非課税枠の大幅拡充などの改訂を経て、2024年1月にスタートした「新NISA(少額投資非課税制度)」。様々なメディアで大きく取り上げられていますが、株式投資の初心者としては「興味はあるけれど、できれば大きなリスクは負いたくない」と心配になるのも事実です。
Xのフォロワー17万人超を誇る投資家・配当太郎さんは、「新NISAと『配当株投資』は親和性が高く、相性が抜群。配当株投資の成長エンジンである『増配』を最大限に生かせば、リスクを低減しながら1カ月当たり20万円の配当金を得ることも可能」だと語ります。
※本稿は、配当太郎著『新NISAで始める!年間240万円の配当金が入ってくる究極の株式投資』(クロスメディア・パブリッシング)より、内容を一部抜粋・編集したものです。
※本稿は2024年5月時点の情報に基づき、投資に対する著者の考え方を示したものであり、個別の金融商品を推奨するものではありません。金融商品の価値は状況によって変動しますので、購入の可否を含む投資の判断はご自身の責任で行うようお願いいたします。
「配当株投資」とは、株を買って売買せずに保有していれば、その企業が持ち株数に応じて利益の中から「配当金」を分配してくれる、という投資法です。つまり、自分では何もしなくても、優秀な企業の人たちが頑張って働いて業績を上げ続けてくれれば、買った株を持ち続けるだけで配当金が入ってくるわけです。
株式投資には様々な種類がありますが、配当株投資はギャンブルやマネーゲームの要素とは無縁な存在です。最低でも10年、20年といったスパンで株数を増やし、地道にコツコツと利益を積み上げていく投資法ですから、短期間で大きなリターンを得ることは期待できませんが、着実に配当金を積み上げていけば、年間100万円単位の利益を手にすることも可能です。また、株の売買を伴わないため、株価の動向に一喜一憂したり、忙しなく株を売買したりする必要がないことも特徴です。
稼ぐ力があり、株主に対してきちんと利益を還元する企業に投資して、配当金が積み上がっていくのを淡々と楽しむ。これが配当株投資の本質であり、無謀な株の売り買いを繰り返さなくても十分に恩恵を受けることができる仕組みです。
そして、その効率を強力に後押ししてくれるのが、2024年年1月にスタートした「無期限」「非課税」というメリットを併せもつ新NISAなのです。
配当金を増やしていく上で大切になるのは、
(1)自己資金による追加投資
(2)配当金からの再投資
(3)企業による増配
という3つの成長エンジンを、考え方や金銭事情に応じた「自分に合ったスタイル」で回転させ続けることです。中でも配当株投資の恩恵を得るうえで強い味方となるのが、企業による「増配」です。
増配とは、株を買った企業が利益を上げて、株主に分配する配当金を増額することです。この増配が、配当金の恩恵を雪だるま式に大きく育てていく成長エンジンの中核であり、配当株投資の一番の魅力でもあります。
増配は、大きく分けて「普通増配(企業の業績が良かったときに株主に還元)」「記念増配(企業が周年等の節目を迎えたときに株主に還元)」「特別増配(固定資産の売却など特別な理由で利益が出たときに株主に還元)」がありますが、一般的に増配という場合は普通増配を指します。持続的な成長によって企業が利益を出し続ける限りは増配を期待することができ、それが長く続くほど配当金投資の恩恵も大きくなっていきます。
配当株投資は、最低でも10年は続ける必要のある投資ですから、大事なのは「過去10年前後を振り返ったとき、1株配がどのくらい増えているか」を見ることで、その企業の「増配力」を判断することです。
例えば、現在1株当たり10円の配当金を出している企業が、毎年1円ずつ増配を続けた場合、10年後の配当金は2倍の20円になります。この株を1株配10円のときに1万株買って持ち続けていれば、10年後に受け取る配当金は2倍の20万円に増えている、ということです。
この間、企業は毎年1円ずつ増配していますから、最初は10万円だった年間配当金が、翌年は11万円、次の年には12万円というように増えていき、毎年その金額を受け取りながら、10年後には20万円に達していることになります。
新NISAの「成長投資枠」を使えば、得られる配当金は無期限で非課税となるため、10年目の累計配当金165万円を丸ごと利益として受け取ることができます。これが増配の恩恵であり、配当株投資の真骨頂といえます。
配当株投資を始めて、企業の株を買っても、最初からたくさんの利益を得ることはありません。相当な特需でもない限り、株を買った翌年に1株当たりの配当(1株配)が倍になるようなことはなく、基本的には1株益の上昇に応じて、緩やかに増配することになります。
※1株益:1株当たりの利益がどれだけあるかを示す値で、「当期純利益÷発行済株式数(自己株式を除く)」の計算式で求められる、企業を評価する際の指標の1つ。
過去10年でどのくらい1株配が増加しているか、取得利回りが上昇したかを見れば、日本を代表する企業の大型銘柄が着実に増配していることが理解できます。
※取得利回り:株の購入額に対する配当金の割合。
例えば、配当株投資の有力候補となりうる大型銘柄について、2014年3月期から2024年3月期までの1株配の動きと増配率、取得利回りを見ると、いずれも2倍以上になっています。
【銀行】
三菱UFJフィナンシャル・グループ
・1株配:16円→41円(増配率2.56倍)
・取得価格500円なら、利回り8.2%
三井住友フィナンシャルグループ
・1株配:120円→270円(増配率2.25倍)
・取得価格3500円なら、利回り7.7%
【商社】
三菱商事
・1株配:22.67円→70円(増配率3.09倍)
・取得価格600円なら、利回り11.7%
【通信キャリア】
NTT
・1株配1.7円→5円(増配率2.94倍)
・取得価格50円なら、利回り10.0%
KDDI
・1株配43.33円→140円(増配率3.23倍)
・取得価格1500円なら、利回り9.3%
【損害保険】
東京海上ホールディングス
・1株配23.33円→121円(増配率5.19倍)
・取得価格1000円なら、利回り12.1%
注目4業種の6つの銘柄の1株配を振り返ってみましたが、このように10年以上の時間をかければ、1株配が2倍から3倍近くになるのは普通に起こりうることです。目先の株価の動きに一喜一憂せず、長いスパンで配当株投資に取り組んでいけば、こうした結果を享受することが可能になり、増配の恩恵を受け続けることができます。
配当株投資を始めた当初は、増配の恩恵を小さく感じるかもしれません。年間3万円の配当金を得られるようになり、仮に10%の増配があったとしても、増加額は3000円です。この金額をどう考えるかには個人差があると思いますが、配当株投資で大事なのは、増配の効果が大きくなるまで、諦めずに株を買って、持ち続けることです。
受け取る配当金が大きくなるにつれて、増配の効果も大きくなり、同じ10%の増配でも、配当金が100万円ならば10万円、200万円ならば20万円になります。このように、ある程度まで配当金の額が大きくなれば、わずかな増配でも、大きなインパクトを生み出します。
この10万円の増配分を自己資金の新規投入だけで賄おうとすると、配当利回り3%の銘柄でも300万円以上のお金が必要になりますから、企業による増配の威力がいかに大きく、いかに魅力的であるかが理解できると思います。
こうした増配の恩恵を享受するためには、持ち株数を増やしていくことが「マスト」の条件となります。基本的に、株主還元に積極的な企業は増配する傾向にありますから、社会変化や景気の動向などによって多少の凸凹はありながらも、業績が安定していて、株主に積極的に還元する企業の株をコツコツと買い進めていけば、投資額の増加に伴って増配の恩恵を実感できる局面がやってきます。
更新:11月21日 00:05