではありません。あくまでその問いかけに、最も自然につながる文章の並びをシステムで算出し、それを出力しているだけ。人間には想像もつかないほど大量のデータをシステムが学習することで、この「力技」が不思議とうまくいっているのです。

 

AIの活用法は「触れること」で学ぶ

ミドル世代はまずはAIレベル0脱却を

では、今後も自分の人材価値を維持するには、そんな革新的性能を誇るAIをどのように活用し、どんなスキルを伸ばしていけばいいのでしょう。

......などと言うと難しそうですが、そもそもChatGPTをはじめとする対話型AIの最大の特徴は、普段使っている通りの文章を打ち込むだけで答えを返してくれること。

それはつまり、「ChatGPTの使い方なんて知らない」という人でも問題なく使えてしまう、ということなんです。検索してページを見つけ、利用登録さえ済ませれば、あとは「ChatGPTの使い方を教えて」と聞くだけで、ChatGPT自身がその基本的な使い方を教えてくれることでしょう。

ですので、AI活用を学ぶにあたり、最初にやるべきことは「ChatGPTを使ってみる」ことに尽きます。もし読者の中に、まだ一度もChatGPTに触れたことがないという方がいたら、ぜひ一度試しに検索してメールアドレスで登録し、「相談ごと」を投げかけてみてください。

たったそれだけのことが、あなたを「AIレベル0の人材」から脱却させる大きな一歩になること請け合いです。

なお、そこでしっかりその性能を実感するために注意すべきなのが、「事実」を聞こうとしないこと。それを調べたければ普通に検索したほうが確実です。

というのも、先述のようにAIは「言葉の並びを予測」しているだけですから、事実かウソかを自ら判断することはできません。活用の際は「人々がネット上で積み重ねてきた膨大な発言や発信から、普遍的なアイデアを一案として出してくれるもの」というイメージを持つと、利用価値がよりはっきりしてくると思います。

ちなみに、無料版と有料版がありますが、よほどの使い手にならない限りは無料版で十分です。ただ、無料版の場合、入力された質問文も自らの「学習」に利用する可能性がある、と利用規約に書かれています。そのため、自社の機密情報の入力は厳禁です。

そもそも、ウェブなどから収集した文章データが元になっている以上、あまりに具体的な前提条件を提示すると、逆に回答の精度が落ちてしまいます。会社名をあえて出さずに「○○業界の会社」とするなど、適度に一般化して指示を出したほうがいいでしょう。

 

AIの活用を続ければ「課題発見力」も高まる

一度使い始めれば、その使い方は無限大です。自分の考えを整理するための「壁打ち相手」としても、部下の育て方についての「相談相手」としても、十分な働きをしてくれます。

他には、何か企画を考えるにあたっての「たたき台」を出してもらうのも、お勧めしたい使い方です。例えば「○○が特徴の新商品を出すので、CMのアイデアを出してください。ターゲットは30代の独身男性です」などと質問するだけでも、「たたき台」としては十分な質の回答が得られることと思います。

そして、使っているうちに、いずれ「プロンプト」なる言葉に出くわすかと思うのですが、これはいわばAIへの命令文、つまりは入力する質問や指示そのもののこと。この精度が高まると、回答の精度も高まります。

すなわち、今やAIをうまく使いこなせるかどうかは、プログラミング言語にまつわる知識の有無ではなく、聞きたいことを日本語で的確に表現する力にかかっているのです。

ということは、AIの活用に慣れ、上手に使う訓練を重ねることは、あなたの「精度の高い問いを立てる力」や「課題を見つける力」をも高めてくれるということ。この力は、AI活用以外にも幅広く役立つものですよね。

繰り返しますが、その段階に至るためにも、とにかくまず触ってみることが大切です。すると次第に自分なりの活用法が見つかるものですし、プロンプトの要点も少しずつ理解できていくでしょう。ぜひ、ChatGPTを自分だけの「相棒」にしてあげてください。

もし困ったら、今ではかなりの数の方が、自分の趣味や研究も兼ねて洗練されたプロンプトの書式をウェブ上に公開してくれていますから、最初はその知恵を借りるのもお勧めです。

他にも、例えば「他人が作ったExcelにあった関数の意味を解読する」など、ちょっとした質問にも使えます。

 

長いメールの要約にも!まだあるAI活用法

また、誰かから届いた長文のメールなどを「要約」するのも得意分野。3000字程度の文章なら、かなりのレベルで要約文がアウトプットされます。さらに条件を足して「この文章の依頼内容に対して、自分が回答する必要のある部分だけを抽出して要約してください」と指示しても、かなりの高精度で要約を抽出してくれるんです。

今回はChatGPTを中心に解説しましたが、他にもGoogleが開発した「Google Bard」や、画像生成AIの「Adobe Firefly」など、多くの革新的なAIが生まれています。少し前に伊藤園が生成AIを活用してCMを作って話題をさらったように、ChatGPT以外の「生成系」AIも、飛ぶ鳥を落とす勢いです。

似たようなAIも、比較してみると違いが見えてきますので、慣れてきたら他のAIにもぜひ触れてみてください。きっとそうするたびに、あなたの「AI人材レベル」が、少しずつ上がっていくことと思います。

AIの活用例3選

 

【大西可奈子(おおにし・かなこ)】
2006年、お茶の水女子大学理学部を卒業。12年、同大学院人間文化創成科学研究科博士後期課程修了。博士(理学)。以後、NTTドコモなどで対話型AIの開発に従事し、20年10月以降は大手IT企業でAIの設計・導入に携わる。著書に『いちばんやさしいAI〈人工知能〉超入門』(マイナビ出版)などがある。

 

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