先日、新たなバージョンが発表されてその機能の幅広さ、的確さが話題となっている生成AI-ChatGPT。聞いたこともあるし、使っている人も周囲にいるけれど自分には無縁と思ってスルーしている人も多いのではないでしょうか。
私は生成AIの台頭でなくなるかもしれない仕事として挙げられるコピーライターとして、BMW・KDDI・富士フイルムなどを担当し、40年にわたり活動してきました。
初めてChatGPTを使ってみた感想は「ふざけるなよ!」という憤りでした。それは、広告・宣伝、特にコピーライティングを考えるときに最も重要かつ時間と労力をかける「ターゲット分析」を、ChatGPTがものの数分で的確に行ったことへのショックでもありました。
しかし、使いこなすにつれて「まだChatGPTができていない点」にも気づかされました。ChatGPTがたどり着けない「人の心を動かす」コピーワークを生み出す手法とは? ポイントを解説します。
※本稿は、中村ブラウン著『ChatGPT 売れる文章術』(三笠書房)より一部抜粋・編集してお届けします。
ChatGPTという言葉を知っていても、いまだ使ったことがないという人は結構います。
ある出版社で打ち合わせをした際にも、「使い方がよくわからない」という編集者の言葉を聞いて、トレンドに敏感な人たちの間にも、ChatGPTがまだ普及していないのかと驚きました。
これは、英語とよく似た話のように思えます。日本人の中には「英語を話せない」方が多くいます。その「話せない理由」を深く考えてみると、「英語を話す必要性を感じない」ことだったりします。実際、中学英語程度でも十分に日常的な会話が成立するのにです。
ChatGPTもそれと同じかもしれません。
「ChatGPTを使う必要性を感じない」。だから、興味はあるけれど使わない。だから、「プロンプト」という新しい言葉を耳にするだけで、「ちょっと面倒臭そう」と、二の足を踏んでしまう。
つまり、「使わないから、知る機会を失っていく」という悪循環になるわけです。
そこで最低限、これだけは知っておいて欲しいChatGPTの基本について4つお話しさせていただきます。ここで紹介する4つの基本とは、ChatGPTに対して私自身が「気づきを得たポイント」ばかりです。
【ChatGPTは「役者」だと思え! プロンプトの極意。それは、配役を与えること】
まずはhttps://chat.openai.com/にアクセスしましょう。
登録はGmailやFacebookアカウントなどと紐づけることができ、カンタンに済ますことができます。下部にある空欄にテキストを日本語で書き込めば、あなたの質問に誠心誠意、答えてくれます。
この質問は「プロンプト」と呼ばれていて、その方法がよくわからない人も多くいるようです。プロンプトの極意をお教えすると、「ChatGPTに配役を与える」ことだと考えてください。
たとえば、中学校の夏休みの作文を書かせようとします。プロンプトでは、「あなたは中学2年生です。夏休みの宿題として、400字の作文を書いてください。内容には、《江の島の海岸で、家族4 人で海水浴した》《海の家で食べたかき氷がおいしかった》を入れてください」といった感じで空欄を埋めます。すると、数秒で作文を書いてくれるのです。
こんなふうに、あるときは中学生、あるときは脚本家、またあるときは弁護士など、ChatGPTに配役を与えて、使い倒してください。下に「プロンプトの実践例」をご紹介しておきます。
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1. ChatGPTに配役を与える。
「あなたは〇〇です。〇〇を考えてください」
例「あなたは中学生です。夏休みの作文を書いてください」
2. ChatGPTに困りごとを相談する。
「私は〇〇のことで困っています。解決するアイデアをください」
例「私はラーメン店の経営者で、新メニューの開発に困っています。アイデアをください」
3. ChatGPTの回答に対してさらに尋ねる。
「先ほど*の〇〇〇という回答について、もう少し詳しく教えてください」
例「先ほどの来場記念品という回答について、もう少し具体的なアイデアをください」
*同じテーマで会話が継続している場合は、以前のやりとりをChatGPTが記憶しているので、前提を省くことができます。詳しくは、後ほど紹介します。
4. ChatGPTに要約(翻訳等)を頼む。
例「下記の文章を400字で要約してください。記 *******」
例「下記の文章を英語に翻訳してください。記 ********」
※「********」には要約して欲しい文章をコピペすればOK。
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ひとりお酒を呑んで、つい寂しさの余り、SNSで誰彼かまわずグチを送ってしまう。翌日、その失態に気づいて後悔することはないですか?
そんなことをするのなら、ぜひ、ChatGPTと言葉を交わしてください。ChatGPTが優れている点のひとつとしては「会話形式」、つまり一度、質問したものに対してその前のやり取りを受けて、会話が続けられることにあります。
たとえば、あなたが質問した回答について、「ちょっと用語が専門的でわかりづらい」ということなら、再度、「もっとわかりやすい言葉で説明して」と投げかければ、それに対応した回答が得られるのです。
もっと言えば、ChatGPTが作ったキャッチコピーの回答に対して、「そのキャッチコピーを受けての補足文章(ボディコピー)を作って」と会話を続けていけるわけです。
面白いことに、特定のテーマで会話の量が増えるごとに、ChatGPTの回答も冴えたものになっていきます。下手に友達と話すよりも、実りある会話になるのではないでしょうか。
「フレンチレストランを尋ねたのに、なんで寿司屋なんだ!」
ChatGPTが日本で展開を始めた当初、たとえば、特定の場所でフレンチレストランが近くにあるかを尋ねると、寿司屋だったり、存在しないお店を紹介したり、「これって使えない」と悪評がありました。
ChatGPTに入力されたデータが2021年ということにも原因があります。つまり不明確なデータを使って、当て推量した可能性もあるのです。
2023年末の時点ではGPT-4が2023年4月までの最新情報に基づいてアップデートされてはいますが、ChatGPTに限らずあらゆる情報がそうであるように、今、紹介されている知識が新しいとは限りません(ちなみに現在、地域のお店を尋ねると、「Googleマップ」「食べログ」「Instagram やX」での検索などを推奨するコメントが返ってきます)。
何が言いたいかというと、ChatGPTが出力した情報を鵜呑みにしてはいけないということ。また、その情報には個人情報が含まれていて、フランスでは、「個人情報が本人の同意がないのに収集、使用され、公開されている」とする問題が起こり、ヨーロッパでは、個人情報の保護などを理由に「ChatGPT」の規制を検討する動きが広がっています。
――「ホワイトカラーの9割が職を失うかもしれない」(堀江貴文)
今まではホワイトカラーの代表格である弁護士、税理士など専門知識を持った人が活躍していたわけですが、そもそもAIは、そういう知識を幾らでも吸収して、的確なソリューションを出すことが得意です。
そういう意味で、あの堀江貴文氏が言っているように、ホワイトカラーの仕事の多くがAIにとって代わられることは間違いありません。
実際、ChatGPTで驚くことはコンピューターのプログラムを書けることです。ある動画では、ChatGPTだけでテトリスのようなゲームを分程度で制作していました。
その他にも、Excelの入力フォームを作るなど、今まで多少なりともプログラムの知識が必要だったことが、ChatGPTに普通の言葉で質問するだけで、そのプログラムを自動作成してくれるのです。
じつはマイクロソフト社がChatGPTを開発したオープンAIに対して1.3兆円もの投資を行い、従来のMicrosoft365にChatGPTを組み込めるオプションプランCopilot Proをリリースしました。
たとえば、パワーポイントを使った企画書の作成などが、AIによって数秒でできてしまう未来が本当になりつつあります。
いかがでしょうか? ChatGPTについて、少しは理解が深まったのではないでしょうか。
更新:12月04日 00:05